問いを引きだすチカラ〜問われる科学コミュニケーター

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以前ブログでも告知をいたしましたが、11月11日(日)に、岡村製作所オフィス研究所より池田晃一さんを講師としてお招きし「みがけ!問うチカラ〜科学館を100倍楽しむ方法」というワークショップを行ないました。フィールドワークを含めた1時間半の内容です。

 

【ワークショップを考えるきっかけ〜科学コミュニケーターと対話】

未来館の科学コミュニケーターは、単なる展示の解説員じゃない。実演をするパフォーマーでもない。しかし先端科学の一線で研究を行っている訳ではない私たちが、科学と人々をつなぐには、じぶんをどう意味づけるか。この仕事について一年と数ヶ月が経ちましたが、このようにじぶんの役割を考えて続けてきました。

しかしその間、ずっとこころにあった一つの指標は「まだ使い道が分からなかったり、研究途中の科学も積極的に展示し、伝えていく。未来館は、これらを未来に向けて、どう扱っていくかを話し合う場」という未来館の姿勢です。その中で科学コミュニケーターは、居合わせた人たちと何を話すのかいうこと。

そんなことを考えていたときに、大学時代からお世話になっている慶応義塾大学の諏訪正樹先生から、「科学の学びは、“問い”というかたちで引きだされる」という助言をいただきました。

その助言をきっかけに今回のワークショップを企画。科学をおもしろくするのは「なぜ?」そのもの。むずかしい話も、「なぜ?」をきっかけに自分との関わりを考えていけば、どんどん身近なものになるはず。ワークショップでは、「なぜ?」を“問い”ということばに置き換えました。科学コミュニケーターといっしょに、科学を考えるには、どうやって問いを出すか、その過程を知ることを目的としてスタートしました。

 

【サイエンスアゴラの様子】

 

 

9歳から60歳の参加者15人が、科学コミュニケーター大崎、落合、長谷川の3つのグループに分かれ、5階展示フロアの「地球環境」「ゲノム」「宇宙」「人体」「医療」のコーナーをグループごとに回りました。

参加者A:「自然にかえる材料でつくったペットボトルは、ほんとうにエコなの?」

「木で作った家具はエコ?」

「じゃあ、エコって何?」

 

これは小学5年生の子が出してくれた問いです。

お子さんの発想に親御さんが驚く場面もたくさんありました。

 

「“地球にやさしい”、っていうけど、ほんとうにみんな(普段は)やさしくしていないの?」

 

当たり前のように使っていることばも改めて、立ち止まって考えます。

 

参加者B:「CO2を減らそうっていうけど、いま地球にどれくらいあるんだろう。」

落合:「じゃあ、地球上のCO2ってどうやってはかれるのかな?」

参加者C:「あ、でもそうしたら、どのくらいの時間のスパンで、はかればよいのですかね?」

 

出てきた問いは、一人ずつ出た順に貼っていきます。科学コミュニケーターは、一人が出した問いを同じグループのみんなが聞こえるように読み上げます。一人の問いがまた別の人の問いを引きだすこともあります。問いを出すのはなかなか簡単にいくことではありません。最初はいっしょにやる仲間が必要です。

展示フロアから帰ってきた後は、みんなで出てきた問いを見返しながら、何がきっかけでその問いが出たのかを振り返ります。

 

 

【世界はゆたかだと気づこう】

 

 

問いを出しながら、未来館を回った後で、講師にお招きした池田さんから「問う空間、問われる空間」というタイトルでおはなしいただきました。

「世界は豊かだと気づこう」という、曹洞宗の僧侶であり、庭園デザイナーでもある枡野俊明氏のことば。先住民が使っている「トーキングスティック」。「盲導犬の視点」。これらを引き合いに、問いを引きだす空間のしつらえだけでなく、問いを出す自分自身のものの見方も大切にしよう、というメッセージをいただきました。ふだん空間のしつらえを考えていらっしゃる池田さんから、このメッセージがでてきたことは、驚きでもあり、逆に切実な想いなのだとも感じました。

池田さんのことばへの感度には、いつもハッとさせられるものがあります。講演中に、何人もの参加者がペンを取り、心に残ったことばを記していました。

 

【ワークショップを終えて〜これからの課題】

今回のイベントは、科学的な内容を直接扱うものではなく、「問いを出しながら、未来館の展示を見る」という、科学コミュニケーターがふだん行なっている経験知を、参加者の皆さんと分かち合いたいという想いで企画しました。

イベントを終えて思うのは、「出された問いを科学コミュニケーターがどう扱うのか?」ということ。

 

問いを出す過程では、科学コミュニケーターの役割も変わってきます。出された問いに対して、答えを単に示したり、展示の解説を細かくしたりするのではなく、知りたいことの答えが出てくるまでのプロセスを共有します。問いを科学コミュニケーターがどう扱うか。大切なのは、「科学の範囲で応えられるものなのか、できないとしたら、他に何が関わっているのか?」ということを共有することだと感じます。

 

そして問いを引き起こした科学の背景には、どんな光と影があるのか。それらを単純化せず、どうしようもないジレンマを知る。その上で、科学をくらしに受け入れるにあたって、どんな選択をするのか。こうして出された問いをきっかけに、議論がはじまっていくのだと思います。

 

ワークショップが終わった後、参加者の女の子が声をかけてくれました。

「わたし、医療が好きなんだ!もう一度展示フロアにいって、問いを出してみようかな。」

 

参加してくれた皆さんの問いが、どんどんつながっていきますように。

 

なお、このイベントをやるきっかけになったエピソードは、また後日長谷川のブログへと続きます。そちらもあわせてお楽しみください。

 

 

 

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