図画工作HACKS!(その4) 『オタマトーンをハックする(1)』

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今回ハックするブルーのオタマトーン

アートユニット"明和電機"の開発した電子楽器、オタマトーンは、とぼけた表情と演奏の楽しさで未来館のお客さまにも大人気。

チューニングが安定せず、調子っ外れの演奏になりがちというユルさもまた魅力のひとつだ。

私も仕事に疲れた夜などは遠い昔のアニメソングや、バブル期のラブソングなどを奏でては、ひとり笑みを浮かべたりしている

今回から数回、オタマトーンのハックを記事にしてみる。 自らの手で、既製品の楽しみ方を拡げる体験をすることが目的だ。

オタマトーンは玩具販売店で購入できる現行商品で、分解もしやすい。 電子玩具をハックする第一歩としても最適だろう。

( ちなみに改造するのは、外口の私物 )

オタマトーンを ハックし、"ちょっとヒネくれた楽器"にしてみよう!

※まずは動画をご覧ください


ハックしたらこうなった

以下の動画を参照。


大きな音が出ます。 音量注意!

分解すること

玩具を分解したことはあるだろうか?

私は小学校に入る前、分解にハマった時期がある。 手元にある玩具を、片っ端から分解した。 ドライバーで一本一本のネジを外し、蓋を開けて中をのぞく。 ただそれだけのことに深い感動と快感を覚えたものだ。 ブザーが鳴る、ランプが点滅する、モーター音を鳴らし前進する---- 幼少の私の心をガッチリつかんだ現象の数々。 その秘密を自身の目と手で観察できるなんて...! しかも必要なものはドライバー1本だけだなんて...! 新しい遊びを覚えた私は玩具箱をひっくり返しては、目にしたねじ穴にドライバーをつっこんでいた。

分解はとにかくドキドキする体験で、そこで見たもの、感じた想い、さらには理解できないモヤモヤが電子工学を学ぶモチベーションになったのは確かだ。

図書館で電子工学の本を読み、玩具に内蔵されていた無骨な基板と無機質な電子部品群の「秘密」の解読に成功したのは中学生の頃。

それはまるで「死海文書」を解読するがごとく、壮大なロマンを感じるものだった。

分解のリスク

今回の記事では、オタマトーンを分解する。 その前に、あらゆるものの分解にはリスクがあることを知っていなければいけない。

蓋を開ければメーカーによる製品保証はなくなるし、故障や怪我の危険性もある。 分解するものによっては、感電や火災、死亡の恐れすらある。 例えば使い捨てカメラのフラッシュを光らせる電解コンデンサは、300ボルト以上で充電されている。 指で触れれば激しい音と火花を伴う放電で、火傷や怪我をするだろう。

分解や工作の前には、何が危険かを十分確認すること。 電子工作に関して言えば、簡単な知識で危険は回避できることを覚えておこう。

初心者の方は、必ず十分な知識がある方と一緒に作業してください。子どもは必ず大人と一緒に作業しましょう。火災や火傷に十分注意を!

当記事内で紹介する工作を実施した結果生じた損害に関し、独立行政法人科学技術振興機構、日本科学未来館及び著者は一切の責任を負いかねます。各自の責任と判断のもとに実施してください。

用意するもの

■ オタマトーン

■ ミノムシクリップ 2本

■ ドライバ・セット

■ ハンダごて

■ ヤニ入りハンダ

■ 1mm程の穴を開ける工具(ドリル、ピンバイス、キリなど)

■ スズメッキ線 10cm程

■ 1kΩの抵抗器(茶黒赤金・1/4W) ※以下の写真参照

1kΩの抵抗器は、表面に茶黒赤金の線がある

 

やってみよう!

(1) オタマトーンの顔を外す

ゴム製の顔は簡単に外せる

(2) ネジを外す

外すべきネジは4箇所。 ネジを無くさないように注意!

