フィジカルコンピューティングを考えてみる(その5)『この夏、コンピュータにダイブ!』

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Dive into your computer !

1936年ロンドンで開催された「国際シュールレアリスム展」の講演会において、潜水服を着用した男が現れた。

両手には2匹の猟犬をつないだ革ひもと、ビリヤードのキュー。

この奇怪な出で立ちで聴衆の前に現れたのは、芸術家サルバドール・ダリだ。

潜水服には"潜在意識に飛び込め!"というメッセージがこもっていたのだが、講演開始直後にダリはもがき苦しみはじめた。

...なんと潜水服の酸素供給がうまくいかず、窒息死しかけていたのだ。

先日この話を思い出したとき、ふと"コンピュータに飛び込め!"というコトバが思い浮かんだ。

ちょうど目の前にコンピュータがあったから。

もしも人間がコンピュータの世界に飛び込めたら、そしてネット空間を飛び回り、コンピュータの内側から外側(私たちの居るこの世界)を動かすことができたら。

...ちょっとだけサイバーパンク小説『ニューロマンサー』や、テレビドラマ『マックス・ヘッドルーム』に近い気がする。

今回はそれを、1000円程度の簡単な電子工作で実現してみよう。(窒息しませんので、ご安心を)


しくみを考えてみる

今回は「コンピュータの中に入り込んだ(ダイブした)ような気分になれる」ことと、「コンピュータの内側から外側の世界を動かす」装置を製作する。

これを、なるべくお気軽な電子工作で実現しよう。

テレビドラマ『マックス・ヘッドルーム』では主人公の記憶を信号として引き出し、コンピュータの中に再構成していた。これをマネするのは不可能なので、代わりに思い切り安上がりな仕組みを考えた。

  • デジタル・カメラで人物の姿を撮影し、YouTube、Ustreamなどで動画配信する

  • 人物が映った動画を表示するディスプレイに光センサを貼り付け、輝度によりリレーをon/offする

■ リレーは、電磁石でスイッチを切り替える部品。電気信号を送ることでスイッチのon/offができる。

■ 光センサは、前回登場したCdSセルを利用する。

映像の中の人物が、以下のような片面が白、もう片面が黒のボードを持つ。

物置にあった黒い厚紙の裏面に

コピー用紙を貼り付けて製作した

映像の中で白もしくは黒のボードをカメラに向ければ、ボードを表示している箇所の輝度が変化する。この輝度の変化をディスプレイに貼り付けた光センサで検出し、リレーを作動させることで様々な機器のon/offを制御する。(動作が想像つかない場合、下の動画を先にご覧ください)

当記事内で紹介する工作を実施した結果生じた損害に関し、独立行政法人科学技術振興機構、日本科学未来館及び著者は一切の責任を負いかねます。各自の責任と判断のもとに実施してください。

初心者の方は、必ず十分な知識がある方と一緒に作業してください。

「ホントに動作するか?」考えてみる

まずは、ノート上で回路を設計し、正しくリレーが作動するためのCdSセルの値を計算した。

その結果、映像に白いボードが表示され明るいとき「16kΩ以下」、黒いボードで暗いとき「56kΩ以上」程度になれば正しく動作すると計算できた (トランジスタは温度や個体差で性能がばらつくため、ある程度厳しい条件で算出した)。

CdSセルに部屋の照明などの光が影響を与えないように、以下のように黒テープを巻き付けたストローを装着して実際に計測してみた。

以下のようなテスト画像を画面に表示した上で、ストローを装着したCdSセルを画面に押し当てて、その抵抗値を測ってみる。

クリックすると大きな画面で見られます

 

ノートPCの輝度を最大まで上げて、画面左端の白から右端の黒に向かって順にCdSセルを当ててみる。私の手持ちのCdSセルで 白:5.3kΩ→薄いグレー:7.9kΩ→濃いグレー:13kΩ→黒:133kΩだった。

上記のCdSセルに求められた条件を満たしているので、設計した回路で「いけそう」と判断。早速、つくってみよう!

つくってみよう

以下に回路図を示す。本シリーズは気軽に作れるように、敢えてハンダ付けをしない電子工作を行ってきた。今回は夏休み期間中ということもあり、ちょっとステップアップしてハンダ付けに挑戦してみよう。

(火傷や火災の危険がありますので、初心者の方は必ず十分な知識・経験をもった方と一緒に作業してください!)

