続・あなたの知らないミクロの世界

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beads

ポップでカラフルなこの作品、タイトルは「ビーズがとびだした」。

 

2013年8月6~11日まで大賑わいだったイベント「あなたの知らないミクロの世界」に来てくれた女の子の、ぬりえアートです。このぬりえのパターンになったのは、5月に未来館のまわりで咲いていたツツジのおしべ。筒の先から花粉の粒があふれ出る様子を、電子顕微鏡で300倍でとらえました。花粉ひと粒、約30マイクロメートル(0.03ミリ)。目では見ることのできない小さな世界です。

そんなミクロの世界の扉を開いてくれた顕微鏡ですが、そもそもの始まりは1枚のレンズだったのを知っていますか?

 

そんな知られざる顕微鏡の歴史をお話してくれたのは、今回のイベントに協力してくれた北里大学の根本典子先生。

 

レンズは、紀元前からすでにあったそうですが、目で見えないものを観るために使われ始めたのは16世紀に入ってから。その後、対物&接眼の2つのレンズと照明をつけた「光学顕微鏡」が作られました。でもやがて、拡大の「限界」に行き着きます。原因は、光の波長。波長の長さよりも小さいものは原理的に見ることができないのです。そこで、光(可視光線)より波長の短い電子線でもっと小さなものを観察しよう、と作られたのが「電子顕微鏡」。1930年代のことだそうです。80年も前からあったんですね!

 

顕微鏡の性能を表すのに「分解能」という言葉がよく使われます。2つの点がちゃんと2つの点として分かれて見える距離のことで、私たち人間の目の場合、だいたい0.1ミリメートルです。これに対して、光学顕微鏡は200ナノメートル、電子顕微鏡だと0.05ナノメートルまで小さくなるそうです。200ナノメートルは0.0002ミリですから、光学顕微鏡でも人間の目の2000倍にもなります。

 

電子顕微鏡で見るとおもしろいもの、たっっっくさんあります。今回のイベントで大いに盛り上がったのが、スポンジ。2種類を比べました。

 

左は、普通のスポンジ。右は、水をつけるだけでよく落ちるメラミン樹脂製のスポンジ(今回は「激落ちくん」という商品)。まずは、50倍です。普通のスポンジの方は、六角形や五角形の繊維が見えますが、メラミンスポンジは、もしゃもしゃ細か~くからまっているようです。

Sponge50

100倍。メラミンスポンジも繊維の形が見えてきました。やっぱり多角形のようですが、1つひとつの大きさは普通のものよりずっと小さいです。1本の繊維も、ずっと細いです。

sponge100

300倍。普通のスポンジの多角形の角は丸いのに対して、メラミンスポンジは、鋭い!

 Sponge300

汚れがよく落ちる秘訣は、薬剤ではなく、スポンジの構造だったんです!メラミンスポンジはすごく便利なのですが、大理石など軟らかい物をこすると傷つけることがあるという注意書きも、この鋭さにあるのですね。

 

もうひとつ、私たちイベントチームのイチオシは、花粉です。その魅力を語ってくださったのは、神奈川大学で30年間、花粉を研究し続けてこられた中村澄夫先生。

 

花粉なんてどれも同じただの粉…と思いきや、電子顕微鏡で見ると、大きさや形は植物によってかなり特徴的。

[caption id="attachment_31064" align="aligncenter" width="397"]花粉いろいろ 写真提供:中村澄夫先生(白い線が10マイクロメートル)[/caption]

おもしろいことに、花粉の大きさは植物の大きさには比例しません。植物で一番大きな花粉は、なんとミョウガ。逆に、マツやイチョウなど大物の花粉は小さいそうです。

 

では何が決め手かというと、めしべにたどりつく手段です。虫、鳥、風など、その植物が選んだ方法に好都合な大きさや形の花粉を作るんです。虫タイプと風タイプの代表例をご紹介します。

[caption id="attachment_31066" align="aligncenter" width="406"]ヒマワリとアカマツ説明 写真提供:中村澄夫先生[/caption]

涙ぐましい努力にも関わらず、花粉のみんながみんな、めしべにたどり着けるわけではありません。やっとめしべにたどり着いてからも、過酷な戦いが待ち受けています。花粉それぞれが持っている「花粉管」を、受け入れ側のめしべの「胚珠」にいち早く伸ばした者の勝利です。でも、莫大な数の花粉に対して、胚珠の数はごくわずか。狭き門なのです。小さな花粉のひと粒ひと粒に、波瀾万丈のストーリーがこめられているのですね。

 

花粉が人類学に貢献した例もあるそうです。イラクにある、シャニダール遺跡というネアンデルタール人の遺跡でのことです。この洞窟から、花粉の化石が発見されました。調べると、虫が運ぶタイプの花粉で、持ち主の花はキク科やユリ科などの見た目に美しい花々。でも、虫が洞窟に花粉を運ぶとは考えにくい…。ネアンデルタール人が死者に花を手向けていたのでは…、と考えられているそうです。花粉が何万年も前のできごとの裏付けになるなんて、小さいのに頼もしいですね。

 

最後に、このイベントの主役だった電子顕微鏡は、日立ハイテクノロジーズ製の2台(TM1000とTM3030)。とってもコンパクトで、驚くほど操作が簡単な、私たちのお気に入りです。今回のイベントにお越しいただけなかった皆さん!電子顕微鏡は未来館の3階にいつでもスタンバっていますので、ぜひミクロの世界をのぞきにいらしてくださいね!

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