図画工作HACKS!(その2) 『火花で飛ばすラブレター入門』

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20世紀初頭の技術・火花式送信機で送るならば、

「恋文(こいぶみ)」といったほうがしっくりくるかも

 

「トトト・ツーツーツー・トトト」というリズムを覚えておいて損はない。

これは救援を求める際のモールス信号「S・O・S」で、世界的に知られている。

トイレの鍵が壊れ中に閉じ込められたり、無人島にひとり漂着したり、ショッカーの秘密基地に連れ去られた際などは、上記のリズムで身近なカベやパイプを叩くか、手鏡で光を反射すれば救助される可能性が上がるかもしれない。

お互いがモールス信号というルールを理解している必要はあるが、声が届かぬ場所まで自分の意志がはっきりと伝わるというのは、ちょっと不思議な気分。

感情はきちんとパイプの振動や反射光を介し、誰かのもとに届くのだ。

今回は100円ライターを改造し簡単な電波送信機を製作し、それを使ってどのように情報を伝えるかを考えてみる。

「声や無駄なコトバを介さない分、よりピュアに感情を伝えられるのではないか?」というのが裏テーマでもあり、今回のタイトルとなった。

最愛のひとに、火花でラブレターを送ろうじゃないか。


用意するもの

・100円ライター[1個] ライター石を擦るタイプは不可。いわゆる「電子ライター」を使うこと

・コード付きミノムシクリップ[1本]

・前回製作した「電波受信機」もしくは 携帯ラジオ [1個] 前回の記事参照

 

送信機の作り方

今回の工作では、ライターを使用します。子どもは必ず大人と一緒に作業しましょう。火災や火傷に十分注意を!

当記事内で紹介する工作を実施した結果生じた損害に関し、独立行政法人科学技術振興機構、日本科学未来館及び著者は一切の責任を負いかねます。各自の責任と判断のもとに実施してください。

初心者の方は、必ず十分な知識がある方と一緒に作業してください。

(1) ライターからガスを抜く

安全のため風通しの良い屋外で作業すること。

近くに燃えるものが無いことを確認した上で、ライターのボタンを押してから火を吹き消す( ガスが出ている状態 )。

ボタンを押し込んだままテープで固定し1時間程度おき、完全にガスを抜く( ライターに耳を近づけ、ガスの抜ける音がしないことを確認 )。

ビニールテープでボタンを押しっぱなしにする

(ガスは屋外で抜くこと!)

(2) ライターを分解する

マイナスドライバーなどで金属部品を外し、ガス噴出口を露出させる。

金属部品にマイナス・ドライバを差し込み、ゆっくりひねる

 

(3) ミノムシクリップを取り付ける

アンテナとなるコードつきミノムシクリップの一方で、ガス噴出口をつまむ。

このガス噴出口から伸びたコードつきミノムシクリップがアンテナとなる。

ライターのボタンを押すと、火花がミノムシクリップの金属部分に向けて飛ぶことを確認する。

これがアンテナになる

実験方法

受信機にイヤフォンをつなぎ、電源を入れる。

携帯ラジオを使用する場合は、聞き取りやすいようにAMの放送局の無い周波数に合わせておく。

受信機もしくは携帯ラジオのアンテナ近くでライターのボタンを押すと、「バリッ」というノイズが聞こえることを確認する。

携帯ラジオでノイズが聞こえない場合は、音量や周波数を調整する。

受信機と送信機の間を離し、音が聞こえる距離を測定してみよう。

ライターに取り付けたミノムシクリップを外した場合はどうなるだろう。

実験中に火花に指などが触れ、感電することがあるが、人体を傷つけるほどのエネルギーは無い。

ただし、電気ショックに恐怖を感じる人(...実は私もそうだ)の怒りや、電子機器の故障を招く可能性は大いにあるので注意!

仕組み

電子ライターはバネの力を使い、内部にある「圧電素子」という部品を強く叩く構造になっている。

圧電素子を強く叩くと衝撃で高電圧が発生し、大きさや向きが瞬間的に変化する電流が火花として飛ぶ。

このように変化する電流によって、周囲に磁場(磁場)と電場(電界)を交互に生じさせながら広がっていくものを「電波」という。

磁場と電場は鎖のように、互いに90°傾いている

図では一方向の電波のみ描いているが、実際は全ての方向に広がっている。

火花をラブレターに変えるには?

今回製作した装置を使ってラブレターを送るには、どうしたらよいだろうか?

