ただいま成長中!アサガオとともに

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気が付くと、私はステージ上のピアノに向かっており、目の前には初めて見る楽譜が置かれています。

会場は静まり返り、満場の観客は私が弾き始めるのを待っています。

「わ~っ、こんな曲一度も練習したことないよ~」

これは、最近私が繰り返し見た夢です。

はじめまして。

4月から科学コミュニケーターとして働き始めました

石川菜央(なを)と申します。

専門は人文地理学で、日本の闘牛を研究してきました。

北は岩手県から南は沖縄まで、闘牛が行われている地域に滞在して担い手たちからお話をうかがい、闘牛に関わる人々の生き様に肉迫しようと日々闘っていました。

私は、中学校・高校を通して数学や理科が苦手でした。

そんな私が、科学コミュニケーターになろうと思ったのは、「科学が好きでもっと触れたい、知りたい」という来館者だけではなく

「科学って難しそう、敷居が高い」と感じている方々に対し、理科系分野が得意な人よりも近い立場で、コミュニケーションができるはずだと思ったからです。

とはいうものの、展示の内容を理解しなければ、お客さまの「分からない」という気持ちに共感はできても、解説はおろか対話のしようがありません。

展示について勉強を始めましたが、手も足も出ません。

どうしよう。

そんなわけで、冒頭に出てくる夢を何度も見ました。

それでも、展示フロアデビューの日は容赦なくやってきました。

お客さまにぎこちなく話しかける日々。

ある日の閉館間際に、「変化アサガオ」コーナーに、一人のお客さまが立たれました。

 

私:こちらの写真の花、何だと思いますか?

お客さま:うーん、「牡丹」って書いてありますけど。

私:ここに展示してある写真は、全部アサガオなんですよ。

牡丹っていうのは咲き方の名前なんです。

お客さま:そうなんですか!花びらがたくさんあって綺麗だけど、アサガオには見えないですね。

私:(花の形や色などが変わる仕組みを説明する)。

…実は、今、展示スペースの裏で変化アサガオの世話をしていて、観察日記を付けようと思ってるんです。

お客さま:わ~、それって未来館のホームページに載ってますか?

私:そこからリンクしている、未来館の科学コミュニケーターが書いているブログがあるんです。

それに載せようと思ってます。

お客さま:楽しみにしてます。帰る前にお話が聞けてよかったです。

がんばって下さいね。

私:(心の声)う、うれしい(涙)。

さっそくですが、こちらが今育てている変化アサガオです。

 

変化アサガオは、花や葉の色や形を決めるさまざまな遺伝子の中に、トランスポゾンという“お邪魔配列”が飛び込むことによって、突然変異を起こしたアサガオです。

どの遺伝子に飛び込んだかによって、さまざまな種類があります。

たとえば、細長い花や葉が出る采咲(さいざき)牡丹、花びらが増えてゴージャスな花になった牡丹咲(ぼたんざき)などがあります。

こちらは、2011年7月に未来館で撮影した、采咲のアサガオです。

 

アサガオの着実な成長を日々見守るうちに、気が付きました。

歩みはゆっくりだけれど、自分の体験に裏づけされた科学的な知識や情報をお客さまが共有してくださった時、その喜びは「分からない」という戸惑いの何倍にもなって返ってくるということを。

そして、科学コミュニケーターは一方的に対話を投げかける側なのではなく、対話を受けて変化し、成長していく立場なのだと。

そして、冒頭の夢。

私は一人でぽつんとピアノを弾いているわけではありません。

そして、弾くべき楽譜があらかじめ用意されているわけでもありません。

なぜなら、科学コミュニケーションは、お客さまと一緒につむいでいく即興のハーモニーだからです。

一つ一つのメロディーの感触を大切にしながら、どんな題材も素敵なハーモニーにしていける科学コミュニケーターになりたいです。

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