【イベント報告】サイエンティスト・トーク「あなたと自然をつなぐ分類学」!?

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大好評の企画展「ポケモン研究所~キミにもできる!新たな発見~」が10月12日、無事に会期を終えました。お越し頂いた皆様、ありがとうございました!ポケモン研究所での体験が、「楽しみながら、科学の入り口に触れる」きっかけとなっていれば嬉しく思います。

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さて今回は、この企画展の関連イベントとして9月20日に実施した、サイエンティスト・トーク「あなたと自然をつなぐ分類学~分類から解き明かす地球の自然史~」についてご紹介していきたいと思います!

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皆さんは「分類学」という学問をご存じですか?
その名の通り、生き物や物、地球上にある様々なものを仲間分けする学問なのですが...私自身、身近に感じるきっかけはあまりないように感じていました。そこで、こんな疑問が。

分類ってそもそも何?
分類すると何が分かるの?
分類学の魅力ってどんなところ?

今回はポケモン研究所、第3研究室の科学監修にご協力頂いた、北海道大学の馬渡駿介先生から、さまざまなお話しを伺いました。ダイジェストでお楽しみ下さい!

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分類するってどういうこと?
皆さんは、身の回りの物や生き物を「分類」するという視点で見たことがありますか?
夏休みの自由課題で、昆虫や動物の観察、標本作りをやったことがある!という方もいるかもしれません。物や生き物を観察し、似た者同士を仲間に分け、まとめてグループを作ることが分類です。言葉にすると何だか小難しく聞こえてしまいますが...やろうと考えてやるものだけではなく、だれもが無意識にやっている、実はとても身近な行いなのです!

例えば、馬渡先生が実際に説明に使われた例で言うと...足に履くものを「ソックス」、お尻に履くものを「パンツ」、じゃあ「ストッキング」はどっちの仲間!?なんて考えながら、タンスの整理をしたことはありませんか?これもれっきとした分類なのです!
他にも、「腐った食べ物」と「新鮮でおいしい食べ物」なんて見分けも、生きていく上でとても重要ですよね。この見方も、実は分類です。

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そして...
「お母さん、ソックスどこ?取ってきて!」
「タンスの○段目よ!自分で取りなさい!」
なんて会話に覚えはありませんか?

ここでちょっと注目して下さい。
ソックスのことを聞かれて、パンツのことを答える人はいないですよね。取ってきてもらった時も、ソックスと言いながらパンツを渡されることもないですよね。当たり前のことですが、ここに分類の重要性が潜んでいます。この会話は、自分とお母さんの間に、ソックスとパンツという「共通の認識と名前」があってはじめて成立しています。人は、言葉を使って物事を伝え合い、コミュニケーションを取って生きています。ここで必要なのは、物事を見分けて名前をつけ、共通の名前で呼び合うこと。その上で欠かせないのが、名前の前提となる「分類」という視点なのです。

いかがでしょうか?
そう考えると、分類がぐっと身近に感じられます。
分類の視点がないと、私たちは私たちを取り巻く世界を言葉で表現することさえ出来なくなるのです!!

そして「新種発見!」なんてニュースを聞くことがあります。新種が発見されると、世界を表現する方法(言葉)がほんの少しだけ増えます。人が伝え合える世界が拡がる...こうやって私たちは人類共通の認識を築いてきたわけです。
(※「種」とは、交配して子孫を残せる生き物のグループのこと)

分類学の2大革命!?
そんな分類を学問にしたのが分類学です。
ここからは、生き物の分類学について見ていきます。
分類という視点は、人が集団で共同生活をはじめた頃に、すでに存在していた...と考えられそうですが、意識的に分類を行い、記録するということはいつから始まったのでしょうか?古くは紀元前、アリストテレスが生き物を動物と植物に分類することを始め、さらにそれらを生活様式や形の特徴などでいくつかのグループにまとめました。さらに18世紀に入ると、「分類学の父」と呼ばれるリンネの登場により、分類の体系的な基盤が築かれました。リンネは分類の基本に「種」をおき、似た種を集めた「属」、似た属を集めた「目」(この頃は「科」はありませんでした)...という分類の階層を作りました。この階層は、現在も用いられています。

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生き物を階層的に分類するとき、その最も古い手法は、「姿・形・暮らしぶりを比べる」というものです。これは今でも現役の手法で、多くの新種の発見もここから成されています。...そんな中で、疑問も生じました。

その昔、神様が作り出したとされる生き物の中に、あまりにもそっくりなのに、わずかな違いのある生き物が存在する意味を説明することは困難でした。神様はどうして違いの少ない生き物をわざわざ作ったのだろうか...?
そこに登場したのが、当時常識破りとされたダーウィンの「進化論」です(1859年に出版された「種の起源」の中で示された)。生き物は今の姿のまま突然作り出されたものではなく、長い年月かけて少しずつ姿、形を変えながら進化して今の姿に至った、という考えです。生き物は時間とともに変化し、その結果長い時間かけて別の種に枝分かれしたりもする。今では常識として考えられているこの学説も、当時は型破りな考え方でした。

