クラブmiraikan向けイベント 未来館発着、南極旅行!実施報告

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科学コミュニケーターの石田です。
本年もよろしくお願いいたします。

良い年を迎えられるような楽しいイベントを12月に開催したい!ということで、科学コミュニケーター田代とせこせこと新たな形の南極イベントを企画しました。
(未来館では毎年、リアルラボ@南極観測船「しらせ」というイベントを開催していました。2017年はそれに代わる新たな企画です)。

その名も、
南極観測60周年!「宗谷」から「しらせ」まで~未来館発着、南極旅行!
(タイトル長いわ!)

まさにこのタイトルのように未来館近辺で南極を旅行した気分を味わえるだけでなく、60年も地道に続けられてきた南極観測の意義を実感できるようなイベントとなりました。その様子を報告します!

イベントは三部構成です。
第一部 初代南極観測船「宗谷」見学
第二部 研究者による南極講義
   (講師:国立極地研究所 地圏研究グループ 本吉洋一教授)
第三部 ドームシアターでの南極映像鑑賞(研究者と科学コミュニケーターによる副音声付き)

では、早速第一部から行ってみましょう!


第一部 初代南極観測船「宗谷」見学


未来館から歩いて約5分。そこには船の科学館で保存・展示している初代南極観測船「宗谷」があります。

20180107_ishida_01.jpg提供:船の科学館

大人の方はカラフト犬のタロ・ジロを連れて行った船として名前を聞いたことがあるかもしれませんね!(現在は南極地域への生き物の持ち込みは禁止されています)

宗谷は1938年に耐氷型貨物船として造られました。その後、太平洋戦争では特務艦、戦争後は引き揚げ船、灯台補給船として働いたあと大改造され「南極観測船」となったのです。その証拠に宗谷にはいくつもの改造の跡があります。
写真を見ると結構大きそうですね。全長は83.7メートル。
しかし、実際に宗谷を見た参加者からは「小さい!!」「こんな小さい船で南極に行ってたなんて信じられない!」という声がたくさん。
そう、小さいのです。しかも氷に乗上げやすくするために少し丸っこく、航行中に最大60度も傾くことがあったとか。昔の人はすごい。

そんな宗谷の中を科学コミュニケーター(以下SCと表記)と船の科学館スタッフで先導してツアーを行いました。食事だけでなく会議も行っていた士官食堂や隊員部屋、操舵室、プロペラなど見所が多すぎて時間が足りなかったかもしれません...

士官食堂では本吉先生にお話して頂きつつ、南極の氷を触ったり氷に閉じ込められた空気の音を聞いてみました!

20180107_ishida_02.jpg

南極の氷は降り積もった雪が押し固められてできます。そのときに当時の空気も閉じ込められます。南極の氷は昔の気候や環境を教えてくれるタイムカプセルなんですね!

20180107_ishida_03.JPG

実際のプロペラ。特別に近くで見学させて頂きました。氷に衝突した際にプロペラが衝撃をそのまま受けて曲がったりすると、エンジンが損傷するおそれがあります。そのため、プロペラは衝撃を逃がすよう割れやすく造られていました。(割れたあとは交換できるように設計されていましたが、実際に1度割れたときは技術的に難しく交換できなかったそうです。しかし、プロペラは1つ失われてしまったもののエンジン損傷は免れたことで航海を続けることができたのです。)

昔の人はすごいなぁ...今の南極観測船はどんな感じなんだろう...と南極観測の歴史に思いをはせたところで第二部です!

第二部 研究者による南極講義
(講師:国立極地研究所 地圏研究グループ 本吉洋一教授)

未来館に帰ってきたのち、参加者の方にはじっくり30分ほど本吉先生のお話を聞いて頂きました。
本吉先生は11回も南極に行ったことがある南極観測のスペシャリスト。岩石や隕石の話を始めると止まりません。

20180107_ishida_04.JPG

ん...?岩石?隕石?と思われた方も多いのではないでしょうか。南極観測ではオーロラや氷、ペンギンなどの研究だけではないのです!岩石や隕石の研究も盛んに行われています。どのような研究なのでしょうか?

