未来館に登場、地球最強生物の正体とは?

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どんなに苦しいストレスも物ともせず、周りでばバタリバタリと命の灯が消えていくなか、一人力強く生命をつむいでいく。天ぷら油を浴びても、もうこれ以上は物理的に温度が下がらないという絶対零度に近い低温に陥っても、世界で一番深いマリアナ海溝の底ほどの圧力にぎゅぎゅぎゅ~っと押されても、宇宙ステーションから放り出されようとも、そしてたとえ人間が死んでしまう量の1,000倍もの放射線を浴びようとも、へっちゃら。黙って静かに生きている。

今日はそんなクマムシについてご紹介します。


提供:國枝武和 (東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻  助教)


■クマムシって?

クマムシは「緩歩(かんぽ)動物」の仲間でほとんどの種類が1 mmに満たない小さな動物。4対8本の足でちょこちょこと移動します。地球上にはなんと1,000種類以上。

クマムシはその乾燥耐性で知られています。まわりが乾燥すると自分も脱水し「乾眠」という状態になり、体の中では一切の代謝が止まります。活動状態では動きもにぶく、固い殻ももたず、か弱いクマムシですが、いったん乾眠状態にはいると、最初で述べたような極限的な環境にめちゃめちゃ強い。すごいぞ、クマムシ!その可愛らしい外見とのギャップがイイ!

――といった特徴が人々を魅了し、多くのクマムシファンを生み出しています。しかし、そんなファンにも意外に知られていない事実があります。実は、この「乾眠」、すべてのクマムシが示すわけではないのです。世の中には「眠らない」クマムシもいるのです。(ご存知でしたか、クマムシファンの皆さま。もしご存知だとしたら、そうとうなクマムシ通?)

■クマムシはどこに?

まず、強く変身できるクマムシはどこにすんでいるのでしょう? さっそく採集用の紙袋をもってお散歩へ!

①晴れた日にコケをとってくる。街中の、乾いて白っぽいコケがベスト。通行人に怪しまれても、めげてはダメ。「ストレスに強くなるには、鈍感になること」──これ、ストレスに強いクマムシの研究者の言葉です。

②目の粗めな茶こしにコケをのせて水に浸す。

③待つこと数時間から一晩、クマムシがコケから落ちて底に溜まる。

④底の水をとって顕微鏡で見る

⑤いた!もぞもぞ動くいろんな種類のクマムシたち。もしかしたら新種のクマムシがいるかも?ちなみにクマムシの種類を特定するのは専門家でもむずかしく、見分けるポイントは咽頭(のど)の太さ・長さ、ツメの形、卵の形などの微妙な違いだそう。

■クマムシはなぜ強い?

驚くべき乾眠能力を発揮するクマムシはこのようにコケをすみかとするタイプ。

クマムシは小さいうえに歩みは遅く、肉食性の線虫やカビ、原生生物などにとってエサとしてうってつけです。仕方がないのでクマムシは他の生物がいないところへいないところへと生活する場を移していき、すみづらいコケまわりに押しやられます。晴れの日が続くとカラカラに乾燥するようなひどい場所です。乾燥に耐え、次の雨まで生き延びるために手に入れた戦略が乾眠能力だったと考えられています。

しかし、クマムシの中には水の豊富な環境に生きているものもいます。下水処理場で大活躍する、その名も「ゲスイクマムシ」や、海の中に生きているクマムシもいます。こういったクマムシは当然、乾眠なんていう戦略はもっていません。しかし、ゲスイクマムシは働き者だし、海のクマムシは形が華やか「常にか弱い」クマムシが注目される日も近い?

■したたかな眠り姫「ヨコヅナクマムシ」が未来館に!

未来館で開催中の企画展「世界の終わりのものがたり」では、50匹のヨコヅナクマムシが皆さんを待っています。スライドガラスの上で乾ききり、生命の営みを全く感じさせず、ひっそりと息をひそめたまま。厳しい環境に真っ向勝負をするのではなく、眠ってなんとかやりすごすという戦略をあみだした、したたかな眠り姫をぜひのぞきに来て下さい。お待ちしています。

会場には他の眠り姫たちも展示されています。企画展詳細ページはこちら。

企画展「世界の終わりのものがたり~もはや逃れられない73の問い」

顕微鏡サンプルを提供下さった東京大学の國枝武和先生のページはこちら。クマムシ研究の奥深さをご堪能あれ!

東京大学くまむし研究グループ研究内容

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