iPS細胞:現実はSFを追い越すか?

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2012年ミレニアム技術賞の授賞式が、6月13日ヘルシンキで行われた。受賞したのはプログラマのリーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)氏と、京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥氏。受賞者の中でも優れた技術者に贈られる大賞も、2人が共同受賞した。ミレニアム技術賞は、人々の生活の質を改善した研究開発やイノベーションに対し贈られる。トーバルズ氏はコンピュータや携帯電話で広く使われている基本ソフト・Linuxを、山中氏は受精卵を用いないiPS細胞の樹立技術をそれぞれ開発した。

私がミレニアム技術賞の受賞者決定のニュースを知ったのは、自宅であるイベントのことを考えながら横目で見ていたネットニュースだった。

そして何かが、ピンときた。

そのネットニュースを見ていた古いパソコンにインストールしたOSは、Linuxの一種。そして考えていたイベントは、6月17日に開催する国際幹細胞学会の公開シンポジウム

未来を変えるチカラが、自宅の6畳間のパソコンと繋がったようで妙にドキドキした。Linuxがこの6畳間にやってきたのと同様、iPS細胞を私の身体、生活、未来のどこかにインストールする時がいつか来るのかもしれない。

「近づく」

私は国際幹細胞学会の公開シンポジウムで企画と司会を担当するが、バイオテクノロジーを専門としてきたわけではない。学生の頃から前職まで、趣味も研究対象もずっとIT(情報技術)だった。バイオ分野の面白さに気づいたのは、実は未来館に転職してからだ。

ミクロの世界で動きまわる細胞の精巧さ、DNAという分子の「立体構造で記録された」デジタルデータ、世界中を驚かせた高等生物でのクローニングやiPS細胞の樹立など。工学的に反応するポイント( 敢えて砕けた表現をすれば「萌え」 )が、実はふんだんに含まれていることに気がつかされた。

企画者としてイベントをご覧になる方に、このぐっとくる感情を伝えたいと思う。

そのため今回のシンポジウムは、私のようにバイオテクノロジーを専門としない方や、身近に感じない方にこそご覧いただきたい。

イベントのキーワードは「アクセス(access)」。

・バイオテクノロジーへのアクセス

・未来とSF(サイエンス・フィクション)へのアクセス

・細胞の未知の領域へのアクセス

これら「アクセス」の方法や、それにより開かれる世界をイアン・ウィルマット氏、山中伸弥氏とともにご紹介したい。

The future is now.

「通常では戻れない過去の状態まで細胞を巻き戻す技術」…と書くと、SF小説やマンガに出てきそうだ。

しかし、そんな技術がiPS細胞として現実に存在している。そして、iPS細胞は山中氏が「基本的な知識さえあれば、技術的には誰でも iPS 細胞を作ることができる」、「レベルの高い高校の理科クラブでもできる」と言う。

細胞のタイムマシンを、高校の理科クラブがつくる…これが全くの夢でもないなんて。現実は、サイエンス・フィクションの世界に一部追いつき、どこかで既に越えているかもしれない。

もちろん科学で越えられない空想もまだまだあるだろう。

イベントでは、サイエンス・フィクションの世界を題材にして、クローニングやiPS細胞について考えてみる。

何ごとを始めるときも空想から始まる。ぜひイベントをご覧になりながら、iPS細胞についてあれこれと空想してみていただきたい。

私も、イベントをご覧になった方から「下町の町工場をiPS細胞のベンチャー企業に変えた!」なんてSFみたいな動きが現実に生まれたら良いなとぼんやり空想している。

ご案内

残念ながら会場は満席となってしまいましたが、ご自宅のパソコンなどからUstreamでご覧になり、Twitterを通し参加することが可能です。ご興味持った方は、ぜひご覧下さい。17日の16時~18時です。

イベント中のコメントは、Twitterよりハッシュタグ #iPSmiraikan を含めツイートしてください。

 

現在、事前質問として以下の回答を募集しております(17日18時のイベント終了まで)。

様々なことに役立つ夢の細胞として世界中から期待が集まるiPS細胞。 

「もしもあなたがiPS細胞を作ったら、どんなことに活用しますか?」

ご回答は公式ハッシュタグ#iPSmiraikanをつけ、Twitterよりツイートするか、

本ブログにコメントしてください。

よろしくお願いいたします。

投稿いただいたコメントは、イベント中にご紹介させていただく場合がございます。

【イベント公式ホームページ】

ISSCR2012パブリックシンポジウム「iPS細胞と私たちの未来」(日本語)

Using the "cutting edge" of science to access cellular programs -- iPS cells and our future(英語)

病気やけがの治療に役立てられる夢の細胞として世界中から期待が集まっています。もしiPS細胞を、あなた自身の手によってつくりだすことができた ら?本イベントでは、道具としてのiPS細胞を手にいれた私たちの可能性がどこまで広がるかをSF作品に登場する生命操作技術を紹介しながら考えます。イ ベントには、クローン羊ドリー(Dolly)の生みの親でもあるイアン・ウィルマット氏と山中伸弥氏が登場します。

- 講師 -

イアン・ウィルマット

エディンバラ大学MRC 再生医学研究所ディレクター。

1944年英国生まれ。

1973年、冷凍保存の卵から子牛を誕生させることに成功。1996年、クローン技術により羊「ドリー」を誕生させた。その後、クローン技術から家畜生産を行う研究の第一線で活躍。iPS細胞の発表により、iPS細胞の研究へ移行。現在に到る。

山中伸弥

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)所長。

1962年大阪府生まれ。

2007年、ヒトの皮膚細胞に4種類の遺伝子を導入することでiPS細胞を樹立する技術を開発し、世界的な注目を集めた。世界標準となるiPS細胞の樹立 方法や評価方法を開発し、疾患特異的iPS細胞による病態解明や創薬などの医学研究につなげることを目指す。2010年より現職。

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