セラピー用ロボット「パロ」のモデル ~大自然で生きるタテゴトアザラシの赤ちゃん

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科学コミュニケーターの山崎です。

今回はひときわ来館者に愛され、なでられている展示「パロ」を紹介します。パロはタテゴトアザラシの赤ちゃんを模した型セラピー用ロボット。パロを通して日本のロボット技術の魅力と大自然で生きるタテゴトアザラシの赤ちゃんの強さ、健気さをお伝えします。

パロは「世界一のいやし効果」があるとして2002年、ギネス世界記録に認定されました。開発したのは産業技術総合研究所。本物のペットのように、人を楽しませ、リラックスさせ、元気づけられるようにと作られました。パロの体内には、触覚、光、温度、音などに反応するセンサーが組み込まれています。センサーの1つである、面触覚センサーはスポンジ状のもので、体中に敷き詰められています。触った時の力加減でパロが嬉しく鳴いたり動いたりし、まばたきをするなどの表情を示します。なでられたり、抱っこされたりすると、ちゃんとそれに反応したしぐさを示します。精密な機能が組み込まれており、あたかも本物の動物に接しているかのような体験ができます。

人は動物と触れあうことで、楽しみや安らぎを感じます。 これを医療に積極的に組み入れたのが「アニマルセラピー」で、イヌやネコなどに接することで、心の病気の治療や予防、身体のリハビリに前向きになる効果を狙っています。パロは本物の動物を飼うことが難しい場所や病院や福祉施設などで、アニマルセラピーならぬロボットセラピーを行なうために開発されました。パロの評判はそれぞれのニーズによってまちまちですが、今後の活躍に注目していきたいですね。

パロのモデルになったタテゴトアザラシの赤ちゃんは自然界ではどのように生きているのでしょうか?カナダのセント・ローレンス湾でタテゴトアザラシを撮っている動物写真家・小原玲氏の観察によると、赤ちゃんは2月末から3月初めにかけて流氷の上で生まれ育ちます。生まれたときは保護色である白い産毛をまとっています。誕生時に10キロだった体重は脂肪分がたっぷりのお乳を飲みながら、1日2キロずつ増えて大きくなっていきます。母親は赤ちゃんアザラシを2週間大事に育てます。たった2週間と言うなかれ。この間、お母さんは餌を獲りに行くこともなく、絶食しているのです。お母さんが去った後、赤ちゃんは流氷を拠点に自ら泳ぎを練習し、魚の獲り方を覚えていきます。4週間で泳ぎが上達し、白い産毛も短い黒い毛に換わります。4週間で独り立ち。すごいと思いませんか?

Wikimedia commonsより

近年地球温暖化の影響で流氷が減少し、赤ちゃんがきちんと泳げる前に流氷が解けてなくなっているそうです。うまく泳げない赤ちゃんはおぼれ死んでいる可能性があります。これが、私たち人間が知らない大自然のなかで起こっている現実なのです。パロをさわっている来館者に出来るだけタテゴトアザラシの赤ちゃんの紹介もしようと心がけています。今後「パロ」をどこかで見かけたら、北の海で賢明に生きているタテゴトアザラシの赤ちゃんの事も考えてみて下さい。

余談ですが、私が飼っている犬は柴犬とエスキモー犬のミックスです。名前は「ほたる」。子ども達の命名です。体毛がクリーム色で暗いところでも見えるので、「蛍みたい」という単純な理由からこの名がつきました。ほたるの顔はタテゴトアザラシの赤ちゃんになんとよ~く似ているのです。「ほたる」は我が家のセラピーアニマルです。

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