横の2箇所。

背面の2箇所。

(3) しっぽを外す

中に入っている線が細いので、ゆっくり、ゆっくり引っぱる。 リングの部分も外す。

しっぽを矢印方向に少しずつ引く。

 

(4) 基板を取り出す

本体を半分に割り、基板だけにする。電池ボックスを固定していたナットが落ちるかもしれない。 無くさないよう注意すること。

 

(5) 配線

基板上の[J1]と印刷されたところを、以下のように加工する。

※製品ロットによっては導線がボンドで覆われているため、カッターなどで削りハンダ面を露出させる。

しっぽからの線が繋がる[ J1 ]。

ここを加工する。

まずハンダごてで導線を加熱し、2本とも取り外す。

 

外した一方の導線を10cmのスズメッキ線にハンダ付けする。

もう一方の導線を抵抗器の足にハンダ付けする。

上図のように配線する。

 

(6) ケース加工

(4)で取り外したケース左右に直径1mm程の穴を開ける。 この際、基板をケースに戻しても、スズメッキ線や抵抗が当たらない位置になるよう、ケースの内側から外側に向けて開けると良い。 ( 失敗したら穴の位置を変えて開け直す )

穴を開けるのは、だいたい○の位置。

筆者はピンバイスで穴を開けたが、キリでも良い。

 

(7) ケースを戻す

ケースをかぶせる。 その際(6)で開けた穴から、(5)のスズメッキ線と、抵抗器の足を出すこと。

ケース内に抵抗器や、スズメッキ線がうまく収納できないようならば、長さや位置を変えてみること。

ちょうど「ツノ」のようになる。

(8) 飛び出したスズメッキ線、抵抗の足がとがったままだと危ないので先端を丸める

怪我をしないように丸める。

以上で完成。

動作テスト

電池を入れ電源をON、音程は「Hi」にする。 ケースから飛び出した両方の「ツノ」を指でグッとつまんだ時、スピーカから「ブー」という音が出たら成功だ。 音が出ない場合は断線やショートの可能性があるため、再度分解して確認すること。

やってみよう!

増設したオタマトーンの「ツノ」にミノムシクリップをつけ、アルミホイルや金属のスプーン、エンピツの芯などにつけてみよう。 手で触れた場合、音はどうなるだろう?

安全のため、ミノムシクリップは家庭用コンセントやACアダプタなど、電圧がかかっているものに接続しないこと

りろん

オタマトーンのしっぽの黒い部分を指で押さえると、音の高さが変わる。これは、何故だろうか?

分解すると、黒い部分は炭素のフィルム2枚が重なっているのがわかる。

オタマトーンのしっぽの黒い部分は...

2枚の炭素シートが重なっている。

2枚のシートは通常離れているが、指で押した位置で接触するようになっている。

しっぽの根元から見ると、指で押した位置までの炭素シートの長さは変化する (上図で言うと、根元からの距離はA<B)。

炭素は電気が流れることは流れるが、鉄やスズに比べると電気が流れづらい。 炭素シートの長さが長いほど、しっぽを流れる電気は流れづらくなる。

つまり、しっぽの根元に近い位置を指で押すほど電流が多く、遠くなるほど電流が少なくなる。 この電流の変化によって、オタマトーンは音の高さを変えている。

「電気の流れづらさ」を「電気抵抗」(単位はΩ・オーム)と言う。 指で押す位置を変えながら、しっぽの炭素シートをテスターで測ってみたところ大体30kΩ~200kΩで変化していた。

今回のハックは、オタマトーンのしっぽに導線を接続し、本体の外に引き出した。 これによって、しっぽの電気抵抗( = しっぽを流れる電流の量 = 音の高さ )を外部からコントロールできるようにしたのだ。

ではなぜ手で「ツノ」を触れた時、音が変化したのか?

人間にも電気が流れる。見方を変えれば、人間も抵抗器の一種。」

ということだ。

つづく

次回は、改造オタマトーン・応用編です。

お楽しみに!

 

■イベントのお知らせ■

以下のイベントを担当します。

ISSCR2012パブリックシンポジウム「iPS細胞と私たちの未来」

(要予約)

道具としてのiPS細胞で、私たちの可能性はどこまで広がるでしょうか?

SF作品に登場する生命操作技術を紹介しながら考えます。

イベントにはクローン羊ドリー(Dolly)の生みの親でもあるイアン・ウィルマット氏と、iPS細胞を樹立する技術を開発した山中伸弥氏が登場します!

「ものづくり」が好きな人にこそご覧いただきたいイベントです。

よろしくお願いいたします。

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