イナゴのセシウム濃度

このエントリーをはてなブックマークに追加

少し前ですが、

「コオロギ500匹からセシウム4000ベクレル検出」というニュースがありましたので、これを紹介します。

読売新聞の記事によると、福島第一原発から40キロ離れた地点のコオロギ、60~80キロ離れた地点のイナゴを捕まえて調べたところ、コオロギは上記のような結果が、イナゴは最大で200ベクレルだったとのこと。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120112-OYT1T00052.htm

ウォールストリートジャーナルはもう少し詳しく載せています。海外からの視点で紹介しているところが興味深いです。

http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2012/01/13/for-japan-locust-eaters-a-plague-of-cesium/#

コオロギ4000ベクレル(Bq)という数字だけが一人歩きしてしまうことが懸念されますが、この研究で忘れてはいけないのは、飯舘村だけでなく、福島県の数カ所でイナゴの放射性物質の濃度を計測したことです。

「福島県の各地域では、イナゴを食べる文化が残っています。イナゴの汚染の度合いを調べることは、今後イナゴ食の文化が存続できるか考える指標として、重要だと思います」と、調査を担当した東京農工大の大学院生三橋亮太さんは語ります。

[caption id="attachment_14507" align="alignnone" width="300" caption="イナゴの佃煮"][/caption]

本宮市、伊達市、猪苗代の各地域において、従来の厚生労働省の定めた放射性セシウム暫定基準値100Bq/kg(イナゴを一般食品と同じ基準値と考えた時の値。2012年4月新基準に準ずる)を下回る結果がでました。(※文末参照)

一方で、須賀川市からは196Bq/kgという基準値を超える結果が出ました。4月以前に厚生労働省が定めていた肉や穀類という枠での旧基準は500bq/kgなので、これと比較すると基準値を下回っていたのですが、新基準の一般食品という枠で見ると基準値超えとなりました。(※文末参照)

調査対象の一部地域では、小学生がイナゴ捕りをする行事が長年、行われています。今回の研究統括者である東京農工大学教授の普後一(ふご・はじめ)先生は「空間放射線量が高い地域では、児童においては外部被爆の影響を成人よりも注意する必要がありますので、採集を控えた方が良いでしょう」としながらも、食材としてのイナゴそのものに対しては「結果を見る限りにおいて、調査した稲作地帯に甚大な汚染はみられず、イナゴ体内でのセシウム濃度(ベクレル値)は低いといえます」とコメントしています。

[caption id="attachment_14511" align="alignnone" width="300" caption="イナゴを捕る小学生(いわき市立夏井小学校)。震災前は、授業の一環としてイナゴ捕りを行われていました。"][/caption]

一方、イナゴが捕れなかった飯館村では、代わりにコオロギ40匹で調べました。飯舘村のコオロギの放射性セシウム濃度は、ニュースで伝えられているように大変高い値ですが、単純にコオロギで得られた数値を他の地域のイナゴの数値と比べるのは注意が必要です。イナゴは稲や草の上に生息する一方、コオロギは土の中に生息します。この生息場所の違いはセシウム濃度に大きく影響することが予想されるからです。

ほかにも、普段の調理法で実際にイナゴを食べる時の参考となる実験も試みています。日本の多くの地域では、イナゴを調理する前に、「イナゴの洗浄」や「イナゴの糞抜き」の処理をするそうです。「洗浄」「糞抜き」をしたイナゴと、していないイナゴを比較すると、処理をしたイナゴは放射性セシウム濃度が約半分にまで低下(75 Bq / Kgから35 Bq / Kgへ変化)することが分かりました。

調査に協力した立教大学の大学院生末永雅洋さんは、震災が起きるまで、福島県の人々のイナゴとの関わり合いを調査していました。

「福島県内の放射線量が高くなったために、イナゴの食慣行はこれで終わったと思いました。しかし、2011年の秋にもイナゴを捕り続けているお年寄りを見ると、自分には何ができるのかを考えざるを得ませんでした」と末永さん。

99ベクレルの食品はよいのか、100ベクレルの食品はだめなのか。

もはや誰もが、放射性セシウム濃度がゼロの食品を食べ続けることができなくなっています。食品の放射能汚染の問題は、私たちの「リスク管理」に対する姿勢を、いやがおうにも突きつけてきます。

研究者も悩む難しい問題ですが、私は今後も科学を「よりよく生きるためのツール」として、使い続けていきたいと思います。

昨年より、昆虫食を科学する研究会「食用昆虫科学研究会(e-ism)」を立ち上げました。

http://e-ism.jimdo.com/

文化人類学、社会学、昆虫生理学などを専攻する文系理系を織り交ぜた大学生、大学院生がメインとなる集団です。

昆虫食に関する勉強会を都内で月1回のペースで開催しています。

研究会公式twitterもあります。

https://twitter.com/#!/e_ism2011

よかったらフォローお願いします!

