SFを科学する ~A.I.編①~ ここまできた!人工知能

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SFから科学技術を探る私のブログシリーズ、今回はスティーブン・スピルバーグ監督のSF映画A.I.を取り上げます。

SF作品の多くにはロボットが登場しますが、ほとんどの場合、主人公は人間です。しかしこの作品が特徴的なのは、主人公が人間の男の子の姿をしたロボットだという点です。

では、なぜロボットが主人公の映画が、日本で97億円もの興業成績を上げたのか?私はこのロボットの持つ「人間らしさ」に人々が感情移入できたからではないかと思っています。人を愛し、愛されるために生まれたロボットが、母親の愛を求めて必死にもがく姿があまりに切ない。

しかしこのSF作品のように実際に人間が感情移入できるような「人間らしさ」をロボットに持たせるのは容易ではありません。それにはまず人間の言葉を理解し、適切にコミュニケーションをするための、コンピューターを用いた高度な知能が必要になります。このようなコンピューターによる知能のことを「人工知能(Artificial Intelligence=A.I.)」といいます。まさにこの作品のタイトルそのものです。

さて、この映画が世に出てすでに10年が経ちましたが、人間と自然な会話ができる人工知能はできたのでしょうか?

答えはというと、まだできていません。しかし、つい最近、この分野で画期的な成果が生まれたのです。

それはIBM社が開発した「Watson(ワトソン)」という質問応答システムに関するもの。20112月、ワトソンはアメリカで40年続く人気クイズ番組に出演し、なんと人間のクイズ王者に勝ったのです!

1997年、人工知能がチェスの王者に勝利したことが大きなニュースになりました。しかしチェスでは決まったルールの中で、コンピューターの優れた演算能力を利用してあらゆるパターンの手を考え、決定すればいいのです。

ですがクイズとなるとそうはいきません。正解をどう導き出すかということも非常に難しいことですが、最も難しいのは人間の言語の理解です。クイズの質問には、微妙な言い回しや多義的な言葉を含み、文脈をしっかり汲み取らないと、答えが導きだせないのです。

以下の動画はIBM社がなぜワトソンを作ったかを紹介するものです。

ワトソンは自然言語の理解と瞬時に正解を導くことの両方を見事にこなし、人間のクイズ王に勝てたのです!

このワトソン、7月25,26日に開催された【コンピューターの進化 ~科学でできること~】というイベントで日本科学未来館にやってきました。といっても、ワトソンは大型冷蔵庫10個ぶんのコンピューターですので、さすがに本物がやってきたのではありません。やってきたのはワトソンのことがわかるタッチパネル(写真使用許諾:IBM)。

これ、本当によくできていてワトソンのことが楽しく学べる素晴らしいものでした。

さて、人工知能はチェスの王者を破り、クイズの王者をも破りました。これからも人工知能は猛烈な勢いで進化し続けるでしょう。将来、もっと高性能の人工知能ができたとき、私達の生活はどう変わるでしょうか?

例えばあらゆる科学の質問に答えられて、映画「A.I.」並みに人間と完璧なコミュニケーションができる人工知能があれば、私のような人間の科学コミュニケーターはいらなくなっちゃうかも!?ま、これは半分冗談としても、ぜひこれからの研究の進展を見守ってくださいね。

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この記事への2件のフィードバック

こんばんは!

未来館の皆さんのブログ、今日初めて見つけて読みまくってます!

人間の言語の理解ってたしかにとても難しいですよね。だからコンピュータが、普通の人の話し言葉を理解できるようになったらそれはすごい技術だと思うんですけど、そんな技術ができあがったらデパートの案内係の方や市役所とか病院の受付の人とかがロボットになっちゃったりするんでしょうか? それも未来っぽくていいのかもしれませんが、ロボットの受付嬢と話してるところとかを想像すると気持ち悪いんですよね。きっと「人間を出せー」って怒鳴りだくなるような気がして。どうなんでしょう?

高杉信子様

コメントありがとうございます。私もロボットと自分が病院などで会話している

姿を想像するとなんだか少し気持ち悪い気がします。ですが、ロボットがどうす

れば人間とうまくコミュニケーションできるかという研究も最近盛んに行われて

います。また表情も人間そっくりのロボットが既に出てきつつあります。

もしかすると、「人間の言語を完全に理解して話す」という高度な技術が確立し

ている時代には、ロボットがもっと身近になっていて、みんな違和感なくそれを

受け入れているかも知れませんよ。未来の社会を想像してみるのも面白いですね。

佐尾賢太郎

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