そこから時代は進んで現在、姿形を比べたときに「似たもの同士なのに実は赤の他人!?」逆に「似てもにつかないのに実は親戚!?」という2つの生き物の関係を明らかにできる手法が登場しました。それが「DNA解析」です。体の設計図になるDNAのわずかな違いから種の違いや関係性を知ることが可能になったのは、分類学の歴史上、大きな革命でした。
さまざまな生き物のDNAを比べることにより、生き物同士の時間的なつながり、つまり進化の歴史を追うことができるようになりました。例えば見た目の全く違う「カバとクジラ」ですが、DNAを調べると、実は非常に近いグループ同士であることが分かったのです。

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分類の入り口になるのはまず、姿形、そして暮らしぶりを詳しく比べること。それと合わせてDNAを比べる技術で、加速的に生き物の分類と、時間的なつながりの解明が進んでいます。その集大成として描かれているのが、「進化系統樹」というものです。進化系統樹は新たな発見のたびに追加を重ね、現在も更新し続けています。そして私たちに、生命のダイナミクスの一端を伝えてくれます。

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分類学の魅力、そして感動の秘話
今回、分類と分類学について教えて下さった馬渡駿介先生は、「コケムシ」という生き物を長年研究してこられました。コケムシってどんな生き物?...実はこんな生き物です!

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磯の岩場などに生息しているれっきとした「動物」。
冒頭でご紹介した馬渡先生のイラスト(教え子の作品なのだとか!)は、磯で貴重なコケムシを発見した喜びと興奮の瞬間を描いたものだそうです。
そしてコケムシの仲間をこんなにたくさん分類してこられました。
先生は実に45年以上、生き物の姿形を比較することを繰り返し、分類の世界を拡げてこられたわけです。

さらに研究者の方にお話を伺う時、私にはお決まりの質問があります。
私の人生以上に長い研究生活の歴史をお持ちの馬渡先生。今回もすかさずこの質問をぶつけてみました!
「先生の研究生活の中で、『これはおどろいた!これは感動の経験だった!』、そんなお宝エピソードは何ですか!?」

先生の第一声は、「あーあるんだよ、それが...」。(「おお!!」←西岡の心の声)
それが何だったかというと、運命的な出会いのお話でした。
先生が研究の上で参考にされていた書籍に、約100年前に外国人研究者、デーデルラインが相模湾で収集した海産生物のスケッチが描かれていました。その中に何となく印象深いスケッチがあったのだとか...。そしてある日、調査で訪れたフランスのストラスブール動物学博物館で、先生はハッと目を見張る経験をされました。なんと目の前に、脳裏に焼き付いていた、まさにスケッチ通りの標本があるではないか!
「これだったのか...」という単純な感激とは違い、何だか不思議な気持ちに襲われたのだそうです。「自分と100年以上前の研究者が標本を通じてつながった」という何とも言えない気持ちがじんわりと広がったのだそうです。

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その経験が根底にあり、現在先生が注力されているのが、「研究活動と標本収集の両者が充実した、新しい自然史博物館を作りたい」という活動です。そこでは、現在の自然環境を後世に伝えると共に、過去の研究を再研究する材料を得ることができます。例えば自然災害や環境汚染などで、一部の土地や地域の環境、生態系が大きく変化したとします。その場所の過去と現在の違いを比較することは、今後の環境変化の予測や指標を得ることにつながります。一度失われたものを取り戻すことはできませんが、その存在の証として、また研究材料として標本を保存することが自然史博物館のミッションとなります。

馬渡先生の熱のこもったお話しに、会場からは「ぜひ実現させて下さい!」という期待の声が寄せられました。

今回、分類学のお話しを伺っていて印象的だったのは、「時間やつながり」というキーワードでした。物や生き物を観察したり分析しながら分類するという研究は、細かく地道なものですが、その積み重ねが地球や生命の織り成すダイナミクスを教えてくれることが分かりました。分類学がスッと腑に落ちるものとなった経験でした。

北海道から何度も足をお運び頂きながら実現した、サイエンティスト・トーク「あなたと自然をつなぐ分類学-分類から解き明かす地球の自然史」。1時間はあっという間に過ぎていきました。進行役として、安堵とともに寂しい気持ちに襲われた私でした。

研究者の方々の研究にかける情熱を間近で感じた時、いつも鳥肌が立つ経験をします。未来館では定期的にサイエンティスト・トークを実施しています。皆さんもぜひ一緒に、科学に鳥肌してみませんか!?

このサイエンティストトークの模様は、MiraikanChannel でもお楽しみいただけます!
https://www.youtube.com/watch?v=U_JxaUtDVE4

おまけ...

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ポケモン研究所の出口には、エピローグとして「皆さんはどんな発見をしたいですか?」という質問に対する自由回答ブースが設けられていました。多くのお客様から寄せられたのが「生き物の新種発見」という回答でした。この希望に対する馬渡先生からのアドバイス(エール)は...「勉強をしましょう!」でした。新種発見には、それが新種であることを証明できるだけの既知の生物の知識が大前提。研究にも新発見にもたゆまぬ努力が必要!というお言葉でした。身に染みます(笑)

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