あの日見たワニの本当の姿を僕達はまだ知らない。

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院生時代、大学博物館のイベントでは、爬虫類の解説をしていたにも関わらず、

子どもたちからは

 

「ゴリラのおじさん」

 

と呼ばれていました。

 

そもそも、ゴリラの解説したことは一度もないよ??

歩ゆずってゴリラに似ていたとしても、おじさんじゃない!

 

みなさん、こんにちは!ぶっちーです。

 

 

さて、「サンダーバード博」担当 科学コミュニケーター3号の私ですが、今日はサンダーバード第15話『大ワニの襲撃』について書かせていただきます。

15話は、ある博士が開発した生物を巨大化させる薬が川に流出し、そこに棲んでいたワニが巨大化。研究所を襲うワニを国際救助隊が麻酔弾で対処するというお話です。

 

TBワニ

(C)ITC 巨大化したワニが研究所を破壊するシーン

 

本物の生きたワニを撮影に使ったことでとても迫力ある映像を生み出しているのですが、撮影時には動物愛護団体が立ち会ったそうです。

 

また、本物のワニは扱いにくく、ペネロープの足に噛みつき放さなかったのだとか。

ペネロープとワニ

サンダーバード博 展示パネルより 

 

それもそのはず。

 

ワニの咬合力(口を閉じる力)は、

なんと1㎠あたり260kg!!(イリエワニの記録)

 

ちなみに僕ら人間はどんなに頑張っても、せいぜい14kg。撮影に使ったワニは、仔ワニ(種は未公表)だったそうですが、それでもすさまじい力だったのでしょう。

 

フックcreg

イリエワニ Crocodylus porosus 

全長5mを超すワニ類最大種

 

 

ところがワニは、咬合力はすさまじいのですが、口をあける力はたいしたことがありません

 

 

ですので、ワニを移動させるときなどは、ビニールテープなどで口を押さえてしまえば噛みつかれる心配はありません。ただし、尾による攻撃もかなり強力で、直撃をくらうと骨折しかねないので注意が必要です。

 

ワニとわたし02

 

みなさん、どうしても逃げられない状況でワニに襲われたら、どうすればいいでしょう??まずは服を脱いでワニの頭部にかけ、視界をふさいだ上で口を上から押さえつけてしまうのがベストです。

 

 

さて、サンダーバード15話では実は冒頭で巨大化したウサギも出てきます。ぶっちーとしては、同じ大きさならば、恒温動物であり持続力と機動力にすぐれたウサギの方がワニよりもやっかいだと思うのですが……

 

おそらくワニの形相やイメージから、サンダーバードに限らず悪役・敵方になることが多いのでしょう。

 

ぶっちーが思うに、歯(キバ)が常時はみ出していることもそのことに一役買っている気がします。はみ出している理由は長くなるので割愛しますが、動物の中で常にはみ出しているのはワニ類だけです(最近の研究では、ティラノサウルスなどの肉食恐竜もはみ出していなかったことがわかっている)。

 

ChristiaanBotha

 (C)Christiaan Botha

 

 

その歯も、実は肉を切り裂くのにはまったく向いていません

突き刺し、押さえつけるための歯です。なので、仲間がいないと大きな獲物を飲み込めるサイズにうまくちぎれないのです!

 

動物番組でワニが獲物に何頭も群がり、噛みついて回転している行動(ツイスト行動)をご覧になった方がおられるかもしれません。あれは仲間とともに獲物に噛みつき、体ごと回転することでちぎっているのです。1頭ではうまくちぎれません。その証拠に、ツイスト行動中にワニ同士で、闘争することはありません。

 

 

さらに、ワニは巣をつくり産卵しますが、母ワニが巣を守ります。仔ワニは孵化が近づくと母ワニを鳴き声で呼びます。母ワニは卵の殻を食い破ってやり、仔ワニをくわえて水辺へ誘います。

 

※以下、画像をクリックするとリンク元のサイトで拡大画像がご覧になれます。

 

こんにちは、あかちゃん。

ARKive image - Nile crocodile hatching from egg

殻をうまく割れない仔は、お母さんが割ってやります。

ARKive image - Nile crocodile adult using teeth to help hatchling emerge from egg

 

そして、甲斐甲斐しく我が仔をくわえて……

ARKive image - Newly hatched Nile crocodile gently held in adult's jaws

 

安全な水場へと運ぶお母さんワニ。です、

ARKive image - Nile crocodile female releasing hatchlings in water

画像はいずれもナイルワニ Crocodylus niloticus

Arkiveより http://www.arkive.org/

 

 

どうですか!?

この家族思い。

 

これを利用して、ワニの巣にちゃっかり卵を産み付けてワニに守らせるカメがいるくらいです(そのカメの甲羅は対ワニ用に強固になっています)。

 

ワニは様々な鳴き声を発します。母子間だけでなく、様々な関係の間で鳴き声によるコミュニケーションをとるのです。

 

どうですか!?

ワニの高い社会性。

 

現生の動物の中で、鳥類にもっとも近い動物だという事実もうなずけますね。

 

※ワニと鳥類の類縁関係については下記リンク先最下段の図4をご参考ください。

http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130709_1/

 

 

このように、ワニはその見た目とは裏腹に、仲間への思いやりのをもったすてきな動物なのです。

 

 

さて、15話のラストシーンではミンミンが恋人アラン・トレーシーにペットとして小型種のワニをプレゼントします。

 

もしかしたら作者ジェリー・アンダーソンはワニの真の姿を知っていて、そのラストシーンはワニを巨大化・凶暴化させてしまったことへの罪滅ぼし、優しさだったのかもしれません。

 

 

企画展概要

TB

サンダーバード博~世紀の特撮が描くボクらの未来~

会期:2013年7月10日(水)~9月23日(月・祝)

会場:日本科学未来館 1階企画展示ゾーン

 

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ネズミじゃないよ、カメラだよ。

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この記事への3件のフィードバック

長くて割愛された「歯(キバ)が常時はみだしている」理由について、ぜひともご教示頂けませんでしょうか。ティラノサウルスもはみ出していなかったということを鑑み、確かに他種(トカゲ等)でもはみ出しているものはいないように思います。よろしくお願いいたします。

maanyaさま
コメントをありがとうございます。ワニのように常に歯がはみ出していますと口の中がカラカラになってしまいます。ですので、恐竜などは実際には歯がはみ出しておらず、トカゲのような顔つきだったのだろうというのが最近の定説であります。
では、ワニはなぜ、はみ出していても大丈夫なのか?というと、彼らは水辺に棲んでいるからです。そのような環境では、口内が乾く心配がありません。
余談になりますが、時折、ワニが陸地で口を開けてじっとしているのは、汗をかけない彼らが口内の水分を蒸発させることで体温調整しているのです。イヌが暑いときに口を開けて舌を出して、ハアハアとしてるのと同じですね。

以上、お答えになっていますでしょうか。ご質問、ありがとうございます。とてもうれしいです。

ご回答ありがとうございます。
進化の過程を考えると、はみ出ていなかったものから敢えてはみ出る方向に進化した種ということになりますね。
保湿や体温調節の機能面では、はみ出していて問題はないといういうことは理解出来ました。
問題はないが、敢えてはみ出る程の利点か、と考えると、水に入り体温を下げることも可能なワニです、まだ何か大きな利点があったのではないかという思いは拭えません。
是非またワニやその他の爬虫類との差などについて語っていただける回を楽しみにしつつ、自分でも調べてみます。
有難うございました。

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