めっちゃ旨そうな匂い!店の前には長い行列──列に加わる?踵を返す?

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皆さん、ラーメンは好きですか? 先日テレビを眺めていたら「上野で人気の本当に美味しいラーメン店BEST5......」なる番組が。私、ラーメン好き科学コミュニケーター松山はついついチェック。一位が珍々軒、二位が麺屋武蔵 武骨、三位が油そば椿、だそうです。もうすぐ3歳の愛娘も大好きな「光麺」はランク外......魔法のプリンもおいしいのになぁ。私は人ごみ嫌いなのですが、人ごみよりもラーメンへの執着が断然勝利、旨いと聞いたお店には1時間並んでも食べる!というツワモノもいるのでは?

では、この「おいしい噂のあるところには何がなんでも足を運ぶ」という行動、これは"正しい"と思いますか?


いやいや、正しいって何?と思われたかた、good question!この"正しい"を生物学的に追求したのが東京大学の飯野雄一研究室。飯野先生は新学術領域研究「神経系の動作原理を明らかにするためのシステム分子行動学」をたちあげ、シミュレーションやイメージングなど、多分野の先生方の力を結集して、行動を制御する遺伝子や細胞のネットワークを解き明かそうとされています。

さて、では「旨い話にとびつくことは正しいか」。この問いに答えるために飯野先生が使ったのは体長1 mm程の線虫シー・エレガンス(Caenorhabditis elegans)。未来館でも展示されているこのカワイイ線虫がどうやって「旨い話を手にするか」というと、手がかりは匂い。例えばベンズアルデヒドという有機化合物の匂いを嗅ぐと、餌があると判断して近づいていきます。

ところが──。この実験をしていた先生や学生さんが悩んだこと、それは匂いに寄って行く線虫の割合が安定しないこと。

(ベンズアルデヒドに向かってレッツゴー!:約15分の映像を早送りしています。 資料提供:東京大学 飯野雄一研究室)

どうやら少数の線虫を行動させると迷わず匂いに寄っていくけれど、多数の線虫とともに行動させるとなかなか匂いに近づかない。つまり、線虫は生き延びてたくさんの子孫を残すために、二つの戦略をとっているというのです。

競争相手が少ない時には、とにかく餌に近づいて栄養補給。

競争相手が多い時には、飢える前その場から離れて新天地を探し、そこでの繁栄に賭ける。

ということで、問いに対して線虫が教えてくれた答えは「競争相手がない時には正しい、競争相手が多い時には正しくない」。線虫にとっては、「長い待ち列ができているラーメン屋からは即刻離れる」が正しい選択のようです。

では、線虫はどうやって①の行動と②の行動とを使いわけているのでしょうか?細胞の数にしてたった302個しかない神経ネットワークで考えているのでしょうか?実は、線虫がとるこの生存戦略、遺伝子群がコントロールしているのです。飯野研究室では、線虫がもつ約2万個の遺伝子をランダムに壊し、得られた変異体の中で「まわりに競争相手がいようがいまいが匂いに突進していく」変異体を探し、どんな遺伝子が行動の判断に必要なのかを調べてきました。

その結果、

① 餌の匂い嗅ぐとそちらに寄って行くための信号(神経ペプチドと呼ばれます)が神経細胞から出て、線虫は餌によっていく

② 餌の匂いと同時に仲間の匂い(フェロモン)を嗅いだ時には、その神経ペプチドがきれいさっぱり掃除され、餌から離れる

とわかってきました。

 

様々な遺伝子の組み合わせが試され、様々な生存戦略をとる生物が競い合い、最も繁殖能力の高い遺伝子の組み合わせをもった生物が生き残り、次の世代へとその組み合わせを引き継いでいく──今、私たちの周りに何気なく生きている生き物たちの行動を、つぶさに観察してみたくなりませんか?

そんな方はぜひ、86日~7日に未来館にて開催される参加費無料の夏休みイベント「泳ぐ!飛ぶ!くねる!~遺伝子からよみとく行動~」へ。飯野先生のトークとともに、線虫の動きを自動追跡する最新装置「Multi Worm Tracker」、そして他の生き物たちの行動も会場で楽しめます!

 

イベント詳細ページはこちら。当日参加も可能です!

泳ぐ!飛ぶ!くねる!~遺伝子からよみとく行動~研究者トーク編(8月6日)

泳ぐ!飛ぶ!くねる!~遺伝子からよみとく行動~ワークショップ編(8月7日)

 

 

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この記事への2件のフィードバック

昨日見かけたイイノ先生のアドレスを探そうとして、ここに当たりました。画像が付いているので、様子が一目瞭然ですが、虫に個性があるような気もします:付和雷同派とか「わが道をゆく」派とか。しかも当事者の虫の「体力」に関係しているとか?足の速いやつは雷同し、遅いやつはわが道を置くとか...。

タカちゃんさま

面白いコメントをありがとうございます。

個性を考えながら動物の行動を眺めると、ますます解釈の面白みと、動物への愛着が増しますね。

野生動物の行動解析を行う研究者や、数少ない化石や遺跡から当時の状況を想像する研究者は、まさにその「個性」がヤッカイなのでは、と想像します。一般化できる事がらなのか、それともその個体だけの特徴なのか、判断するのはなかなか難しそうです。

今回ご紹介した線虫は、研究室で飼育されているもので、そのヤッカイな「個性」をなるべく少なくするためにクローン(遺伝子が全て同じ個体群)となっています。...とはいえ、自然にある放射線や細胞分裂で起きてしまうミスによって、どうしても変異が入ってしまいます。もしかしたら、この動画の中でタカちゃんさんが感じられた「個性」は、突然変異をもった「個性的な」線虫が醸し出しているものかも?もしその「個性的な」線虫の遺伝子配列を解析したら、重要な遺伝子に変異が見つかるかも?そして面白い発見につながるかも?

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