スマートフォンOS戦国時代

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みなさん、こんにちは。科学コミュニケーターの志水です。

前回は、組込みシステムの制御装置で、どのように処理が行われているかをご紹介しました。今回は、その制御装置の上で動作しているソフトウェアの中で、最も重要な役割をしているOS(Operating Systemの略)の話をしたいと思います。最近、OSって良く聞くけど何をしているものなの?なぜ、重要なの?と思われている方、必読です。

一大事件

と、その前に、これからお話するOSに関連する大きな出来事がありましたので、まずはそちらから。それは、Google社によるMotorola Mobility社の買収です。Googleは検索でお馴染みだと思いますが、最近ではAndroidという携帯情報端末用のOSを出しています。皆さまの中にも、Androidを採用したスマートフォンをお使いの方がいらっしゃると思います。一方、Motorola Mobility社は、主に携帯電話を開発・製造・販売している企業です。なぜ、Google社はMotorola Mobility社を買収する必要があったのでしょうか?

OS戦国時代

その背景には、スマートフォンのOSを巡って繰り広げられている熾烈なシェア争いがあります。まさに、OS戦国時代とも言える状況です。

現在、スマートフォンのOSとしては、Androidの他に、Apple社のiOS(iPhoneに使われているOS)、Microsoft社のWindows Phoneなどが日本では知られています。これらOSのシェア争いに関連して、最近特許争いが頻発するようになってきました。特許とは、新しい技術の発明者を保護する権利のことです。新しい技術を開発するには、時間とコストがかかります。そこで、発明者には、開発した技術を一定期間独占的に使用できることが法的に認められています。これが「特許権」です。そして、特許権によって保護された技術を他の人が使用する場合には、発明者から許可を得る必要があります。無断で使用すると、「特許権の侵害」とされ、その技術を使用した製品を販売することができなくなります。

したがって、シェアを広げるためには、ライバル企業よりも多くの特許を持っている方が有利になります。Motorola Mobility社は、情報通信関係の特許を数多く持っていますから、同社を買収することでGoogle社はシェア争いをより有利に進められるはずです。

アプリが使えるのはOSのおかげ

では、一体OSは何をしているのでしょうか。OSの主な役割は、以下の3つになります。

a. コンピューターの有効活用

b. リソースの管理

c. ハードウェアの抽象化

このうち、「a. コンピューターの有効活用」は、前回お話した内容になります。また、「b. リソースの管理」は、コンピューターの有効活用と似たような機能です。組込みシステムの中には、コンピューターの他に、データを保存する「メモリ」などの装置があります。それらの装置を効率よく使うために管理するのもOSの役割です。

それでは、「c. ハードウェアの抽象化」とは、どのような機能でしょうか。実は、この機能のおかげで、私たちは高機能な「アプリ」を低価格(ときには無料)でスマートフォンにインストールして使えるのです。

組込みシステムは、一般的に以下のような階層構造を持っています。

 

ハードウェアは、スマートフォンの例で言うと、メモリ、液晶ディスプレイ、無線通信装置などの装置。アプリケーションは、ある特定の機能を実現するソフトウェアのことです。スマートフォンの「アプリ」は、このアプリケーションのことを指しています。

実は、アプリケーションが仕事をするとき、ハードウェアを直接、制御することはあまりありません。ハードウェアの制御は通常OSが行います。従って、アプリケーションがハードウェアを動かしたいときには、OSにお願いをして動かしてもらいます。例えば、液晶ディスプレイに写真を表示したい場合には、OSに写真のデータを渡して、液晶ディスプレイに表示してもらうようにお願いします。

ん? アプリケーションが直接ハードウェアを動かした方が速いのでは?と思われた方。するどいですね。確かに、直接実行した方が、処理をすばやく実行できるかもしれません。しかし、そうするととても困ったことが起こってしまいます。スマートフォンの例で考えてみましょう。スマートフォンは、様々なメーカーが製造・販売していますよね。そのため、メーカーごとに使用しているハードウェアが異なります。ハードウェアが異なれば、ハードウェアの動かし方も異なってきます。もし、アプリケーションがハードウェアを直接制御するとなると、メーカーごとにアプリケーションを作り分けなければなりません。Aメーカー用のアプリ、Bメーカー用のアプリといった具合です。

それは、とても大変ですし、実際にそんなことはしていません。OSがハードウェアの制御を肩代わりしてくれるからです。そうすることで、アプリケーションはハードウェアの違いを意識する必要がありません。その結果、メーカーが異なっても、アプリケーションは同じように動作できるのです。このことは、アプリケーションの開発をとても容易にしてくれます。結果的に、私たちは高機能なアプリを低価格で使用できるわけです。

では、OSが異なるとどうでしょうか。その場合には、そのOSに合わせてアプリケーションを変更する必要があります。全てを作り直す必要はありませんが、手間がかかります。従って、アプリケーションの開発者は、シェアの高いOS用のアプリケーションを優先的にリリースすることになります。その方が、より多くの人にアプリケーションを使ってもらえる機会が増える訳ですから。一方、OSの開発者は、より多くのアプリケーションを出してもらった方が売り上げも伸びるので、OSのシェアを広げる必要があるのです。その結果、OS戦国時代とも言える熾烈なシェア争いが、今起きている訳です。

新しいコンピューターの出現

このことは、新しいタイプのコンピューターが出現したということを意味しています。今まで、私たちが使う最も身近なコンピューターは、パソコンでした。そのパソコンに使用されるOSも、当初は今よりももっとたくさんの種類がありました。しかし、それらのほとんどはやがて淘汰されて、今ではWindowsとMac OSが主流となっています。そのパソコンが出現したときと同じことが、今まさに起きています。スマートフォンやタブレット型PCの出現です。それらは、パソコンとは利用目的や機能が異なるコンピューターであるため、OSにはパソコンとは異なる機能や性能が求められます。そこで、様々な企業がそれらのOSを開発し、パソコンにおけるWindowsやMac OSの地位を握ろうとしています。

では、そのシェアはどうやって決まるのでしょうか。いろいろな要因がありますが、最終的にはユーザーである私たち1人1人が、そのOSを良いと思うかどうかで決まります。ぜひ、いろいろなOSを試してみて、使い勝手などを比較してみて下さい。そして、友達と意見を言い合ってみると面白いでしょう。

次回は・・・

今回までで、組込みシステムの基本的な仕組みを一通りご紹介してきました。いかがだったでしょうか。組込みシステムがどのように動いているか、少しでもイメージをつかんで頂ければ幸いです。

次回からは、組込みシステムに関連する旬なトピックを広くご紹介していこうと思います。ロボット(これも組込み機器です!)についても触れていきたいと思いますので、楽しみにしていて下さい。

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