トイレットペーパーを前に愕然とする

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皆さん、こんにちは科学コミュニケーター天野です。

タイトルを見て、さては"入ったらなかった"系の話だなと思ったあなた!

違います!タイトルを見て、コイツも坂巻と同じ方向に走ったかと思ったあなた!

それも違います!

(このやりとり、なんか前みたことあるなぁと思ったあなた!

そうです、同期に影響されています!)

前回「買い物に行く前に」というタイトルでお話しましたが、

今回は買い物に行って商品を前にして思うことです。

量販店のトイレットペーパーの山を前に、私に何があったのか?

いつものように買い物に出かけ、いつもどおり特売品のトイレットペーパーを見つけ、迷わずそれを買おうとした私に、「なんてことだ」と思わせたのは地元での友人との会話でした。

私の地元は製紙業が盛んで、友人も製紙会社に勤めています。そこの主力商品は再生紙を利用したトイレットペーパーなのですが、このトイレットペーパーを巡って製紙業界は揺れているというのです。

背景には安価な紙の輸入があります。紙は単価が安いわりに輸送コストがかかるので、これまで外国製品と競争になることはあまりなかったようです。しかし、中国をはじめ海外で輸送コストを含めても安い紙が作られるようになり、紙業界も海外との価格競争がはじまったのです。

こうなると、再生紙の製造・販売は非常に厳しい状況になると友人は言います。再生紙は非再生紙に比べ、色や肌ざわりの良さを出すのが難しく、同じクオリティの商品をつくろうとすれば価格が上がってしまう。価格と質を絶妙に調節して、非再生紙と並んでも買ってもらえる商品をつくっている──これが現状なのだそうです。そこに、さらに価格競争が加わると、もうやっていけない、ということです。

業界としては、環境への配慮を付加価値として認めてもらえないか、つまり、値段で対抗することを止め、環境配慮を前面に出して勝負できないかと検討しているとか。しかし、その勝算がわからず、業界として足並みが揃わないというのが実情のようです。

再生紙に限らず、環境に配慮した商品を"つくり"、それが"売れる"ようにすることは環境を考える上で大きな課題です。環境によくても、価格が高ければ消費者は買わないし、売れないのであれば企業はつくらない。消費者と企業、ともに環境のことは考えているものの、同時に消費者は安さを、企業は利益を求めます。これが、解決を難しくしている理由でしょう。

未来館でも5Fの「地球環境とわたし」というゾーンで、この話題が取り上げられています。展示では、

「環境対策や環境情報の表示を義務づけたり、税金を使って環境技術や商品を補助するといった社会全体を方向付ける仕組みを、消費者と企業、そして国が一緒になって考えていくことが求められるでしょう」と締めくくっています。

一個人、一企業では解決が困難。だから、もっと大きな枠組みで考え、仕組みをつくることが必要ということです。日本でもそうした仕組みのひとつとしてグリーン購入法が制定されました。未来館でも

「国及び独立行政法人等は、物品及び役務の調達に当たっては、環境物品等への需要の転換を促進するため、予算の適正な使用に留意しつつ、環境物品等を選択するよう努めなければならない。」(ざっくり言うとと、国の予算で何かを買ったり、仕事を発注したりするときには、できるだけ環境に配慮したものを選びなさいという意味)

という"おふれ"に従って物品を買っています。

ちなみに、ドイツに住んでいた同僚によると、環境先進国・ドイツでは非再生紙が使われないように制度がつくられているのだとか。例えば、学生が使用するノートは真っ白で上質な紙ではなく、皆灰色がかった再生紙なのだそうです。

そうやって社会としてルールを決めないと現実的に成り立たないよなぁと、友人の話をもやもやと考えていました。そんなとき、ある会社の紙袋に次のような表記を見つけました。

紙袋にはものづくりに対するその会社の考え方が示され、最後に「お客様の価値観を信頼すること」という言葉がありました。

みなさんはこの言葉に何を感じるでしょうか?

私には「私達はこのような価値観で商品をつくっています。あなたは何に価値を見出していますか?」と問われているように感じられました。

改めて友人の話を振り返り、トイレットペーパーを前に...「なぜそれを選ぶの?何を見て判断するの?」と自分に問うたときに、「値段」という答えしかなかったことに愕然としたのです。

そうは言っても、日々の生活の中でふとした瞬間に、値段以外の価値に目を向けられるか?「無理だよね」となりがちだから、仕組みの話になっているのですが...

それでも私は「目を向けられるように頑張りたい」と、まるで小学生のような決意をしたのでした。

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この記事への4件のフィードバック

消費生活と環境問題は課題に共通点が多いですね。経済状況が悪くなると、消費者が環境を優先するのが難しくなるのは事実。やはり社会全体で問題解決する必要があると思います。

ちょうど今、消費税の引き上げが議論されています。もし税率が引き上げられるなら、再生紙など環境に配慮した商品は非課税という制度を設けるという方法も考えられます。これなら、関税とは違うので貿易協定も守りながら、安い輸入品と価格競争できるかも。

高い製品を

かつぬまなおみ様

コメントありがとうございます。

>経済状況が悪くなると、消費者が環境を優先するのが難しくなるのは事実。

私に関して言うと、経済状況が価値観に影響していたというレベルではなかったんです。

ものを買う際には価格以外にも機能やデザイン、ブランドなど様々な要素があると思います。高額な買い物であれば、私もそれなりに考えて購入します。

ただ、トイレットペーパーのような消耗品の購入の際には、使えればどれでもいいと思ってしまうためか、反射的に"価格"で判断してしまうんです。経済状況、環境といったことを考えずに、思考停止して機械的に"安い"を探す。そうしてしまっていることに驚きました。

社会システムの整備によって迷わずとも環境によい商品が(安く)買われていく。これは必要なことだと思うのですが、"迷わず"というのが少しこわいなぁと。

それって結局、"値段"で価値を判断すると変わらないんじゃないかな?と思ってしまいます。

環境によい商品が広がるということを目標にするのであれば、考えたらとるに足らないのかもしれませんが、どう思いますでしょうか?