 

※管理人より

この2つの段落の記載には公開当時、誤りと誤解を生じさせる表現がありました。コメント欄にある吉田和人様のご指摘を受け、5月14日に訂正をいたしました。

ご指摘を下さった吉田様にお礼を申し上げるとともに、読者の皆さまにお詫び申し上げます。

※コメントをする際は「ブログへのコメント投稿について」をご覧ください

※「名前」は、ハンドルネームでも構いません

この記事への11件のフィードバック

こんにちは!

食品の放射能についていろいろと調べていたところ、この記事を見つけました。

記事の中で4月以前の暫定規制値においてイナゴを水と一緒の100にして考えているのはなぜなのですか?毎日何リッターも飲む水と一緒なのはおかしいと思うのですが。新規制値では10Bq/kgですよ!

一方で、「須賀川市からは196Bq/kgという基準値を超える結果が出ました。4月以前に厚生労働省が定めていた旧基準で同じように考えると基準値を下回っていたのですが、新基準では基準値超えとなりました。」と述べていますが、196だったら暫定規制値のときから基準値を上回る値なのではないですか?

数値がとても混乱してしまいます。。。。

私は群馬県の出身ですが、子供の頃はイナゴの佃煮をよく食べていました。成人して東京に済むようになってからも、町中でイナゴの佃煮を見かけると買って帰り、酒の肴にしていました。栄養価もバランスがとれている良い食べ物と思います。ですが、東京では入手が難しい。何故か、ほとんど売られていません。

動物タンパク源の少ない日本。放射線量が少ないと聞いて喜んでいます。今後も、稲と共存するイナゴを肴に、稲の発酵ジュースである酒を飲みたい。これらの食のハーモニーが健康の秘訣であることをPRして下さい。佃煮などのイナゴ加工食品が、都会でも容易に入手できることを願っています。

半田様

半田様のようなイナゴを親しんでいる方もまだまだたくさんいらっしゃるようですね。

たしかに都内だと入手は困難ですよね。

イナゴは田んぼや河原など、自然に普通にいる生き物なので、自分で捕まえて料理するのはいかがでしょう。

吉田様

こんにちは。

おっしゃるとおり、水と比較することはおかしいので削除し、一般食品としました。

また、須賀川市の放射性セシウム濃度の表記もわかりやすい表現に訂正しました。

私のミスで、数値を混乱させてしまったことを心からお詫び申し上げます。

このテーマは、私たちの生活にかかわる重要な問題なので、気をつけないといけませんね。

御指摘大変助かりました。どうもありがとうございました。

こんばんは

わざわざ書き直していただき恐縮です。

それであらためてじっくり読ませていただいたのですが、やっぱり東農大の先生の「結果を見る限りにおいて、調査した稲作地帯に甚大な汚染はみられず、イナゴ体内でのセシウム濃度(ベクレル値)は低いといえます」という発言の引用が気になるのです。須賀川市のイナゴからは、196Bq/kgという基準値を超えるセシウムが検出されているのでそんな楽観視してよいもんでしょうか?

吉田様

こちらこそ記事に興味をもって頂きありがとうございます。

御指摘の点、非常に議論の余地のあるところだと思います。

イナゴは洗浄して糞抜きしてから調理するのが一般的でこの場合はセシウム濃度はほぼ半減します。先生の発言はこれを踏まえていらっしゃいます。

ただ、半分だとしても100ベクレル近くになります。

普後先生はデータから低いと考えていますが、これに対して高いと考える人も吉田さんのようにもちろんいらっしゃいますし、正直個人個人で解釈が異なってくる問題だと思います。どちらが正しいということは言えないところです。

