ゲノムを利用した個別化医療を考える

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みなさんこんにちは。科学コミュニケーターの鈴木啓子です。

寒い日が続きますが、風邪ひいていませんか?

私は暖房の真下で新聞を読むことが増えました。特に注目しているのは医療トピックですが、お正月の特集で個別化医療が取り上げられていて、驚きました。

個別化医療とは、その人がもつ遺伝子のタイプに合わせて使う薬を選んだりする医療のこと。ヒトの全遺伝情報(ゲノム)を解読した「ヒトゲノム計画」のおかげで、実現しつつある医療です。今回は個別化医療についてのサイエンティスト・トークのお話をします。

 約3ヶ月前の10月19日(土)、未来館の実験工房で国際ヒトゲノム計画の日本のリーダーをつとめた松原謙一先生をお招きして、サイエンティスト・トーク「ヒトゲノム計画の20年間~20年で何が変わってきたか?」を行いました。  

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松原先生は、イベントのはじめからお客さんと話しながら進めてくださいました。

ヒトゲノムはいわば、ヒトの設計図です。私たちの体を作り出すときも、できた体を維持するときも、この設計図を使っています。この設計図はDNAでできていて、A、T、G、Cと略称される物質が並んでいます。

現在、このDNAの文字の並び方を解読することで、個別化医療が進められています。 例えば、個人の持つDNAに合わせて薬を処方したり、がんにかかわる遺伝子に変異があったら予防的に部位を切除したりしています。

 1990年にヒトゲノムを解読しようとする計画が始まって以来、様々な会社がDNAの文字配列を読み取る機械を作り出してきました。2003年にヒトゲノム解読終了が宣言された後も、機械の改良は続いています。

特長は、速く、安く、たくさんのDNAを扱えるという点。

そのおかげで、今や一人分のDNAの文字配列をすべて調べるのに、約2週間。ヒトゲノム計画が13年をかけていたことを思うと、格段にスピーディになりました。  

この技術を利用して、自分のDNAの文字配列を調べれば、病気になったときに適切な治療が受けられるようになるのでしょうか?

じつは、自分のDNAを調べることは、最初の一歩にすぎません。

正確な診断にはたくさんの人のデータが必要です。

 

例えば、ある病気の原因遺伝子を調べるときには、特有の遺伝子aを探すために数百人分のDNAを調べます。症状から、関係のありそうな遺伝子を調べ、患者とそうでない人とで、遺伝子の文字配列にどのような違いがあるのかを突き止めていきます。

アメリカではいくつかの企業が主導で、100ドル程度で特定の遺伝子のDNAの文字配列を調べるサービスを提供しています。お客さんは自分が特定の病気になる確率はどの程度なのかを知ることができ、その後の人生設計を考えるきっかけになります。また、調べた企業では、得られたデータを蓄積して詳細な遺伝子解析を行おうとしています。データが多ければ多いほど、正確なデータになります。

日本では、特定の団体や機関がそれぞれデータを集めています。 それぞれのデータを共有できれば、日本人に特有の病気の原因も特定しやすくなるかもしれませんが、連携はうまくいっていないのが現状です。このイベントの参加者には、自分のDNAを調べて登録し利用したい、という方もいました。

複数の団体がバラバラにデータを集めているこの状況を打破するにはどうしたらよいのでしょうか?   

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松原先生の話を聞いて、参加者の多くは日本として集めることは重要だと考えるようになりました。

「海外の企業がデータを集めると、そこには私たちは『アジア人』として登録されます。でも、日本人は遺伝的な均一性が高いため、日本人のグループで解析した方が都合のよい場合がある。たとえば、日本人に多い遺伝子の変異もあるかもしれない。日本人のデータを日本で集め、遺伝子解析をすることが重要。民間に期待したい」と松原先生はおっしゃっていました。

 

2014年1月23日に、ソニーが医療情報を提供するエムスリーとDNAを読み取る機械をつくるイルミナと一緒に新しく会社をつくることを発表しました。日本の個別化医療とヘルスケアの発展を目指しているそうで、期待が持てそうです。

個別化医療は、個人個人の体質にあわせた医療が受けられるというメリットがあります。 でも、みんなで話し合いながら決めていかなくてはいけない課題もあります。

なぜならそれぞれのDNAの文字配列は究極の個人情報であり、取り扱い方法がとても重要だからです。

イベントではこの問題についても話し合いが行われました。

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問題は、大きく分けて

①管理のやり方と

②差別を防ぐ方法について

の2つがあります。

 

①管理のやり方とは、誰がどのような形でデータを管理するのか、ということです。 一手にどこかの機関が管理をするのでしょうか。そうすると情報の漏洩などの問題が生じてきそうです。

 

イベント前の打ち合わせで、この話が出たときに、松原先生はひとつの提案をされました。

それは、「ICチップの入ったカードのようなもので、自分のデータを自分で管理する」ということ。 私にとっては目からウロコが落ちるような提案でした。

なるほど!免許証とか保険証の中にデータが入っていて、それ自身を読み取れる機械が病院に設置してあれば病気になったときに適切な治療が受けられるのか!と。(ただし、その際には機械が読み取ったデータを元に、適切な治療を選べる医師かアドバイザーが必要です。)

どのような管理になるといいのか、についてはこれからも議論していかなくてはなりません。

 

②の差別を防ぐというのは、例えばこういうことです。

私が遺伝子を調べて、将来胃がんになる確率が95%と出たとします。ほぼ確実に胃がんになるとして、そうなった場合に生命保険や医療保険に加入できなくなる、なんてことのないようにしたい、ということです。

アメリカではすでにこのような差別を禁じる法律が制定されています。

日本も将来的には必要になってくるかもしれません。

 

みなさんは今後、どのような個別化医療が進んでほしいと思いますか?

もっと判断材料が欲しいと思った方は、アーカイブをご覧下さい。

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