昨日(4/30)の14時ごろのディスカッション(?)に参加させていただき、その後、夫婦でお話を聞かせていただいた茨城の者です。ありがとうございました。今まであまり、議論のようなものをしたことがなかったので、天野さんとのお話はとても面白かったので、書き込ませてもらいました。

お話の中で自分の気付きもありました。温暖化の問題です。自分の意見は、今のところ二酸化炭素の排出と温暖化には、明確な関係はない、と主張しているひともいるので、それを信じる、というものでした。しかし、自分でこの意見を言い、お話を聞く中で、自分の意見は矛盾があることに気付きました。天野さんのお話には、なぜ二酸化炭素により温暖化となるかの理由を明確に聞かされたからです。なぜ二酸化炭素により温暖化となるかまで考えておりませんでした。

ただこの日、茨城への帰りの高速バスの中で、眠ろうとした時、ひとつ疑問が浮かびました。

それは、

・太陽の熱が地球に入る→地表が熱を反射→二酸化炭素の層が熱を反射

これによって、二酸化炭素の層が厚くなれば温暖化が進むと理解したのですが、二酸化炭素の層が厚くなれば、

・太陽の熱が地球にくる→二酸化炭素の層が地球に入る熱を遮断する

よって、二酸化炭素の層が厚くなれば遮断される熱も多くなるのでは、と考えました。この考え方はどうなのしでしょうか?取り留めのない文章ですいません。

コメントありがとうございます。私もこまつざきさんと奥さんとのお話印象に残っています。また、私の話を受けて話題について再考していただいたこと本当に嬉しく思います。

さきに、ご存知かと思いますが、地球温暖化と二酸化炭素の因果については真っ向から否定する説も、否定はしないものの、その程度は今議論されているほど深刻ではないという説もあります。私自身は地球温暖化は社会として向き合うべき問題だと考えていますが、一つの判断材料として活用いただければ幸いです。

さて、ご質問の件ですが、私の説明が雑だったために生じた疑問かと思います。地球の熱のやりとりについてもう少し詳しく説明いたします。

まず質問です。太陽はどうやって地球に熱を伝えていると思いますか?

答えは“放射”(私の年代は輻射と習いました)。

電磁波として熱を地球へ伝えます。

しかし、この放射をするのは太陽だけではありません。地球も同様に電磁波として熱を宇宙空間へ放出しています。

地球は太陽からの電磁波(太陽放射)を吸収し“温められる”と同時に、電磁波を放射する(地球放射)ことで“冷め”、このバランスで地球の気温は決まります(ほぼ)。

ここでポイントは太陽放射と地球放射では電磁波の波長が違うということです(太陽放射は波長が短く、地球放射は波長が長い)。

さて、この熱のやりとりに温室効果ガスはどのような影響を果たすのでしょうか?

2つ目のポイントは温室効果ガスは波長の比較的長い(二酸化炭素であれば15μmなど)電磁波をよく吸収するということです。

順を追って考えます、

まずは地球に入る熱、太陽放射に対する影響。

温室効果ガスは波長の短い太陽放射はほとんど吸収しません。そのため、地球にやってきた太陽放射は大気中の温室効果ガス素通りし、地表に到達、地表に吸収されて地表を温めます。

次に、地球から出ていく熱、地球放射に対する影響です。

温室効果ガスは波長の短い地球放射をよく吸収します。

結果熱は宇宙空間へと放出されず地球内に留まるのです。地球の熱が外に逃げるのを防ぐそれが“温室効果”と呼ばれるゆえんです。

では温室効果ガスの濃度が上がるとどうなるか?

太陽放射には影響がないのに対し、地球放射はより宇宙空間へ逃げにくくなるのです。

結果、地球に入る熱に対し出て行く熱がへり、地球が温まるということになります。

今回の説明では、簡単にするため太陽放射と地球放射、温室効果ガスだけしか登場しませんでしたが、実際には、大気による熱の吸収、大気、地表による熱の反射もあり熱のやりとりは複雑です。

http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/honbun.php3?kid=209&bflg=1&serial=10291

お会いしたときには輻射と温室効果ガスの吸収波長の説明を省いたために疑問に思われたかと思います。

“科学的な正しさ”とどう向き合うかがこの問題の一番のポイントだと思っています。

今の科学では「この現象は地球温暖化のせいだ」と言うことは難しいの現状です。因果が明確でないために責任を果たすべき立場の人間が責任を問われることはありません。

行為の代償が全て行為をなした人間に返るのであれば問題ないのですが、二酸化炭素は国境を越え全く無関係な人にも、また無関係な世代にも影響をおよぼし得るのです。

“得るのです”という話にどう向き合えばいいのでしょうか?

エネルギーの選択でもどのような選択にせよ不確実さは伴います。今回のエネルギーミニトークではこの点をメインには扱いませんでしたが、どんな点にどれだけの不確実さがあるのか情報提供していきたいと考えています。

ぜひまたお話しさせて下さい。

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