いとおか市を256倍楽しむ方法(3)

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展示で紹介されている先端科学トピックスだけが最先端にあらず。

未来館では造作表現からメカトロニクスまで、新しいチャレンジを盛り込みながら最先端の常設展示開発をしています。

展示開発に携わった科学コミュニケーターだけが知る常設展示の舞台裏。そこで目にするのは、日本が世界に誇る巧の技とおもてなしの心。

常設展示を256倍楽しむ方法を、このブログをお読みのみなさまだけに特別にたっぷりじっくりちゃっかりご紹介しちゃいます。

 

今回で最終回。8月21日にオープンの新しい常設展示「2050年くらしのかたち」の楽しみ方を最後までお楽しみください。

心得1つあたり常設展示を2倍(当館比)となっており、8つ全ての心得をそろえていただければ2の8乗で256お楽しみいただけます(注:効果には個人差がございます)。

第1回第2回で合計5つの心得を習得いただき32倍まで達しておりますが、今回で256倍の世界にお連れいたします。見える世界がまったく違ってきますよ!

fig01

 

空想現実が幾重にも折り重なった「2050年くらしのかたち」。今回は、その間をとりもつ「デジタルコンテンツ」の絶妙な世界をご紹介します。

 

心得6 人の手の温もりを感じよ

総勢61名にも登る、たくさんのいとおか市民キャラクター。

展示でみなさまが目にするセリフを書くため、実は61人のキャラクター1人ひとりに詳しい設定が用意されているのです。

例えば、街に住む著名人として「街のあらまし」にも掲載されているモーノ・マワース氏。

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いとおか市に招致された「リサイクル界の貴公子」

 

彼は商品がどれだけ循環に適しているか格付けチェックする循環グレード鑑定士。検査眼は厳しく、彼が最高グレードを付けたことは一度もないとのこと。

キャラクター個人についてだけではなく、相互関係も丹念に設計されています。

例えばこの3人は親子だったりします。

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父・佐井場一彦は今でも息子・佐井場一郎がスーツに長靴姿で畑に入ることを許していない

 

街ではおしどり夫婦と評判の佐井場一家。若い頃、農業エンジニアの息子・一郎は父・一彦とよく喧嘩したそうだが、自然栽培の科学的効果を知った今では、尊敬の眼差しにかわっているとのこと。

物質を回すモーノ・マワース氏に自然栽培の佐井場一家・・・

なるほど!「いとおか市」と同じように、名は体を表す声に出して読むとわかるんですね。

 

文章で書かれた職業や親子関係などのキャラクター設定を、血の通った登場人物の個性として絵に反映させる。これは並大抵の創造力ではありません。

展示で登場する総勢61名の多様なキャラクターを、それぞれが個性的になるように描き分けるという無理難題。科学館展示では類を見ないこの壮大な挑戦を、絵本作家の中河原駿さんにお任せしました。

すべての多様性を受け入れ包み込む中河原さんの包容力を、ぜひ特設サイトのキャラクター一覧予習してから、展示場にお越し頂ければとおもいます。

復習もできますので、お忘れなきよう。

 

展示のデジタルコンテンツは血の通わない、冷たいコンピューター・グラフィックスではありません。

61名の市民キャラクター以外の多くのイラスト・CGもすべて人の手で描かれたものだと思い出しながら展示をご覧頂けると、ひと味もふた味も深く見えてくるのではないかと思います。

ちなみに、35種類の「技カード」に描かれている先端科学キャラも中河原さんの手によるものです(特設サイトの技カード一覧)。

みなさんもお気に入りキャラや技カードを見つけてみてください。

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嶋田のお気に入り。頭部に入れた電子機器からレアメタルを取り出すお化け(?)の「都市鉱山」

 

心得7 オーグメントの響きあり

「Step.1 いとおか市を歩こう」の画面で見た、いとおか市のようす。

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いとおか市中心にある商店街をぶらり街歩き

 

展示の都市模型内に設置されたカメラで撮ったのに、実物の見た目とはどこか違う映像。

そう!

これこそがオーグメンティド・リアリティ(Augmented Reality; AR)の真骨頂!

 

オーグメンティド?何それ? という方も多いかと。

 

【Augment】 増やす、拡大させる、拡張する

 

ギターをかじったことのある方には聞き覚えのある言葉かもしれません。そう、例えば「ド・ミ・ソ」の和音でつくるCコードに対して、「ド・ミ・ソ#」とソが半音上がるのがCオーグメントでしたね!

安定感のあるCコードを、ちょっとオーグメントで工夫をするだけで、なんとも不安定な落ち着かない響きのCオーグメントに早変わり。

今日のギターコードレッスンは、ここまで!

