いとおか市を256倍楽しむ方法(1)

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展示で紹介されている先端科学トピックスだけが最先端にあらず。

未来館では造作表現からメカトロニクスまで、新しいチャレンジを盛り込みながら最先端の常設展示開発をしています。

展示開発に携わった科学コミュニケーターだけが知る常設展示の舞台裏。そこで目にするのは、日本が世界に誇る巧の技とおもてなしの心。

常設展示を256倍楽しむ方法を、このブログをお読みのみなさまだけに特別にたっぷりじっくりちゃっかりご紹介しちゃいます。

 

これから全3回シリーズで、8月21日にオープンの新しい常設展示「2050年くらしのかたち」の楽しみ方をご紹介します。

心得1つあたり常設展示を2倍(当館比)となっており、8つ全ての心得をそろえていただければ2の8乗で256お楽しみいただけます(注:効果には個人差がございます)。

2050年くらしのかたち

 

栄えある第1回は「2050年くらしのかたち」でまず目に入る「都市模型」をご紹介します。

心得1 細かいことを気にせよ

誰がどうやって作った? 素材は何? かたいのやらかいの?

「本質的でない! 細かいことを気にするのはナンセンス!」と思うかもしれませんが、しかし神は細部に宿るのです。

作り手のことを考えるのは、正岡子規の俳句を「あぁ、結核で床に伏せながら詠んだんだなぁ」と思うのと同じこと。深く味わうためのたしなみですね。

 

小さい建物は人工木材「ケミカルウッド」という材料で作られています。「軽い」「着色性が良い」「経年変化が少ない」など、とても使い勝手の良い素材です。

また、天然木と違って木目がないため、方向性を問わず切削加工できるのが最大の特徴です。堅さもいろいろ選べます。

機械で切削加工したあと、模型づくりの職人さんが1つ1つヤスリがけして仕上げた手作り一点物なのです。

色が天然木に見えるが、木ではない。

色が天然木に見えるが、木ではない

金太郎あめのように1度にたくさんの家を作る。

金太郎あめのように1度にたくさんの家を作る

 

未来館にお越しの際は、ぜひ双眼鏡を手に、いとおか市の都市模型の隅々まで眺めてみてはいかがでしょうか。

 

心得2 大きいことはいいことだ

昭和の香りがぷんぷん漂うこのフレーズですが、私は今でも有効だと思っています。

とくに未来館のように展示場の天井が高くスコーンと広々している場所では、大きさはです。Geo-Cosmosだって直径60cmしかなかったら、シンボルとは思いませんよね。

いとおか市の模型は、未来館の中でも天井が高く、吹き抜けになっている場所にあります。なので、あまり大きさを感じませんが、実は一辺6mもあります。

 

これって実際は結構大きいですよ!

大阪の工場で製作してもらいましたが、驚くべきはその幅のピッタリ具合。

人が1人通れる程度の隙間を残して、あとはいとおか市模型がどーんと工場内を占拠していました。工場での制作途中の写真をどうぞご覧ください。

大阪府いとおか市の仮設現場(株式会社ヤマネ)

大阪府いとおか市の仮設現場(株式会社ヤマネ)

 

これは、いとおか市のために用意された工場!?

そんなふうに思ってしまうほどピッタリサイズなのです。

模型のほとりでは、制作会社さんと未来館企画スタッフとでうんぬんかんぬんしております。それと比較すると、模型の大きさが分かっていただけるのではないでしょうか。

 

縮尺250分の1で設計してある模型の6m四方は、実際の街でいうと1.5km四方に相当します。これはぶらり歩いても30分圏内。

歩いて楽しめる街、いいですね。

歩けるといえば、模型の下にはがっちりと足場が組まれているので、作業のために模型の上を歩ける点も見所ポイントです。

これぞ、街歩きのようすをご覧ください。

塗装のためいとおか市を散策中。

塗装のためいとおか市を散策中

 

いとおか市の縁の下。

いとおか市の縁の下

 

展示場でも、運良く(運悪く?)何かのトラブルがあれば、テクニカルスタッフが模型上に登って作業するシーンが見られるかもしれません。

 

心得3 体感より心感

都市模型のツウな見所といえば、背景パネルの他にないでしょう。

いとおか市の背景には、遠くに白んで見える山々と、春めいた淡い色の空、そしてフワフワと浮かぶ本物のような雲が描かれています。

2050年にも、ちゃんと柔らかな日差しを感じられる春の日があると思うと、なんだかホッとしますね。

春の日差しを感じるいとおか市の空。

春の日差しを感じるいとおか市の空

 

この雲にピンときたアナタ。いい眼をお持ちですね!

実は背景画は、30年以上黒澤明監督や伊丹十三監督作品に背景画家として携わってきた島倉二千六さんという方に描いてもらっています。

今回は黒澤映画のドスンとした雲ではなくて、2050年のいとおか市のふんわり雲。

作業中の島倉二千六(しまくらふちむ)さん

作業中の島倉二千六(しまくらふちむ)さん

 

これには深いいきさつがあります。

「2050年くらしのかたち」では、日本を代表する映画の美術監督の種田陽平さんに展示のトータルアートディレクションをお願いしています。

えぇ、聞き間違いではありませんよ。あの、種田陽平さんです!

 

映画のほかにも舞台美術や展覧会も手がけている方ですが、このたび、未来館の常設展示にご協力いただくという大変貴重な機会を得ました。

いとおか市の都市模型が、手前から奥にスケールを変えながら大きな遠近感をもって表現されているのは、種田さんの提案なんです。

また、これまで描かれてきたギラギラした金属質な未来像とは異なった、自然界の色彩を感じられる未来都市を演出する、というのも種田さんのアイディアでした。

「模型の背景には日本の春の空を描きたい!」という種田さんからのリクエストを受け、映画でもご一緒された島倉さんに背景画を依頼する、ということに繋がったわけです。

背景パネルを見ながら現場で話し合う島倉さん(左)と種田さん(右)

 

スタジオの壁に描く映画の背景画では、次の撮影のために消されてしまう運命にあるものも多いと聞きますが、未来館のはなんといっても常設です。

ジェスチャー操作で未来感覚をたっぷり体感したあとは、一息ついて背景画を眺めてみてはいかがでしょうか?

 

本物の雲よりも雲らしいと評される島倉さんの雲。一見の価値ありです。

常設展示はそう簡単になくならないので、慌てずに未来館にお越しください。

 

心得(番外編) 借景ポイントを探せ

この展示は、未来館のシンボル展示Geo-Cosmosがチラリと視野に入るよう作られています。街の背景に大きな地球が見える、「借景」ポイントがいくつもあります。

あなただけが知る借景ポイントを、こっそり探してみるのも楽しいでしょう。

遠くにGeo-Cosmosを眺める

 

さぁ、今日はここまで!

 

パソコンの画面でバーチャルな世界を見るような展示が多いなか、私たちはあえて「実物」である都市模型の持つ力を最大限に取り入れた展示づくりを目指しました。

それは、ともすると時代に逆行しているように見えるかもしれません。

 

しかし、

百聞は一見に如かず。

ぜひともご来館いただき、ご自身の眼で「心得」を試して頂ければと思います。

 

(次回予告)

全国の鉄分不足のみなさま、お待たせしました。次回は、未来館オリジナル鉄道模型「リニア高速鉄道」と超伝導の深イイ話をお届けします。高圧ガス製造と看板が立つバックヤードに潜入し、液体窒素自動供給システムも本邦初公開します!

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