♦岩石
約2億年前のゴンドワナ大陸の時代、南極大陸はインドやスリランカとつながっていました。

20180107_ishida_05.jpg画像:wikipediaより

そこから長い時間をかけて大陸が移動し、今の位置となりました。南極大陸がインドやスリランカとつながっていた証拠に、現地で見つかるルビーやサファイアなどの鉱物が南極大陸からも見つかります。このように南極大陸での岩石研究は、地球のなりたちを知ることにつながります。

♦隕石
隕石は宇宙から地球全体にまんべんなく落ちてきます。海の中、山の中...探すのが大変そう!それでは、南極大陸に落ちたらどうでしょう?氷の上に黒い塊があったら...それはほぼ隕石です!なんと見つけやすい。しかも、それだけでなく日本の南極観測隊が活動する地域には隕石が集まりやすい場所があります。やまと山脈のふもとです。実は南極の氷は海に向かってゆっくりゆっくり動いています。そのときに隕石も運ばれます。しかし、その動きは山脈までくるとさえぎられ、氷は蒸発。隕石だけが取り残されるのです。この大発見により全世界の隕石のうちの約3分の1に相当する約1万7000個の隕石を日本は所有しています。

20180107_ishida_06.jpg20180107_ishida_07.JPG

本吉先生が持ってきて下さったルビー、サファイア、南極の岩石、隕石。みなさん興味津々です。

南極を調べることで地球全体、いや宇宙までも調べられるのです。南極観測ってめちゃくちゃ大事ですね!!

さぁ、南極観測の意義もじっくり分かったところでクライマックスです!

第三部 ドームシアターでの南極映像鑑賞(研究者とSCによる副音声付き)

本吉先生が第58次南極地域観測隊として南極大陸に向かった際、RICOHの360度カメラTHETAで南極での活動風景を撮ってきてくれました。

参加者の方には本吉先生とSC田代の解説を聞きながら、しらせが氷の海を突き進む様子や現地で岩石を採掘する様子を360度の全方位から撮影した映像をドームシアターで鑑賞してもらい、南極大陸に行った気分を味わって頂きました。

まずは南極観測船「しらせ」での映像。しらせは全長138メートル。83.7メートルの宗谷時代から大きくなりました。しらせは南極周辺の厚い氷に覆われた海を進む際に、いったんバックした後に助走をつけて進み、氷の上に乗り上げ、自分の重みで氷を割って進んでいきます(ラミング航法といいます)。まさにそのラミング航法を体験して頂きました!

20180107_ishida_08.JPGオレンジ色のしらせが氷に乗っかり進んでいる様子。バリバリと氷を割る音も大迫力!

20180107_ishida_09.jpg現地映像をもとにお話をする本吉先生(この映像は岩石を採取しているところ)

現地の映像を見ながら、実際に南極に行かれていた先生の話を聞くことができるとはなんて贅沢。私たちも南極に行った気分を味わうことができました。

最後にSC田代から先生への質問。
本吉先生はどうして何度も南極に行かれるのでしょうか?

──南極に忘れ物を取りに行っているんです。調査や研究を続けると分からないことが出てきて、調べたくなる。調べるために南極に行く。するとまた謎が出てくる。そのくり返しです。

な、なんてかっこいいんでしょう...参加者もグッときた方が多かったらしく、アンケートにも先生からのこのメッセージが印象に残ったと書かれている方がたくさんいらっしゃいました。

研究者がなぜ研究をするのか。もちろん多くの方の役に立ちたいという思いはあると思います。でもやはり研究者は「謎を解き明かしたい」というまっすぐな気持ちに突き動かされるまま研究に没頭しているのでしょう。好奇心をてこにして地球の果てや宇宙にまで行ってしまうところがやはり人間という生き物のおもしろさなのかなぁと私は思いにふけってしまいました。

...いかがだったでしょうか?イベントを実施する側の科学コミュニケーターも大いに楽しんでしまった充実したイベントでした!
改めてご協力いただいた船の科学館の皆様、国立極地研究所の本吉洋一先生に深く御礼申し上げます。
これからも科学コミュニケーターは来館者の方に楽しんで頂けるイベントを企画していきます!皆様とお会い出来る日を楽しみにしています!

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この記事への2件のフィードバック

これをきっかけに、多くの方が南極に興味を持っていただければうれしいです。「南極は地球と宇宙をのぞく窓」・・・地球の歴史と宇宙のかかわりをひも解いていくと、人類がこれから進むべき道筋が見えてくると思います。南極越冬隊は南極から逃げることはできません。でも振り返ってみれば、我々人類も地球という星から逃げることはできないのです。そのことを、人類はもっと認識すべきかもしれません。

本吉先生

コメントありがとうございます!
我々人類も地球という星から逃げることはできない...おっしゃる通りですね。でもほとんどの方が認識することなく生活してしまっていると思います。(私も含め)
そのことをしっかり認識することが、資源や環境などの様々な問題を解決することにきっとつながるのでしょうね。
これからも未来館は「南極」を切り口に地球や宇宙について考えて頂く機会を提供していきたいと思っています。
引き続きご協力頂けると幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

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