贈りもの

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こんにちは。科学コミュニケーター寺田です。

前回は、GWに東北で出会った「たからもの」について紹介しました。

皆さん一人ひとりの「たからもの」は何でしょうか。引き続き、ぜひ教えてください。

# 漁師さんからの「贈りもの」

今日は、南三陸町の漁師さんから頂いた「贈りもの」のお話をさせてください。

贈り主の方に出会ったのは温泉から避難所に戻るバスの中。人数の少ない避難所をまわり、岩手県との県境にある温泉まで送迎する大型バスです。ボランティア活動の一環ですが、この大型バスを貸し出しているのも、毎日の運転を買って出ているのも地元の方々。

私は、一日だけ活動に参加しました。皆さんと一緒に温泉に入って、身体の疲れをほぐして、帰りがけのバスの中でいろいろなお話を伺いました。(温泉送迎・傾聴のボランティアです。)

大勢いらした漁師さんのうち、ある方は、こう仰っていました。「海は怖いなぁ。漁はもういい・・・」。

その場にいらした漁師さん同士、それぞれ、言葉にならない想いを抱えていらっしゃる様子でした。時折、沈黙が訪れては、「これからどこに住むのか、そこから決めなきゃなあ」「今回丸ごと流されたJRの線路や高速を新しく造るという話があるけれど、元通りの場所に造ってはだめだろう。もっと山側でねえと」という話題が挙がりました。温泉でつかの間、現実を忘れることができていたけれど、帰り道に周りの景色を眺めながら、すぐに現実に引き戻されているようでした。

また、別の方は、こう仰っていました。「早く漁を始めたいなぁ」。

そして、またある方は、「次に漁に出る時のために、手を鈍らせないように、毎日こうして縄を編んでいるんだぁ」と仰いました。引越し作業に使う麻紐を袋から取り出し、「感覚を取り戻しておかないとなぁ」と呟きながら、縄を編んでいました。「本当はこの紐じゃあないのだけれど、その紐が全部なくなっちゃったので、知り合いがくれた紐で今はやっているんだよ」と話してくださりながら、手を動かしていきます。1本の長い長い麻紐は、みるみるうちに、立体的な立派な芸術作品になっていきました。日本人の血に流れている、手先の器用さを間近で見た気がしました。

一つひとつの「浮き」は、先祖代々、漁師さんの手から手に引き継がれて、魂のこもった技で作られていたことを感じました。私達の日常では、現代版の「プラスチックの浮き」を見かけることが多いと思いますが、「ガラス玉の浮き」にはそんな作り手の姿があったのです。完成品を手にとるだけでは得られない、目の前で作品が紡がれていく時間を共有することができ、とても貴重な時間を過ごしたと思います。

皆さんを避難所までお送りした時に、漁師さんは私たちボランティアにこう聞いてくださいました。

浮き、よかったらみんなの分も作るけれど、いるかい?

もちろんです!!!!!

その漁師さんの避難先は、海を見下ろすことができる高台にありました。浮きを作りながら、「また、海がみえる所に住みたいねえ」と仰っていました。浮きの完成には数日かかると聞いて、このときはひとまず、お礼をしてお別れをしました。

数日後、東京の実家には、ボランティア仲間を通じて、漁師さんからの「贈りもの」が届きました。私の「たからもの」です。

何と、私の名前も書かれていました。

 

次回は、海の復興に取り組む、気仙沼市のカキ養殖家さんの話を紹介したいと思います。

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