10万年後の未来への責任

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皆さんは10万年後の未来を想像できますか?

 

・・・・私には出来ません!!

 

参考までに、10万年前と言えば、ホモ・サピエンスがアフリカを出て世界各地に広がった頃。日本にホモ・サピエンスが到達したのは3万~4万年前だと考えられています。

( 高間大介著『人間はどこから来たのか、どこへ行くのか』角川書店、2010より)

 

10万年がとてつもなく長い時間であることだけは分かりました。

 

そんな気の遠くなるほどはるか未来に私たちが思いを馳せなければならない課題が、いまの日本にはあるのです。

それは"原発のごみ"

このごみ、その放射能が人間に無害なレベルに下がるまでに約10万年かかります。

 

日本では1963年に原子力発電が開始されました。これまで50年以上原発を使い続けてきた結果、大量の使用済み核燃料(約17,000トン!)がすでに生じています。

 

そのごみ、日本はどうするつもりか、皆さんは知っていますか?

 

日本は、使用済み核燃料をリサイクルして再び燃料に加工して使う「核燃料サイクル」政策を推進しています。

リサイクル過程で生まれた放射能レベルの高い廃液はガラスに混ぜて高温で溶かし、ステンレス容器に注入して固めます。これを「ガラス固化体」といいます。

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直径約40㎝、高さ約1.3m、総重量約500kg。

 

日本ではすでに、ガラス固化体にして25,000本分の使用済み核燃料が生まれています。

 

この高レベル放射性廃棄物であるガラス固化体を地下に埋めることで私たち人間のいる場所から隔離しようというのが日本の方針です。地下深くに埋めるので「地層処分」と呼んでいます。

 

地層処分の方法は次の通り。

①   放射性物質をガラスに閉じ込め、ステンレスの容器の中で固める

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ガラス固化体にする。

② 鉄製の容器(オーバーパック)に入れる

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オーバーパックの厚さは約20㎝。

③   締め固めた粘土で覆う

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水を通しにくく物質の移動を抑制する性質のあるベントナイトという粘土で覆う。

厚さ約70㎝。

④   地下300メートルよりも深い岩盤に閉じ込める

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処分場の広さは、地下施設で約3㎞×約2㎞、地上施設で1~2㎢。

40,000本の高レベル放射性廃棄物を埋設できる規模。(写真提供:NUMO)

 

高レベル放射性廃棄物を何重もの人工バリア(①~③)で覆い、さらに地下環境の天然のバリア機能(④)と組み合わせて、長期間にわたり隔離しようというのが地層処分です。

 

残念ながら日本では地層処分について知られていない、関心を持たれていないのが現状。

 

でも、それで本当にいいのでしょうか?

 

日本では地層処分を行う方針とはなったものの、現在のところ処分場の選定・建設が進んでいません。多くの国民にとっては自分事ではなく、この問題は長い間先送りされてきました。

しかし、電気という恩恵を受けてきた私たち一人ひとりが目を背けることなく考えなくてはならない課題ではないでしょうか?

 

未来館は1月17日(土)に、地層処分をテーマにしたトークイベントを開催します。

 

地下に埋めて隔離しようという考えは、「臭い物にはふたをしろ」という発想で生まれたわけではありません。

なぜ地下なのか?地震大国で火山も多い日本で、安定した地下環境はあるのか?10万年も安全に隔離できるのか?

地層処分の方法とその実現可能性、安全性を科学的に考え、前に進めるために何が必要なのかを参加者の皆さんと話し合いたいと思っています。

 

未来世代にツケを残さないためにも、いま私たちが議論し、方向性を見いださなければ。ぜひ関心を持って下さい。

 

イベントの様子はニコニコ生放送でライブ配信も行います。会場にお越しになれない方は、ぜひそちらでご参加下さい。講師に聞きたいギモン、ぶつけたい意見も、ニコニコ生放送のコメントにお書き下さい。

 

皆さまの本音、お待ちしています。

 

【イベント情報】

サイエンティスト・トーク

「原発のごみ、日本に埋める場所ありますか? -高レベル放射性廃棄物の地層処分」

 

日時:2015年1月17日(土)14:30~15:30

開催場所:日本科学未来館 3階 実験工房

定員:40名

参加費:入館料のみ

参加方法:当日直接会場にお越し下さい。

講師:吉田英一氏(名古屋大学教授)

 ニコニコ生放送はこちらのアドレスから(タイムシフト予約はお早めに!)

