お台場が世界遺産につながる?

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未来館は、東京のオダイバというところにあります。「オダイバ」といったら、お休みの日に遊びに行くところ!というイメージをお持ちの方も多いのでは?

そんなオダイバは、江戸時代、黒船から江戸の町を守るための大砲を置く「台場」でした。その大砲をつくった炉が、世界遺産になるかもしれないんです!

 

その炉は反射炉(はんしゃろ)と呼ばれるタイプの溶鉱炉で、静岡県伊豆半島のつけね、伊豆の国市にあります。「韮山反射炉」といいます。つい最近、政府が世界遺産候補としてユネスコに推薦した、「明治日本の産業革命遺産九州山口と関連地域」 にメンバー入りしています!

 

反射炉 1857年完成の反射炉は、高さ16メートル、幅5メートルの双子の炉が2組。直角に向き合っています。外側は石、内側は火に強いレンガでできています。 

 

韮山反射炉は、鉄を溶かして精製し、大砲の形にするところ。鉄を溶かすほど高い温度を扱う炉ですから、熱による痛みが激しく、言ってしまえば消耗品。ですから、もともとヨーロッパ生まれの反射炉は、生まれ故郷にはひとつも残っていません。火に強い耐火レンガを内側に使った韮山反射炉が、世界で唯一残る、鉄の精製に使われた反射炉です。製鉄用の炉は、のちに反射炉からもっと効率の良い「転炉(てんろ)」へと変わってゆきました。

 

大砲の材料の鉄は、鉄鉱石を、銑鉄(せんてつ)と呼ばれる種類の鉄にするところから始まります。鉄鉱石の主な成分は酸化鉄なので、“還元(かんげん)”という反応を起こして、酸素をうばってしまうのです。(詳しいしくみは同僚・科学コミュニケーター田村真理子の“鉄子の部屋”ブログまで!)

 

できあがった銑鉄は硬いのですが、衝撃で割れやすく、大砲にするには残念ながらもろすぎます。その原因は、炭素。銑鉄に5%くらい含まれています。大砲に適した、しなやかで強い鉄にするには、もっと炭素を取り除かなくてはいけません。

 

そこで活躍したのが反射炉。銑鉄を1200℃で溶かして、炭素を1%くらいまで少なくします。そのユニークなしくみは、反射炉の一番の見どころでもある、ドーム型の炉内にあります。

反射炉ドーム0918_2013 反射炉の中をのぞいてみると、ドーム部分はトンネルのよう。天井はまっくろこげ!

 

ドーム内の壁に熱を反射させると、ただ燃料を燃やしただけでは得られない高温になります。溶け出した銑鉄には、窓穴からかき混ぜて、空気を送ります。すると、銑鉄に含まれる余分な炭素が空気中の酸素と結びついて、一酸化炭素や二酸化炭素になって出てゆくしくみです。

取り出した鉄は、熱いうちに大砲に成型します。すぐそばを流れる鳴川(なるかわ)の水力を利用した水車が、何トンもの鉄を加工するのに大活躍しました。

大砲 一番よく造られたサイズの大砲「24ポンドカノン砲」(復元)。長さ3.5メートル、重さ3.5トン

 

ちなみに、材料の銑鉄は、遠く岩手県の釜石(かまいし)から運んだそうです。そして、完成した何トンもある大砲をまた江戸まで運ぶんですから、大変。国を守るために、最先端の技術にこだわった結果かもしれません。反射炉が伊豆につくられたのも、反射炉の技術をもった人が伊豆にいたからです(ちなみにこの方は、日本で初めてパンを焼いた人としても知られています!)。

 

実は反射炉はもともと、同じ伊豆でも東側の海辺、下田にありました。でも、ペリーが来航した時に見られてしまったので、海から見えない今の場所に移したとのこと。当時ペリーは、下田の街を見て、この国は100年後には技術面で自分たちの国を追い越すだろう、と言い残したそうです。

 

そんな日本の製鉄の高い技術は、今も健在です。その原動力となった、反射炉を含む全国8カ所の産業遺産、「明治日本の産業革命遺産九州山口と関連地域」、最近ニュースになった通り、早くて2015年の世界遺産デビューを目指しています。

 

でも今すでに1000近くも世界遺産があって、この調子だと何でもかんでも世界遺産になってしまいそうですよね。それでもやっぱり、「世界遺産」の役割は大きいな、とつくづく感じます。

 

というのも、私はこの反射炉のすぐそばの生まれですが、世界遺産の話がでるまで、反射炉は日本で初めてパンを焼いた窯だと思っていたんです…(恥)。それが、お台場と地元との意外なつながりから、日本の産業の歴史まで知るきっかけになったんですから!

 

登録される、されない、が話題になりがちな世界遺産。視点をその背景に向けてみたら、今日の自分につながるおもしろい発見があるかもしれませんね!

 

おしまいにお知らせです。私のブログは、これが最終回です。これまで読んできてくださったみなさん、ありがとうございました。未来館を離れ、今度は、このブログの読者として、未来館 loverとして、みなさんの仲間いりしたいと思います。みなさん、お元気で!さようなら!!

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