あなたをつくる40兆個の「あれ」

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やっぱり良くできているなあ!

40兆個も集まって、ちゃーんとできあがるんだもん!

 

...はい。 みなさん、こんにちは。

興奮すると文脈が分からなくなると言われる志水です。

 

何の話かって? みなさんのからだに40兆個もある「あれ」ですよ。

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そう!「細胞」です。

(写真は、ほほの内側からとった私の細胞です。見やすいように蛍光色素で青く染めています。)

 

私たちのからだは、元をたどれば、たった1個の細胞からなる受精卵。 それが分裂を繰り返し、40兆個もの細胞になるわけです。 ただ増えるだけではありません。からだの場所や役割に応じて、細胞が変化するおかげで、心臓の細胞は脈を打つし、神経の細胞は電気や分泌物質で信号を伝えるわけです。

 

実に面白い。(いい声で)

 

そんな、細胞がからだをつくる巧みな仕組みについて、発生生物学者の浅島誠(あさしま・まこと)先生にお話をいただくサイエンティスト・トーク「細胞、からだ、私。 ― 医療を選ぶ日までに聞いておきたい『細胞』のはなし」を4月4日に行いました。

この記事では、その模様をダイジェストでお送りしましょう。

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右下:浅島誠先生

会場やインターネット中継にご参加いただいた皆さんからはたくさんの質問を頂戴しました。浅島先生のご回答を紹介する記事は鋭意作成中ですので、もうしばらくお待ちください。

 

受精卵の細胞は1個から2個、2個から4個...と分裂しながら増えていきます。はじめのうちは、どんな細胞にもなれる可能性を秘めていますが、からだが出来上がっていく過程で、「この細胞はからだの内側」「これは外側」とざっくりと役割分担が行われます。さらにからだが出来上がってくると、心臓や神経など場所によって役割が明確になります。

このように徐々に細胞の役割が決まることを「分化(ぶんか)」といいます。

最終的には、私たちのからだを構成する約260種類の細胞に分化していきます。

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「分化」は人の一生に近いかもしれません。小さいころはさまざまな仕事につける可能性を秘めていますが、学校などで徐々に技術を習得して、社会で専門的な役割を担っていく。

そう!4月から新生活を始めるみなさんは「分化」したのです!

「分化」おめでとう! (...言いすぎかな)

 

そんな「分化」を促す物質としてご紹介いただいたのが「アクチビン」というタンパク質。浅島先生がカエルの受精卵を用いた研究で発見した物質です。

浅島先生は「アニマルキャップ」とよばれる細胞集団に対してアクチビンを作用させました。「アニマルキャップ」とは、受精卵が少し成長して、胞胚期と呼ばれる時期にある「胞胚」の一部のこと。まだ分化しておらず、さまざまな細胞になれる可能性があります。ここにアクチビンを作用させると、濃度に応じて心臓や肝臓、筋肉などさまざまな組織をつくることができました。

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(浅島誠先生のご講演スライドより引用、クリックで拡大します)

アクチビンの濃度が低いと筋肉などが、濃度が高いと心臓や肝臓などができます。実際、受精卵の中でも、アクチビンの濃度に従ってさまざまな組織がつくられていきます。

 

会場では、未分化細胞塊(アニマルキャップ)にアクチビンを加えて、ドクドクと脈をうつ心臓の細胞をつくった映像を見せていただきました。

(映像提供:浅島誠先生)

 

本物の心臓のように血液を送り出すことはできませんが、見た目は本物とよく似ていますよね。このように、「さまざまな細胞にもなれる可能性を秘めた細胞」に物質を加えて、目的の組織をつくることができれば、私たちの病気の治療にも役立ちそうです。

そこで、「さまざまな細胞にもなれる可能性を秘めた細胞(=幹細胞(かんさいぼう))」を使って、組織を取り戻す「再生医療」が研究されています。イベントでは、3つの幹細胞「体性幹細胞」「ES細胞」「iPS細胞」とはどのようなものか、浅島先生に教えていただきました。

体性幹細胞は、脂肪や骨髄など私たちのからだの中にありますが、それぞれ一部の種類の細胞にしか分化できません。ES細胞は受精卵の一部の細胞を取り出してつくられるもので、胎盤以外の多くの細胞に分化できます。iPS細胞は皮膚や血液の細胞に遺伝子を加えてつくるもので、ES細胞と同じように、胎盤以外の多くの細胞に分化できます。

それぞれ医療への応用が期待されていますが、すべての根底にあるのは、私たちのからだがつくられる仕組みの理解。幹細胞を目的の細胞に分化させるためには、受精卵で起きていることを再現することが必要です(濱のブログでもご紹介した通り、未来館の実験教室でもiPS細胞にアクチビンを加えて心臓の細胞に変化させます)。だからこそ、浅島先生のように、からだがつくられる仕組みを知ることが何より大事なのですね。

 

40兆個もの細胞が整然と配置される仕組みは、まだまだ分かっていない点がたくさんあります。だからこそ浅島先生をはじめ、多くの研究者が日々解明に挑んでいます。

最後にもう一度言わせてください。

やっぱり良くできているなあ!

 

さて、繰り返しになりますが、会場やインターネット中継でいただいた浅島先生への質問の答えは追ってご報告します。 イベントをご覧になれなかった方も、今回の記事で興味をもったら、ぜひお付き合いくださいね!

 

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サイエンティスト・トーク:「細胞、からだ、私。 ―医療を選ぶ日までに聞いておきたい『細胞』のはなし」

開催日時:平成27年4月4日(土) 14:30~15:30

開催場所: 7階 イノベーションホール

講師:浅島 誠 氏(日本学術振興会・理事、東京大学名誉教授、産業技術総合研究所・名誉フェロー)

企画・ファシリテーション:志水正敏(日本科学未来館・科学コミュニケーター)

参加人数:72人(ニコニコ生放送視聴者数のべ503人)

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