研究は、「失敗」こそが面白い! アンバサダー・プログラム活動レポート⑤

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「『失敗』が面白い、だって?」と思われるかもしれません。

しかし、研究においては「失敗」だって非常に面白いことなんですよ!

そう私に感じさせてくれたのが、4月から実施してきた「アンバサダー・プログラム」。14歳~18歳の学生(アンバサダー)が、8ヶ月間にわたってバイオテクノロジーの研究を進めてきました。そして、11月15日に最終発表会を迎えました(拍手!)。

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最優秀アンバサダーを受賞した服部真央さん

 

5人の発表テーマは、茶カテキンやインフルエンザワクチンなど私たちの生活に身近なもの。50人を超える聴衆の方も熱心に耳を傾けていました。今日は、その発表会では十分にお伝えできなかった「『失敗』だらけの研究活動」をお伝えします。

 

えっ?「最終発表会行けなかったから、まずは発表の内容を知りたいよー!」ですって?

ご安心ください。当日の様子は「マイナビニュース」に記事にしていただきました。

こちらからご覧ください。

 

アンバサダーたちは、自分で仮説を立て、取材や実験を通してバイオテクノロジーへの理解を深めていきました。しかし、いくら念入りに下調べをしたとはいえ、仮説通りの結果が得られるとも限りません。どんな「失敗」に直面したのか、事件簿形式でご紹介しましょう。

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①「サラサラ+サラサラ=カッチカチ?」事件

事件に遭遇したのは、蒲朋恵さん。
蒲さんは、微細藻類「スピルリナ」を肥料にして野菜を栽培できないかと考えました。

20151127_shimizu_02.jpg実験監修者である農業・食品産業技術総合研究機構の中野明正博士(右)と打ち合わせをする蒲さん(左)

 

農研機構・中野明正博士から培養土を分けていただき、スピルリナ粉末(見た目は抹茶のよう)を混ぜた特製の土をつくりました。その土でコマツナを育てようとしたところ、事件が起きたのです。

蒲さん「あれ、全然水を吸わない...。」

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写真左から2列目のスピルリナを混ぜた土だけ、レンガのようにかちかちに固まってしまって、ほとんど水を吸わないのです!肥料として土に栄養を与えるつもりが、かえって土を固めてしまいました。

対処法を探った結果、何日かごとに分けてスピルリナを混ぜると、少しは水を吸うことが分かりました。しかし、肥料としてすぐ使うのは難しいという判断になりました。

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②「せっかく毎週食事を変えたのに!」事件

事件に遭遇したのは、服部真央さん。
服部さんは、腸内細菌と健康との関係を調べました。

20151127_shimizu_04.JPG腸内細菌のDNAを調べる機械の説明を聞く服部さん(右)

 

実験対象としたのは、服部さん自身の家族6人。食事を1週間ごとに変え、腸内細菌の種類がどのように変化するのか、約2ヶ月にわたって調べました。

20151127_shimizu_05.jpg食事の条件。クリックで拡大します。

 

1日に納豆を2パック食べたり、日頃食べている乳酸菌食品を禁止したりと涙ぐましい努力を重ねた服部さん。頑張ったからには、腸内細菌の種類もはっきりと変わっていてほしいですよね。

でも、残念ながら1週間食事を変えただけでは、腸内細菌の種類は変わらないということが実験から分かりました。どうやら、もっと長い期間食事を変えるか、極端に変える必要があったようです(2013年に米ハーバード大学らのチームが発表した論文 (※1)によると、5日間野菜だけ、もしくは肉だけの食事をすると腸内細菌が大きく変わるそうです)。
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実験はなかなか思い通りには行きません。では、仮説が誤りだったら、成果が無いのでしょうか?私はそうとは思いません。

アンバサダーたちは、研究発表会でその「失敗」を「発見」として堂々と発表していました。そして、その「発見」から新たな道筋を見いだしていたのです。

 

「肥料をつくるには、栄養を考えるだけではダメなんだ!」「腸内細菌は簡単には変わらないからこそ、日頃から意識することが大切なんだ!」と前向きに捉えていたことを、私はとても誇らしく思いました。

研究の世界では、ほとんどが「失敗」です。だからこそ、研究には時間がかかります。時には、仮説に合わせて実験結果をゆがめたくなる誘惑にかられるかもしれません。しかし、どんな結果でも、事実を事実として受け止める勇気をもつことが研究では大切なはずです。

 

研究発表会の審査員・藤田保健衛生大学の宮川剛教授は、「実験をすると、普通はうまくいきません。しかし、予想とは異なる結論が出るというダイナミズムこそが研究の面白みです」と語ってくださいました。

5人のアンバサダーたちが、今後研究者になるかは分かりません。しかし、「失敗」の価値を改めて教えてくれた彼らには、この8ヶ月の経験をずっと覚えていてほしいと思います。

 

20151127_shimizu_06.JPGアンバサダーたち(後列)は8ヶ月間誠実にやり抜きました!

 

※1:LA David, CF Maurice, RN Carmody, DB Gootenberg, JE Button, BE Wolfe, AV Ling, AS Devlin, Y Varma, MA Fischbach, SB Biddinger, RJ Dutton, PJ Turnbaugh. Diet rapidly and reproducibly alters the gut microbiome. Nature, Published online Dec 2013.

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