ノーベル賞 未来館の舞台裏 -手前味噌で恐縮です -

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まずは、お知らせから。

本日10月11日(金)午後7時より、4人の科学コミュニケーターが出演するニコニコ生放送「誰でもわかる 今年のノーベル賞~生理学・医学/物理学/化学賞~」が予定されています。みなさん、ぜひご覧ください。(生放送後も、上からのリンクでアーカイブをご覧になれます。)

で、せっかくなのでみなさん、この科学コミュニケーターたちがノーベル賞発表の3日間をどんな風に過ごしたのか、覗いてみたくありませんか?

ノーベル賞の自然科学3賞が発表された10月7~9日。担当の科学コミュニケーターはサイエンス・ミニトークの準備に、各種メディアへの出演に、そしてブログの記事執筆に大忙し。予想外の受賞に戸惑い(生理学・医学)、ひたすらじらされ(物理学)、沈黙からの総力戦(化学)もあり、未来館はちょっとした「お祭り騒ぎ」でした。

受賞者予想の明暗こそ各賞で分かれましたが、「ノーベル賞の内容を少しでも詳しく、早く、正確に、分かりやすく」という思いは全員同じ。みなさんの期待と注目をいつも以上に集め、幸せを感じながら奮闘した科学コミュニケーターたちの様子を、野次馬としてお祭り気分だけちゃっかりと味わった谷がレポートいたします。

【そうだ、「細胞町」だ!】

7日(月)に先陣を切った生理学・医学賞チーム。「細胞内膜輸送」に関わる3氏の受賞は予想外で、午後6時半の発表直後は「『う~ん』という感じ」(西原)と言葉少なでした。実は、特設サイト「ノーベル賞を予想しよう!2013」への書き込みには受賞のうちの2人を挙げた書き込みもありました。非常に基礎的で、わかりやすい研究内容。それだけに、「なぜ、今年なのか」という思いが頭から離れません。

ブログ執筆とミニトーク準備を開始。研究の詳細を黙々と確認する作業と、細胞を詳しく知らない方にわかりやすく説明する方法を黙考し、40分が経過したころでした。ブログ担当の濱が一枚の絵を持ってきました。核=図書館、ミトコンドリア=発電所、リボソーム=工場と、一つの細胞を町に見立てて表現しています。「これだ!」と意気上がるチームの面々。チームの方針が固まり、作業はここから一気に加速しました。

 濱絵

濱が「細胞町」の絵を持ってきた=7日午後7時13分

この絵は濱が以前、未来館の科学コミュニケーターブースで小学生と対話しながら、「細胞の働きを分かりやすく伝えよう」という思いで描き、保管していたもの。一児の母でもあり、子どもを大切にする濱の人柄がにじみ出た詳報記事が完成しました。

 

【物理学賞 発表29分後の詳報】

8日(火)の物理学賞は、大本命の「ヒッグス粒子」に関わる2氏が受賞。発表の29分後にはブログに詳報を掲載しました。

福田が記事の準備を始めたのは、実は10月に入ってすぐのこと。「少し長くて難しい記事になっても、しっかりと書き込みたい」。ここ2年間、繰り返し話題になっていたヒッグス粒子。世間の注目度が最も高くなるノーベル受賞の瞬間を、福田は「より多くの人に、より詳しく正確に理解してもらう数少ないチャンス」ととらえ、安易な比喩表現はなるべく避けて、図をふんだんに使った3部作を用意しました。

8日の発表は予定時刻から15分、また15分と延期され、最終的に1時間も遅れるハプニング。福田は「もしヒッグスじゃなかったら、新しい記事を書く時間がない」と、かなりの不安を募らせていたそうです。

物理チーム

 物理学賞の受賞内容をチェック=8日午後7時53分(西原撮影)

無事に記事が掲載された後、福田が特に喜んだのは「難しい内容を理解するために、自分で調べて勉強したい」という趣旨のコメントが寄せられたこと。分かりやすさと正確さの両立を突き詰め、「思い入れのある記事になった」。満足げに、発表翌々日には友人の結婚式に参列するためハワイへと旅立っていきました。(すばる望遠鏡も見に行くそうです。いいなぁ)

 

【テレビに、ラジオに、ミニトークも】

翌9日(水)、未来館では早くも今年の受賞内容を解説するサイエンス・ミニトークが始まりました。生理学・医学賞チームは濱の絵を活用。物理学賞チームはヒッグス場の概念を伝えるために、水槽を使った実験を盛り込む工夫をしています。