部品一覧

基板...ユニバーサル基板を使用する。7cm×4.5cm程度がちょうど良い。

スズメッキ線...30cm程度で十分。部品同士の結線に使用する。

V :電池 1.5vの乾電池を4本直列にするバッテリーケースを使用。6.0vとする。

VR :半固定抵抗 50kΩBカーブの半固定抵抗。

CDS :CdSセル 上記で検証したもの。

R :抵抗 抵抗値を表す色がつけられているが、10kΩなので「茶・黒・オレンジ・金」の線が入ったものを選ぶ。

D :ダイオード 電気を一方向にのみ流れるようにする部品。リレーのコイルから発生する電流から回路を保護するために接続する。回路図の記号と、部品の取り付け向きは下図のように対応する。

TR :トランジスタ わずかな電流を大きな電流に増幅する部品。今回はCdSセルの抵抗値の変化から、リレーを駆動させるための電流を得るために使用している。回路図の記号と、部品のピンは下図のように対応する。

RL :リレー 6v・25mA(150mW)で動作するものならば記載した型番以外でも使用できる。

 

完成した基板がこちら。

 

回路図右側の6V,B0,A,B1,GND端子はミノムシクリップでつまめるよう、スズメッキ線で下の写真のように輪をつくっておくと便利。

 

 

CdSセルが明るい光を感知するとA端子とB1端子がショートする(感知していない間はA端子とB0端子がショートしている)。この端子を利用することで、様々なスイッチをon/offできる。

電源が必要な場合は、6V端子(乾電池のプラス側)とGND端子(乾電池のマイナス側)を利用する。

できたかな?動作確認

(1) 人物を撮影

黒い壁に20センチ四方の四角をビニールテープで区切っておく。動画撮影時は、この四角を目印にして白と黒を交互にかざす。

デジカメを固定し、人物を1分間ほど撮影する。

(2) 基板の動作確認

(1)で撮影した動画をPCで全画面表示して、再生。

撮影時に壁に貼り付けた四角を目印に、CdSセルを養生テープなどでディスプレイに貼り付けて固定する (ストローもいっしょに)。

動画の中の人物が板の白と黒をかざした瞬間に、リレーがカチカチと音をたてて切り替われば動作OKだ。

(3) うまく動かない?調整しよう

  • 回路図通りに基板が作られているかを確認する
  • 基板上の半固定抵抗をドライバで回し感度を調整する
  • ディスプレイを操作し輝度を調整する
  • CdSセルの貼り付け方を確認する
  • 部屋の照明を落とし暗くする
  • 撮影場所の照明を調整する
  • 白いボードの代わりに懐中電灯をカメラに向けて点灯する

やってみよう

動作させている様子は、以下をご覧いただきたい。

ここでは基板を3つ製作し、同時に動作させてみた。リレーには玩具のピアノ、モーター、LEDを接続してある。


映像をUstreamやYouTubeといったサービスでネット配信すれば、今回のような簡単な装置でも世界中の機器をコントロールできる。旅行先からスマートフォンを使って動画配信すれば、家の照明をコントロールすることだって可能だ。

ネット配信は、多数のコンピュータに向けて行うことができる。つまり、やろうと思えばネットから数千ものスイッチを同時にon/offできるのだ。

使い方を工夫すれば、面白いことに応用ができるだろう。

機器の接続例

■例1 豆電球を接続

■例2 モーターを接続

■例3 乾電池で動くオモチャの電源スイッチに接続

(乾電池のプラスとマイナスがショートしないように注意!)

最後に

『 科学がわかる、世界がかわる 』

日本科学未来館のスローガンです。

机の上に置いた基板にケーブル1本をハンダ付けすることは、大して難しいことではありません。

しかし、ケーブルの先に繋げられるものは、この世の中に無数にあります。

スピーカー、アンテナ、電子楽器、金属製のスプーンetc。これらを繋いだら、いったい何が起きるでしょうか?そして何をしてみたいでしょうか?

部品が異常加熱したり破裂したりせず、安全に考えた通り動作させるには知識や経験が必要です。十分な知識なく試すのは危険ですので、まずは「何が起きるか」を想像してみましょう。きっと、可能性を感じられることと思います。

ハンダ付けは、世の中に新しいシステムを作り出すための行為です。

自らが机上で作った小さなシステムを、巨大なシステム(GPS、インターネット、モデムなど)に接続することだって可能です。

作業机の上で「世界がかわる」気がしませんか?

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