科学コミュニケーターだって、研究者だって〇〇好きです。

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さて問題です。
お察しの通り......"〇〇" には何がはいるでしょうか!?

ヒント→〇〇が好きな人には、こんな特徴があります。

1. 時間の長さは、時計の針が「あとどのくらい移動するか」で判断しています。(数字で何時何分と聞いても、瞬時に頭の中で文字盤に置き換えられる)

2. もらって嬉しかったメールは、何となく印刷して紙で眺めてしまいます。(写真もしかり!)

3. 壊れるまでは、と言い聞かせながらフューチャーフォン(ガラケー)から卒業できません。(将来スマートフォンに変えても、電車の中は絶対「紙」の本を読むぞ!と心に誓っていたりします)

20180404_nishioka_00.JPG〇〇好きのアイテムたち(※私物)

さあ、ここまで来たらもうお察しのはず。

そうです、

答えは「アナログ好き」!
(何となく、ブーイングが聞こえてきそうですが、聞こえないフリ......)

先端科学技術について解説したり、その技術を使ってどのような未来を築いていきたいか、語り合うプラットフォームをつくったりする科学コミュニケーター。それはもちろん最先端好き! 新しいもの好き! と思われていることが多いのですが、実はそうとも限りません。私自身、自他ともに認めるアナログ人間で、上のヒントがすべて当てはまる科学コミュニケーターなのです。(何となくまたブーイングが聞こえる気がする......)

未知の世界に触れる科学や、科学者の情熱にはわくわくしますが、それを実生活で使うかというと「いやー、私はこれまで通りでいいや」と考える頑固者。実は、逆にそれが科学をコミュニケーションするフックになったり、議論の種になるので面白かったりします。

ところでこの話題の発端は、先日イベントに参加されたお客様のある一言にあります。


私、アナログが好きなので......


最先端の科学研究に触れていただくイベントに参加した直後のこと。
いかがでしたか? という問いかけに、最先端とか、科学とか、そういったものは自分の範疇ではない、コメントするのも気が退ける......そう考えられている印象でした。

参加して頂いたイベントとは、「ともにつくるサイセンタン!~あなたは自然の"声"が聞こえますか」というもの。


シリーズイベント「ともにつくるサイセンタン!」は、研究者や開発者が未来館で直接実施する実験イベントで、参加者の皆さんの反応や意見が、そのまま研究データに変わります。とはいえ、難しいとか複雑なことはありません。年齢制限を設ける場合もありますが、科学に関する知識や関心の度合いとはあまり関係なく、どなたでも楽しく最先端の研究に参加できるように企画しています。最先端研究と言っても、気負わず自然体で参加して頂ければ、その生の声が、一番ありがたいデータになるという仕組みです。

今回のテーマは「自然環境の音を聴く」こと。
そして参加者には、ヘッドフォン越しで「何が聴き取れるか」に挑戦してもらいました。

20180404_nishioka_01.jpg画像提供:東京大学 空間情報科学研究センター

自然の音を聴くことで、どんな研究に参加できるの?
研究者が想い描いている未来像とは?

今回の実験を提案してくれたのは、東京大学 空間情報科学研究センターに所属する研究員の中村和彦さんです。

中村さんは、自然環境の中に設置したマイクで集めた、リアルタイムの環境音を配信するシステムを使い、環境教育活動や研究を行っています。
このシステムの応用で、遠隔地や、人が簡単に入ることのできない場所で起こることや、生態系の観測が可能になるのでは、と想い描いています。

20180404_nishioka_02.jpg画像提供:東京大学 空間情報科学研究センター

例えば生態観測では、どの鳥が何回鳴いた、というようなモニタリングも行うわけですが、音を識別、カウントするだけなら、今話題のAIにやってもらえば? と思う方もいるかもしれません。

イベント当日は参加者に、どこの場所の環境音か知らせず、3地点の音を聴いてもらいました。そして、何が聴こえたか、そこはどのような場所か、想像力を働かせて考えてもらいました。そして、そこから「人はどのように、何を聴きとれるのか」というデータを抽出しました。

20180404_nishioka_03.jpg

東京大学秩父演習林
画像提供:東京大学 空間情報科学研究センター

人間の想像力
それが今回の鍵の一つです。

AIの技術が発達しても、音の先にある本物の自然の広がりを、想像の世界で「見る」ことができるのは、今のところ人間だけです。AIの能力と、人間の想像力の協働で、自然を荒らすことなく、あるいはなかなか行くことのできない場所の環境を見守り続けられる未来は、なんだか素敵だと思いませんか?