データは科学的に出せますが、その数値の解釈は主観的な判断が入ってしまいます。

答えを科学で出せるケースは意外と希です。

難しいけれど、どういった科学データをどのようにまとめて解釈していくか、自分なりの判断力が今の時代に求められているのではないでしょうか。

わたしは100ベクレルが絶対的な意味で高いと考えているわけではありません。一つの数値データから言えるのは、その値が基準値より低いか高いかというだけで個人の解釈が入ってくる余地はないはずです。何らかの科学的な考えに基づいて基準値はつくられていると思うので、測定によって基準値を超える値が出たのなら、警戒しましょうという意味なのではないでしょうか? 普後先生はその地域一帯をしらみつぶしに測定調査したのでしょうか? ごく一部の測定で基準値を超える値がでたという事実は、もっと放射能の値が高いところが近くにある可能性を強く示唆するのではないでしょうか?

吉田様

コメントありがとうございます。

ニュアンスが伝わっていなかったようで申し訳ありません。

私も基準値超えをした事に対して、決して楽観視して良いわけではないと思います。

普後先生も記事のコメントを読むと同じ考えと思います。児童の採集は控えた方が良いと警笛を鳴らしているようです。

もちろん基準値が設定されていて、それより高い、低いということ自体には個人の解釈は入りません。しかし、その高い、低いをもって安心と考えるのか、そうでないかは人それぞれだと思うのです。

吉田様のおっしゃるように、今回得られたデータは一部の地域に限られていますし、放射性セシウム濃度がもっと高い場所が近くにある可能性は否定できないと私も思います。あくまでも今回得られたデータのみから予想されることを述べている程度に留まると思います。

ロイター記事を読むと、普後先生は、イナゴを食べるとしても①習慣ではおつまみ程度で非常にわずかな量である、②データから、調理ステップを通してイナゴの放射性セシウム濃度は減る、と述べています。そこから普後先生の解釈として掲載記事のようなコメントをしているのではないかと思います。

しかし、記事を読むと、普後先生がイナゴを食べても全く問題ないとはおっしゃっていないことは分かります。

申し訳ありません、少し伝えきれてなかったように思います。

コメントを頂いて、いろいろ足りない部分に気づかされます。

今後ともよろしくお願い致します。

こんにちわ。

6月4日にお邪魔させていただき、ゴキブリを触ったりさせていただいた中学生のメガネをかけていたものです。

覚えていらっしゃいますでしょうか。

その節はありがとうございました。とても楽しかったです。

イナゴは岐阜の食卓にもたまに顔を出すのですが、見た目から食べたいと思った事はないです。まだ先日のゴキブリのほうが食べたいです。

イナゴから4000ベクレルが検出されたということなのですが、

イナゴは体に多い放射線量を持っていても死なないのでしょうか? 人間だったら髪の毛が抜けるとか白血病になったりすると思うのですがバッタはならないのですか?

教えてください

星屋様

こんにちは、よく覚えていますよ~

虫を触れるだけでなく、食べる事にもとても関心を持たれていましたよね。

残念ながら、日本であのゴキブリを食べる所はありません。独自で養殖して、自己責任で食べる、というのが現状です。

しかし、西日本で去年、ムシフェスティバルというイベントを私の知り合いらが開催しました。おそらくあのゴキブリも、少なくともお披露目はされていたのではないかと思います。

http://musikui.exblog.jp/14993221/

今年も開催できればよいのですが。

さて、イナゴの話ですが、イナゴからは4000ベクレルという数値は出ておらず、正しくはコオロギから出た数値です。コオロギはイナゴとは異なり、地中に生活している昆虫です。

これは不思議なことですが、一般に昆虫はヒトと比較して、放射線量に対する耐性が非常に強いことが研究者の中でも言われてきました。

バッタもおそらくヒトほど放射線に対する感受性は低いのではないでしょうか。

良かったら応用動物昆虫学会の「むしコラ」も参考にして下さい。

http://column.odokon.org/2011/0803_084512.php

学会に所属している研究者達が書いている興味深い昆虫コラムです。

ご回答ありがとうございます。

殺虫剤でけろっと死んでしまうので放射線なんてとんでもないと思っていたら、昆虫って意外と強い生き物だったとは驚きです。

バッタも工夫して生きてるんですね。

わざわざ興味深いサイトのURLまで親切に載せてくださり

ありがとうございました。勉強させていただきます。

コメントを残す