 

ではなくて、今回はオーグメンティド・リアリティ。これは、コードが味付けを変えられるのと同じように、リアル(現実)の世界をバーチャルな情報でちょっと味付けする工夫のことなんです。

展示では、カメラからの映像に重ねて、実際の模型には存在しない建物の表面テクスチャーや街路樹、いとおか市民キャラクターが現れます。

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実際の模型では見られない建物内部もARならこのとおり

 

ただ重ねるだけではありません。端末からの操作で都市模型内のカメラを旋回させても、ARで重ね合わされたデジタル画像は、カメラの動きに追従します。このことにより、仮想空間の情報が、あたかも現実空間のとある場所に存在しているかのように見えるのです。

こればかりは、何度文章を読んでいただいても伝わらないかもしれません。

ぜひ未来館で体験して、最新のAR技術を堪能してください。

 

心得8 未来は手ではさわれない

「2050年くらしのかたち」の展示体験での最大の特徴、ジェスチャー操作。

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画面には一切触れず、手の動きだけで画面上のカーソルを操作する

ジェスチャー、ジェスチャー、ジェスチャー。ちゃんと滑舌よく言えますか?

ゼスチャーじゃないですよ!

ここにも、展示制作に込められた熱い、いや、厚い思いが込められています。

 

物語はこの展示の企画当初まで遡ります。

 

当初は、端末の操作体験はタッチパネルなどの汎用機器で行う予定でした。しかし、それではあまりにもありふれている

未来感で未来を考える展示なのだから、未来感のある操作デバイスはないものか?

駄洒落や親父ギャグではなく、企画スタッフはいたってマジメに、そう考えていました。

 

そこで今回展示の制作・施工を担当して頂いた株式会社丹青社さんと株式会社GKテックさんのチームから「ジェスチャー入力」はどうかとの声。

これだ!

家庭用ゲーム機でも最近になって取り入れられた技術。まだ、科学館の展示手法としては海の物とも山の物ともつかない段階でしたが、潮流を作ることを視野にいち早く展示に取り入れるのが未来館流

「未来は手では触れられない。もっとあやふやなもの」という想いも後押しして、身振り手振りによるジェスチャー入力方式が、正式採用される運びとなりました。

たしかに、2050年の未来にタッチパネルでさわれてしまうのは、どこかナンセンスな感じがします。画面から少し距離をとって、都市模型を眺めながら体験できるところもポイントですね。

 

しかし、これまた言うは易く、行うは難し

 

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常設展示場にモックアップを用意し、実際の環境で操作感をチェック

 

どこにセンサーを置けばいいのか、どのくらいの距離ならセンサーが感知できるのか、どんなジェスチャーならすべてのお客さんが操作しやすいか、展示の体験時間が長くなりすぎはしないか、隣の人が割り込んできたらどうするのか、などなど問題は山積み

問題点をひとつひとつ丁寧につぶしていくことで、ようやく展示の形としてお目見えすることができました。8月初旬に行った友の会のモニターテストで、事前に操作感をチェックできたことも功を奏しました。

参加頂いたモニターの方に、この場を借りて御礼申し上げます。

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友の会テストでは未来館スタッフとともに制作会社の方々も真剣な眼差しで観察(株式会社丹青社・株式会社GKテック)

 

ジェスチャー操作の裏にある、熱い想いと、それを実現するための幾重にも及ぶ試行錯誤を、感じ取って頂ければと思います。

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目立たないところにこそ、試行錯誤の賜物が潜む

 

ちなみに、センサーは赤外線で手の動きを測定しています。その方式もいろいろと試行錯誤で決めた部分が多いのですが、詳しくはまた、展示フロアででもお会いしたときに、じっくりお話ししましょう。

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バイバイ~ またどこかでお会いしましょう!

 

さぁ、今日はここまで!

 

これまでのおさらいをしておきましょう。

 

心得1 細かいことを気にせよ

心得2 大きいことはいいことだ

心得3 体感より心感

心得4 目で見てはいけない

心得5 バック・ヤード・フューチャー

心得6 人の手の温もりを感じよ

心得7 オーグメントの響きあり

心得8 未来は手ではさわれない

 

どれも「2050年くらしのかたち」だけでなく、他の常設展示を体験する際にも(きっと、おそらく、たぶん・・・)使える心得です。

 

いろいろと御託を並べてきましたが、言いたいことはつまりこういうこと。

 

百聞は一見に如かず

大事なことなのでもう一度言います。

 

百聞は一見に如かず

 

このブログの記事をくまなく読んだだけではまだ「百聞」。

ぜひともご来館いただき、ご自身の眼で「一見」ください。

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