ところで先ほどの「アナログが好きなので......」というコメント。
先端研究と言っても、イベントには、その方の興味をひく何かがあったはず......。
自然の音を聴く、という行為そのものに反応されたのかもしれないし、魅力を感じたのかもしれない......。音を聴くだけで最先端の研究に関われるなら、できるかな、やってみようかな、と思われたのかもしれない。それに、今回の鍵である「想像力」って、実は人間のアナログ活動そのものなのでは? その方が惹きつけられた何かにこそ、この研究のヒントが隠されているかもしれない。そう考えると、このコメントにどんどん興味がわいてきました。

この想いを、研究者の中村さんにもお伝えしてみました。
すると、そういえば! と過去に開催されたセッションを紹介してくれました。
「ナチュラリストとデジタリストの邂逅(かいこう)」と題されたセッション。
言葉の通り、両者が交流を図り、意見交換する場だったようですが、この二者というのは、何となく相性が悪そう......というのが最初の印象でした。それに対して、中村さんのコメントがこうでした。

以下、中村さん談

我々の研究は、アナログ好きな方に対して、その「好き」をもっと豊かにするような、そんな「デジタル」の在り方を探る研究なのかもしれません。
少なくとも、アナログvsデジタルとか人間vs AIのような対立構造ではなくて、両者が共存・協働することで生み出される新たな価値を模索したいですね。

......ノックアウトです。

先端科学研究というと、アナログの逆を行くものと思われがちですが、実はそうでもないんだな、とこの言葉からも実感。
さらに、アナログの良さをどのように再現するのか、あるいはさらに引き出すか、それ自体が先端研究につながりそうです。
そして、そもそもアナログの良さの正体って何? って考えていくと、そこはまだまだ未知の世界が広がっている気がします。未来館では、「人間ってなんだ?」という問いをテーマに、オルタやオトナロイドなどのアンドロイドを展示していますが、この問いともつながりそう......。なかなか深遠です。

20180404_nishioka_04.jpg

人間って何だ? オルタ(左)とオトナロイド(右)

今回の私の気づきは、みんなの感じた「何か」、心が反応した「何か」が、研究者の新しい発見になり、研究を進めていく上で、新しい視点になるかもしれない、ということ。うまく説明できなくても、感覚的なものでも、そこには最先端の科学研究を動かすヒントが潜んでいるかもしれません(鼻息!←得意技)

ということで! 皆さんが研究や最先端技術に感じた「何か」をぜひ語りにきてほしいな、と思います。科学することは、世界を知りたいという好奇心、いわば心のときめきなわけですし、アナログ好きも胸を張って、最先端の研究に口を出して(いや、失礼しました意見を述べて)いきましょう!

今回の「ともにつくるサイセンタン!~あなたは自然の"声"が聞こえますか」は、おかげさまでたくさんのデータが集まり、惜しまれつつも2月でいったん終了となりました。データを使ってどのような研究成果があったのかなど、またお伝えできる機会があることを願っています。

実験イベント「ともにつくるサイセンタン!」シリーズは、これからもまだまだ続いていきます。みなさまのご参加をお待ちしています~!

関連リンク:

ともにつくるサイセンタン!「音でつながる人と環境~あなたは自然の"声"が聞こえますか?」イベント詳細(開催済み)

東京大学 空間情報科学研究センターHP

環境教育のための森林情報基盤・サイバーフォレストHP

「ともにつくるサイセンタン!」 企画提案募集(2018年第1回)について(研究者、開発者の方向け)