イベントについて詳しくはこちらから。

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この記事への9件のフィードバック

地層処分は隔離したら終わりではなく、モニタリングし続け、管理を続ける必要があります。
安定した地下環境以前に、10万年も続く国家体制が存在しうるのか?という視点が必要ではないでしょうか。

コメント有り難うございます。

地層処分は、「どこに」「どのように」という科学的なポイントはもちろんのこと、
ご指摘のように、10万年もの未来にわたってどう継承するのか、誰が責任を負うのか・・・社会的な側面でも様々な課題がありますす。

とりまく全ての課題を1時間という時間で網羅することは出来ないので、本イベントでは、まず地層処分を科学的にきちんと捉え理解することに主眼を置きました。
社会的側面に関しては、イベント本編終了後に時間を設けて参加者の皆さんと議論する予定です。
そこで出た質問や意見は後日改めてこちらのブログでご紹介します。

10万年という時間がとてつもなく長く、未来を予測することも難しい中で、モニタリングと管理にをどう考えるのか?
そもそも、原発のごみがそこに埋めてありますよと、10万年後の人類にどうやって伝えるのか(文字?石に刻む?)。
議論の中でそうした意見交換もできたらいいなと思っています。

原発のこみの処分は、地層処分の他にも宇宙に捨てる宇宙処分や海にすてる海洋底処分、分離変換技術なども検討されたそうです。現在において現実的ではないということで現在は地層処分に落ち着いていますが、10万年までいかないまでも1000年の科学の進歩も考慮した処分方法であるべきでしょう。
例えば、100年後は99%ぐらい安全・確実な宇宙旅行システムが確立されているのではないでしょうか。

科学技術の進歩を待って、それまでは監視と管理をしっかりと行いながら中間貯蔵をする(最終処分ではなく)という意見も確かにありますね。
地層処分以外の方法についてはイベント本編でも紹介する予定ですが、ご指摘頂いた「科学技術の進歩」に関しても会場で話してみたいです。
10万年を漠然と考えるより、100年、1000年と区切りながら、近い未来の予測を積み重ねていく視点も大切だと思いました。有り難うございます。

こんにちは、ニコニコ生放送の配信からきました。
先日日本科学未来館に初めて伺った際に、
未来館のコンセプトである「科学技術」にとても感動しました。

東京は遠くてなかなか未来館のイベントに参加できずにいますが、今回のようなニコニコ生放送での動画配信は、科学技術に関する知識や考えを得る大変良い機会となっておりとてもありがたいです。

今回のテーマである
「原発のごみ、日本に埋める場所ありますか? -高レベル放射性廃棄物の地層処分」についてですが、
放射性廃棄物の危険性と、その対処法についてとてもわかりやすい説明が多くありとても勉強になりました。

「原発問題」は私からはすこし遠い問題、テレビの向こう側の問題のような気がしていました。
しかしながら今回のトークで、この問題が私達にとってすごく身近で、深刻な問題であり、一人一人が解決に向けて考えていくべきものではないかと感じました。

こうして、問題解決に向けて沢山の分野の沢山の方が奔走していることや、問題解決に歩みを進めていることを、今までの私のような「私には関係ないのかな…」と思っている人々に知ってもらうことが重要なのではないかと思います。
(ただ私が無関心だっただけかもしれませんが…すみません。)
今回はその点でも非常に有益な時間を過ごさせていただきました。

本日は貴重な場を配信していただきありがとうございました。
私は工学系の学生ですが、何かしらの形で現代の社会問題の解決に携われるような技術者、研究者を目指します。

今後も科学未来館とサイエンスコミュニケーターの方々、スタッフの方々の活動を楽しみにしています。
長文失礼しました。

こんにちは、岩崎さん。コメント欄のあちこちにお邪魔している技術開発者と申します。

>10万年がとてつもなく長い時間であることだけは分かりました。

私は「1000年問題」なんて言っています。10万年と1000年ではずいぶん違いますが、これは危険性を「晩発性障害」を含めて見るか、「急性障害」について見るかの違いです。1000年と言うのはガラス固化体がむき出しで人の近くにあったときに、人が短期間で健康を害する(急性障害を発症する)放射線を出す期間を指しています。