 ミニトーク

ノーベル生理学・医学賞を解説するミニトーク=9日午前11時52分

また、今年は各種メディアにもたくさん出演させていただいています。前の週の金曜日にはNHKの「ニュースウオッチ9」に鈴木啓子や田村などが、生理学・医学賞の発表当日(7日の月曜)には西原がNHK「おはよう日本」とテレビ朝日「グッド!モーニング」に、同じ日のお昼にはNHK「情報まるごと」に鈴木、本田隆行、田村の3人がノーベル賞そのものの説明と予想をさせていただきました。

物理学賞の発表翌日となったこの9日も、本田隆行がNHKの「情報まるごと」に登場し、番組で使ったヒッグス氏のパネルなどをお土産にもらって未来館に戻ってきました。ラジオ出演を控えた西原も、「専門外の物理まで話すことになって」などとブツブツ言いながら、表情はとても楽しそうです。

 出演

「お土産」を手に帰館した本田(左)とラジオ出演を前に笑顔の西原=9日午後

 

【沈黙からの総力戦】

そして迎えた9日の夜、化学賞は「高分子構造の多階層解析手法の開発」。簡単に言うと、複雑な化学反応をコンピューターの中で詳細に再現できるようになった、ということです。化学に物理や生物、計算化学などが絡む研究です。

関係分野があまりに広く、化学賞チームをはじめ大勢のスタッフが集まりましたが、誰も全体像をつかめません。30分が過ぎても速報記事をアップできません。本田が見つけた「未来館沈黙」というツイートに一同苦笑い。

総力戦でした。ノーベル財団の発表文や関連論文を読み、各々の専門知識をフル活用して断片的な情報をつないでいきます。未来館内の研究棟で活動する研究者を招き、大渕はNMR(核磁気共鳴法)に明るい妻にも電話をかけ、詫摩は前職の雑誌編集者時代の人脈を頼りました。前日までに山場を終えた生理学・医学と物理学チームも後方支援部隊として、写真や画像の収集に当たります。フェロモンの構造を調べて分析化学をかじっていた大渕が、生物物理学に詳しい千葉の助けを借り、ブログを書くことになりました

 化学チーム

総力戦の作戦会議。右端はブログ執筆の大渕=9日午後7時57分

古典力学と量子力学という、異なる理論体系の長所を融合した計算化学であることがわかり、詳細も次第に明らかになってきます。理論化学、生化学、生物物理の3氏の研究が当時最先端のコンピューターと出会った末に生まれた成果であること、そしてカープラス氏が200人もの弟子、孫弟子に支えられていたこと。キーワードは「組み合わせる」です。

組み合わせる

未来館3F常設展示より

まさに all for one」と大渕。日付が変わる寸前にアップした詳報記事は、「みんなの力を借りている自分の姿を、受賞者にダブらせながら書いた」といいます。得意の「エロ」と「笑い」の要素を盛り込めなかったことを後で同僚から盛んに突っ込まれ、本人もやや不本意そうな顔をしておりましたが。

【怒濤の3日間が終わり】

こうして「嵐」のような3日間が終わりました。梅雨前に発足し、事前リサーチや受賞者予想に奮闘してきた各賞チームメンバーが一息ついています。

と、ここまで書いた(10日午後8時現在)ところでまさかの展開。なんと、鈴木真一朗がノーベル文学賞の受賞者予想をこっそりと的中させ、発表わずか8分後に記事をアップしました。コメントを求めたところ、「予想は当たったが、作品は読んでいない(おいおい)ので、今から電子書籍で取り寄せて解説に備える」そうです。

まぁ何にせよ、最大の山場は越えましたが、科学コミュニケーターにはまだ重要な使命が残っています。それは、これらの研究の詳細を、さらに皆さんにお伝えしていくこと。

冒頭でも紹介したニコニコ生放送「誰でもわかる 今年のノーベル賞~生理学・医学/物理学/化学賞~」に加え、ノーベル賞関連のミニトークは10月末まで、毎日午後3時40分から行っております。各賞チームの科学コミュニケーターがフロアでお客様と直接お話しする機会もあることでしょう。11月17日にはヒッグス粒子発見の実験に携わった東京大学・浅井祥二先生のサイエンティスト・トークもあります

科学コミュニケーター一同、未来館でお待ちしております。

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