送信側と受信側の両方がルールを知っていることが、あらゆる通信の基本。

一方が受信機を持ち、もう一方が送信側を持ち、ふたりで通信ルールを考えて共有しよう。

 

送信側の意志を正しく伝えるために、どんなルールをつくれば良いのだろうか?

以下に3つの例を示す。

[例1] 単純明快なラブレター

「バリッ」という音がしたら、ハートマークの送信を意味することとする。

何も音がしなければ、何も情報を送っていない状態とする。

あぁ、単純明快! ボタンを押すだけ! ハートマーク1文字だけ!

一応、愛情は伝えられそうだ。

たまにはこんな単純明快なラブレターもアリ(?)だと思うが、これだけでは常に直球勝負。

もうちょっとだけ複雑なキモチも送りたい。

[例2] タップ・コードでラブレター

タップ・コードという、壁を叩いて文字を伝える方法がある。

wikipediaによると、ベトナム戦争当時に捕虜同士が連絡を取り合うため壁を叩く( タップ )などし密かに通信したそうだ。

使用された背景から言うと縁起が良いものではないが、冒頭のモールス信号より覚えやすいので紹介しておく。

信号の作り方は簡単。

まず送信する文字がある横の列(グレー)の数だけ信号を送り、次に間を開けて縦の列(白)の数だけ送信機から信号を送る。

例えば「M」を送るならば、まず3回信号を送信して間をおき、2回信号を送信する。

表中に「K」が無いが、代わりに「C」を使うこと。

これで例1よりは、感情の機微を伝えられるのではないだろうか。

しかし、何度か繰り返すうちにある問題に気がついた。

受信側の近くで蛍光灯をつけたり、トラックが通ったりすると、ボタンを押していないのに受信側では「バリッ」という音がきこえてしまうのだ( 前回の記事で実験した漏れ電波 )。

運悪くノイズと信号送信のタイミングがあうと、受信側は送信された数よりも多くの信号を受けとることとなる。

また受信側がうっかりと音を聴き逃せば、届く信号が実際よりも少ない数になってしまう恐れもある。

具体的には、「BAR」と送ったつもりが蛍光灯のノイズで「CAR」になったり、「HOP」もうっかり聴き逃せば「HIP」になったりする。

文字を正しく受け取れたかを確認する術がないため、このようなことが起きるのだ。

...どうにか解決できないだろうか?

[例3] 調歩同期式ラブレター

タップ・コードで起きた問題を解決するため、コンピュータで使われる「調歩同期式通信」と同じルールを試してみよう。

ただし、手間を省くため信号の長さは実際よりも短い5ビットにし、見やすいようにデータの送信順序は高位ビットから低位ビットにした。

この方法には受信側、送信側ともに秒まで表示できる時計、受信側で筆記用具を用意する必要がある。

[1] 送信側は下記の表を参照し、時計を見ながら1秒に1回ずつ、左から順番に信号を送信する

表のS→0→1→2→...→P→STOPの順に、送信側はのある部分でライターのボタンを押し、空白部分では押さない。

S:スタートビット、0-4:データビット、P:パリティビット、STOP:ストップビット

データビット0-4の★の数が奇数個の時、パリティビットは★になる

 

[2] 受信側は最初の音が聞こえたらノートに○を描き、以後時計を見ながら1秒ごとに音が"聞こえたら○"、"聞こえなければ×"を描く ( 8つの○×が並んだら改行する )

例) 音が1秒ごとに「 バリ・バリ・バリ・(無音)・(無音)・バリ・バリ・(無音) 」と聞こえたら、ノートには「○○○××○○×」が描かれる。

[3] 受信側はノートの○を、×を空白と読み替え、上の表から文字を探し出す

例) 「○○○××○○×」→「Y」。 「○○×○×○××」→該当する文字なし。

表中に該当する文字が見つからない場合、何らかの誤りが含まれているということ。

実際やってみた動画が以下。


今回の例では、よほどのことが無い限り正しく文字が受け取れ、誤り検出ができる。

「よほどのこと」とは、1文字中に2箇所以上の受信ミスをする場合。このとき誤り検出ができない場合がある。

また、この方式では誤りの存在はわかっても訂正まではできない。

より完璧なラブレターを極めたい方は、誤りの訂正をどうすれば良いか考えてみよう。

最後に

こんなタイトルで記事を書いておきながら、私はラブレターを書いたことがない。

正確には、最後まで書き上げたことがない。

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