フィジカルコンピューティングを考えてみる(その1) 『100円で作る電脳空間ジョギングマシン』

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画面に描かれた街を"走る"ことはできるのだろうか?

突然だが、形態模写をしていただきたい。お題は「コンピュータを使っているところ」。

頓智では無いのでヒネらず、頭に浮かんだイメージで身体を動かしてみよう。

ちょうど私の周りに居た同僚3人に、同じお題を出してみたら3人が一斉に指をカタカタと小刻みに動かした。

多くの人が、この3人と同様に"キーボードを打つ仕草"をするのでは無いだろうか?


多くの家庭用PCには、キーボードが接続されている。他には、モニタ(タッチパネルになっているものもある)、マウスがある。コンピュータを使う時、人間は指先でキーボードやマウスを操作してコンピュータに思いを伝え、モニタから反応を見ることを繰り返している。コンピュータの気の利かなさやマイペースぶりに苛立つこともあるが、人間の指先で入力された信号から心中を察せよというのは、長年連れ添った女房の域までコンピュータを高める必要があるかもしれない。

プログラム次第でゲーム機にも音楽プレイヤにも、何にでもなる可能性を含んだコンピュータに対し、人間の思いや言葉を伝える手段をキーボードやマウスといった「指先の運動」で限定してしまうのはもったいない。

人間は足を使って歩くし、暑くなれば汗もかく。風邪をひけば熱を出すし、イライラすれば貧乏ゆすりもする。これまでコンピュータに伝えられずに切り捨てていた人間の身体的情報を伝えることで、人とコンピュータの新しい対話環境がつくり出されるはず。このテーマに取り組むのが、ニューヨーク大学の教育プログラム、研究指針「フィジカルコンピューティング」だ。

今回は、家庭でできるフィジカルコンピューティングに挑戦してみたい。

googleストリートビューで眼前に広がる三次元の街を走り回ってみたいと思った。通常、視点の移動にはキーボードやマウスを利用するが、キーをクリックする指先の上下運動と、実際の「走る」という身体感覚は一致しない。自分が実際に走ると、ストリートビューの中の視点が移動することで自然と

言えるだろう。

そこで、「電脳空間ジョギングマシン」と名付けた装置を作ってみた。

私の自宅に転がっていたゴミ寸前のキーボードと100円ショップの活用で、かかったコストは計100円(税別)。

特殊な環境の我が家で実現したコストなので場合によっては、ハンダごてやリード線などを別途買い揃える必要があるかもしれない。電子工作に興味を持った方は、この機会に揃えて工具箱の中に入れておくのも良いだろう。タイトルはキャッチーで気に入っていることもあり、私が実際にかけたコスト「100円」(税別)にしておく。

仕組み

Googleストリートビューは、キーボードの[↑]キーを押すと視点が前進する。表示される街を走り回るには、人間が歩く動作を検出した時に[↑]キーが押される装置を作ればよい。

今回は100円ショップの「万歩計」と、分解したキーボードを繋ぐことで実現した。

部品

  • キーボード...USB接続できるものの方が作業は楽。壊しても良いもの。
  • リード線付きミノムシクリップ...ホームセンターで、10本程度のセットで販売されていることが多い。1セットあれば十分。
  • アルミホイル・10cm四方くらい...キッチンにある普通のアルミホイル。
  • 万歩計...100円ショップで購入可能。

工具

  • ドライバ

  • ハンダごて

  • ヤニ入りハンダ
  • ニッパー
  • カッター

作り方

当記事内で紹介する工作を実施した結果生じた損害に関し、独立行政法人科学技術振興機構、日本科学未来館及び著者は一切の責任を負いかねます。各自の責任と判断のもとに実施してください。

初心者の方は、必ず十分な知識がある方と一緒に作業してください。

■万歩計の改造

  1. リード線付きミノムシクリップのリード線を切り、導線を露出させる
  2. 電池を取り出す(この電池はもう使わない)
  3. ネジを外し裏蓋を開ける
  4. 振動で接触する歩行センサ(2箇所)に、1のリード線をハンダ付けする

    [caption id="attachment_465" align="aligncenter" width="300" caption="歩行センサにはんだ付け。"][/caption]

     

  5. リード線付きミノムシクリップを裏蓋から外に出す
  6. 外したネジを戻し、蓋を閉める

■キーボードの改造

  1. キーボードの裏蓋のネジを全て外し、開ける
  2. 2枚重なった透明シートの、まずは上側のシートで[↑]キーを見つけ、ペンでなぞるなどして配線を追う

    [caption id="attachment_468" align="aligncenter" width="150" caption="↑キーの配線を追う"][/caption]

    [caption id="attachment_470" align="aligncenter" width="150" caption="ペンで印をつけると楽"][/caption]

  3. キーボード内にある基板の、どの端子に繋がっているかを特定する

    [caption id="attachment_469" align="aligncenter" width="150" caption="基板のどの端子に繋がっているか特定する"][/caption]

  4. 同様に下側のシートについても[↑]キーの位置から配線を追いかけ、基板の端子を特定する
  5. 基板をドライバーなどで取り外す
  6. ((ここからは、分解するキーボードによって作業が異なる場合があります))上記2、3で見つけた端子だけが露出するように、それ以外の端子にセロハンテープを貼る(ショートを防ぐため)

    [caption id="attachment_471" align="aligncenter" width="150" caption="必要な端子のみ露出させ、残りはテープで絶縁"][/caption]

  7. アルミホイルをたたみ、一辺1cm程度の小さな\\四角形にする
  8. 6で露出させた端子に、たたんだアルミホイルが接触するようセロハンテープで貼り付ける(アルミホイルと端子の接触をセロハンテープが妨げないように注意)

■万歩計とキーボードの接続

万歩計に取り付けたミノムシクリップで、キーボードの基板上のアルミホイルを挟む。

やってみよう!

  1. googleストリートビューで適当な場所を表示(...例えばここ)
  2. 製作した装置をPCに接続(初回接続時のみ、装置がPCに認識されるまで1分間ほどかかるので注意)
  3. 万歩計を腰に装着して走ってみよう!

■動画でおさらい(最後に動作の様子もあります)



やってみると、なかなか楽しい。走る速度に通信速度がついてこれず動きが止まることも多いが、走っている気分にはなんとなくなれる。

Googleストリートビューでデータ化されれば、バーチャル箱根駅伝や、バーチャルお遍路も夢ではない。

最後に...

昨年11月のサイエンスアゴラで、「ソーシャルメディアを活用した科学コミュニケーションの効果」を考えるイベントを企画しました(イベント公式ページはこちら)。このイベントで講師の野尻抱介氏が紹介したのが、工作を作り、動かす様子をネット公開することで、他ユーザーにもその興味が連鎖するという現象でした。(具体的には「初音ミクのネギ振り・小型化戦争」が紹介されています)

今回私の紹介した装置が、皆様の新たな知的好奇心や発想のきっかけとなればと思っています。今後も「ものづくり」と「科学コミュニケーション」、そこから生まれる「連鎖反応」を意識しながら、ブログを書いていきますので、よろしくお願いします。

次回は、今回製作した装置で動作する簡単なプログラムを考えてみます。→続きを読む

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この記事への1件のフィードバック

なーるほど。半田ごて手作業+クラウドサービスとはグッドアイデア!未来館のショップでおみやげとして売ってたらいいのに。

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