たまねぎ型の建物の正体は?


先日、こんな不思議な形の建物に行ってきました。

場所は横浜市鶴見区。さて、これは一体なんでしょうか?

たまねぎ型の建物

なんだろう、この形は見覚えがあるような……

たまねぎ型の建物がいっぱい

うわ、いっぱいある!(中央の柱が邪魔でごめんなさい)

タージ・マハル

星撮りの谷が世界放浪中に撮影した、インドのタージ・マハル

 

いやいやいや!

確かに、上の丸い部分のフォルムはそっくりだけれど、タージ・マハルは荘厳さがまったく違いますよ。(タージ・マハルの写真を持っていた谷もすごい)

 

気を取り直して、中も見てみましょう。

たまねぎ型の建物の中

なんと、木造です!

外見のメタリック感とは裏腹に、中にはやわらかな曲線に木のぬくもりを感じる上質な空間が。

これは、小さなコンサートホールでしょうか?

でも、真ん中にある白い物は、どう見ても楽器ではなさそうです。

真ん中のものを拡大

ずいっと拡大。高さは3mくらいでしょうか。これは何だ!?

 

それでは、答えを発表します。

これは理化学研究所にあるNMR(核磁気共鳴装置)施設です。

NMRとはNuclear(核) Magnetic(磁気) Resonance(共鳴)の頭文字。タンパク質のようにたくさんの原子がつながっている物質の、原子のつながり方や物質の立体的な構造を調べることができる装置です。

 

なぜそれを調べる必要があるのでしょうか。

タンパク質は、筋肉、臓器、皮膚、髪の毛など、私達の身体をつくるために必要なもの。数個~二十数個の原子からなるアミノ酸が、鎖のようにつながってできています。

リゾチームの分子模型

だ液や涙に含まれるタンパク質「リゾチーム」の分子構造模型 (未来館5階)

この分子構造模型で言うと、白や赤、水色などの色がついた球体が原子です。比較的小さなタンパク質であるリゾチームでも、このように数え切れない程の原子からできています。なので、原子のつながり方はそう簡単にはわかりません。

また、写真左のようにタンパク質内のアミノ酸のつながり方がわかっても、それだけではまだ足りません。実際の身体の中では、右の写真のようにタンパク質は立体的な形をつくっているからです。アミノ酸のつながり方から、ある程度は、どんな形になるのかを予測することはできます。が、実際のところどうなのか……それは、調べてみないとわかりません!

 

そこで、NMRです。

NMRの原理は、病院で使うMRIとほぼ同じ。どちらも、Magnetic Resonance、磁気と共鳴を使っています。

詳しく説明するととても長くなってしまうので、ここではざっくりとイラストでご紹介します。

 

1.準備

タンパク質内の原子たちは、通常は各々にリラックスした状態です。そこに、強い磁場をかけて、原子たちの姿勢を正しくさせます。

図1)準備

(原子は、原子核(+)の周りを電子(-)が回ることで、小さな磁石のような性質を持っています。イラストでは磁石の向きを人の姿勢にたとえています。)

 

2.共鳴

準備ができた原子たちに、電磁波をかけます。すると、原子たちの中には、そのエネルギーを受けとって逆立ちをするものが出てきます。この時に吸収されたエネルギーを調べるか、逆立ちを終えて直立に戻る時に出るエネルギーを調べます。

図2)共鳴

原子のつながり方や立体構造によって、出てくる結果がどうなるかがすでにわかっています。なので、結果を分析することで、原子の様子がわかるのです。

(もっと詳しい仕組みは、多数のサイトで説明してくれていますので、探してみてください。)

タンパク質などの構造を解析する方法は他にもありますが、NMRは調べたい物質を精製したり結晶にしたりせずに使えることが特徴。また、物質を壊さずに調べられる、原子1個ずつの様子を知ることができるなど、さまざまな利点があります。

NMRの開発に関わる研究には、これまでにいくつものノーベル賞が送られています。それだけ、構造の解析が重要だということですね。2013年ノーベル賞の予想に大渕「天然有機物の化学構造決定」を挙げているのもうなずけます。

 

切断されたNMRと木川先生

ご紹介が遅くなりましたが、今回、施設を案内して下さった理化学研究所の木川隆則先生です。(一緒に写っているのは、引退後に切断され、説明用としての余生を送るNMR)

 

木川先生は、ある疑問を解決するためにNMRを使っています。

これまでのタンパク質の研究は、分析のために精製した状態で行われてきました。でも、それは実際の細胞の中の環境とはまったく違う状態です。そうして得られた結果が、果たして本当に、生きた細胞の中で行われていることと同じなのだろうか?

実際のところを知るためには、やっぱり、生きた細胞の中で調べるしかない!

まだまだ手法も確立されていない新しい研究に、木川先生は挑んでいらっしゃいます。

 

NMR施設がある理化学研究所横浜キャンパスでは、9月28日(土)に一般公開が行われます。実際のNMR装置を間近で見られるようですよ。ご興味を持たれた方は、ぜひ足を運んでみて下さい。

(未来館でも同じ日程でNHKサイエンス・スタジアム2013を開催しています。こちらもお楽しみに!)

 

おまけ:たまねぎ型の不思議

あの形と広い空間は、NMRで使う強い磁気の影響を考えてのこと。装置への建物の影響が少なく均等になるように設計されています。たまねぎ型のNMR施設は世界各地にありますが、オリジナルはここ、横浜の理化学研究所なのだとか。

木造だったのも、鉄筋では磁気と反応してしまうから。外側も鉄ではなくアルミで覆われています。

アルミのクギを使っています

クギもアルミ製。細かい配慮があってこそ、いい結果が出せるんだなぁ。

 

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