多くの人があまり知らない話として、産業で強い放射線を出す同位体を使うことがあります。「ガンマ線投影非破壊検査」なんて言いますが、金属の部品などに外から見えない傷が無いかを探るための金属部品のレントゲン写真のようなものに使います。通常は厳密に管理され、人がガンマ線を浴びることが無いようにして行うのですが、何十年か前、その同位体が行方不明になり、ある工員さんが工場内に落ちていた線源を拾って、寮に持ち帰って仲間と「何だろう」と触っていたという事故が報告されています。その工員さんとそのお仲間は、放射線障害で死ぬところでした。最初の発見者は放射線熱傷を負っていました(後に血行障害で指を失いました)。人の生活する環境に強い放射性同位体があるというのは大変怖い状態なのです。

このようなことが起きる可能性として、1000年でも「十分に怖い」ので、私は「1000年問題」としてアピールしている訳です。おそらく人類の記録で1000年平和が続いた歴史を私は知りません。例えば今から500年先、何度か社会が混乱し、様々な記録が散逸した社会となっているとします。金属資源が不足している社会なので人々は金属探知機で「過去に捨てられたスクラップ」などを探し掘り出して利用しているとしましょう。ある人が、何かの機会に地下深くに埋まっている質の良い鉄鋼の塊を見つけます。苦労して掘り出し、鉄の部分を壊して利用し、中に入っていたガラスの塊は、その辺に放置したとします。やがて、その周りにいる人が健康を害し始め・・・。なんて怖い話をしている訳です。

YKKさま

ニコニコ生放送のご試聴、有り難うございました。
原発のごみ問題を「自分に関わること」と感じ、目を向け考えるきっかっけとなるイベントになったなら嬉しいです。
配信中は吉田先生のお話が中心でしたが、配信を終えてから、会場では参加者のディスカッションがおこなわれました。
地層処分を科学的に見ていくだけではなく、市民の理解や住民の合意を得ること、安全性に対する不安を払拭することなど、
社会的、倫理的にも様々な視点で考えなければならない課題だと感じさせられました。
その内容を後日こちらのブログでご報告しますので、ぜひご覧下さいね。

今度未来館にいらした際には、ぜひゆっくりとお話をさせて下さい。
研究者を目指してらっしゃるとのことで、一緒に活動が出来ることを楽しみにしています!

技術開発者さま、いつもコメントを有り難うございます。
1000年でも確かに、人間の歴史で見ればとても長く、未来への想像力をくじかれてしまいます。
そんな不安定な将来の「人間社会」への想定と、これまでの天然現象を参考にした遠い未来の「地下環境」の予測と、視点の違いによって地層処分をめぐる論点もかなり異なってきますね。

岩崎茜様、コメントへの返信ありがとうございます。

>そんな不安定な将来の「人間社会」への想定と、これまでの天然現象を参考にした遠い未来の「地下環境」の予測と、視点の違いによって地層処分をめぐる論点もかなり異なってきますね。

1000年問題として考える方が、様々な具体性をもって問題を考えることができるような気がしています。我々は10万年前の人類の生活様式や考え方を知るための情報をさほど多く持っていませんが、1000年前の生活はある程度知識を持っていますし、現代までの1000年間に起きたこともある程度は知っているので、これから1000年についても懸念を具体的に持てるからです。

地層処分に関しては「可逆期間」の問題があります。穴を掘って核のゴミを埋め、その穴を埋め戻して簡単には取り出せなくするのが「不可逆処分」ですが、後から「あそこは実は処分場にふさわしく無かった」なんてなると大変なんです。ドイツで低レベルの放射性廃棄物を不可逆処分した場所が後から「良く調べたら地下水があった」というので問題になっています。

穴を埋めずに「問題があったら取り出せるようにする」期間(可逆期間)を設けることが今は考えられていますが、その期間を100年程度としても社会がこれから100年何も問題が無いことを祈るしかない状態です。

嫌な話ですが、強い放射性物質をまき散らす兵器を「汚い核兵器」なんて言い方があります。原子爆弾を作るのは大変でも、「汚い核兵器」なら作れるなんて言い方で使います。テロリストなどがそういう兵器として核のゴミを利用したくなったら、可逆的地層処分された処分場というのは格好の標的になります。

強い放射線を出す放射性物質が社会で「無管理」になった事故として有名なのは、ゴイアニア被曝事故というのがあります。医療用線源が盗難により、遮蔽を失って日常生活を送る人の中に放置された事件です。4人が死亡しています。私などがひたすら怖がるのは、社会の動乱やテロにより、原発のゴミが同じような「無管理」となることです。放射性物質の量からすれば、処分される核のゴミ一つでも、これまで起きた「線源の事故」とはスケールが大きく違うからです。

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