働く女子のロールモデル-古生物学編-

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2020年の「東京五輪」が決まって思うこと。

 

未来館のある「お台場」でも開催される予定ですが、7年後、現在いる科学コミュニケーターはほぼ全員、新たな地にいるであろうということ(最長5年の任期制です)。

 

 

そんなわけで、格内の記事にもありましたが、われら科学コミュニケーターを含め、働く女子には「ロールモデル」があるといい!

多様な「働き方」や「仕事」がある昨今ですので、超マイナーどころ「化石」を例にご紹介。

メアリーアニングの肖像画 メアリー・アニングの肖像画
(Natural History Museum, London)

 

 

メアリー・アニング(Mary Anning)は、19世紀前半(1799-1847)にイギリスのドーセット(Dorset)でくらしていた女性です。

彼女は生涯を通じて、自ら化石を探して採集し、研究者や博物館に提供して生計をたてていました。

ドーセットの位置図

彼女が発見したものといえば、ほぼ完全な全身骨格の「魚竜(ぎょりゅう)や「首長竜(くびながりゅう)」、イギリス初の「翼竜(よくりゅう)など、一人の女性の業績としてはすさまじいものがあります(今でも化石関係の「女性」は驚かれるのに、なんと200年前ですよ!)

これらは、波が打ちつける海岸の切り立った崖を、足元の悪い中、たゆまず観察した成果です。

 

メアリーが採集した約2億年前の魚竜 メアリーが採集した約2億年前の魚竜(Temnodontosaurus platyodon
(Natural History Museum, London)

彼女の家は裕福ではなく、11歳で父親を亡くし、初等教育もままならなかったそうです。それなのに、化石に関する知識は専門家並みで、研究者と対等に話し合えるほどだったことが、彼女の手紙から分かっています。

 

女性が今よりずっとずっと働きにくかった時代に、生活の不安もある中で、彼女は専門知識を高めることで、発掘した化石がたとえ新種であっても何の仲間であるかを見極め、その化石に適した研究者に提供するという「ビジネス」をしていました。

これらの化石を使うことで、後世に残る仕事をした男性の研究者は多いと言われています。

 

このような研究者と比べ彼女について残っている記録はほとんどないそうですが、危険な場所での化石採集を生涯続け、さらに後世に残る研究の一端となる仕事ができたのは、単に生活のためだけではないはずです(実際、メアリーの兄は途中でやめて大工になっています)

 

現在生きている生物を自分で解剖してまで、化石についてのヒントを得たりしていることからも(←完全に古生物学研究)興味があって好きだったからこそできたのではないでしょうか。

 

「化石」というと、浮世離れしているように感じられてしまうかもしれませんが、どんな時代でも、どんな境遇でも、「仕事の源となる『好き』を探すといいよ」、というメッセージを与えてくれるような気がします。

 

 

何か未来に迷ったら、過去の歴史を紐解くのもお勧めです。

そこには、いつも私たちを未来に向かわせてくれるストーリーがあるはずです。

化石と地球のお話でおもてなししています

 

参考

「メアリー・アニングの冒険」 吉川惣司、矢島道子著、朝日新聞社

「海辺の宝もの」 ヘレン・ブッシュ著、鳥見真生訳、あすなろ書房

「化石の記憶」 矢島道子著、東京大学出版会

 

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この記事への10件のフィードバック

久方ぶりにこちら覗いてみましたら、とても素敵なお話でした。化石ではないけれど、私は生き物が好きで、女学校でも生物室にいりびたってました。学問で身を立てるなんて考えている人は、みのまわりにだれもいなかったし、学者先生に一度も会ったことはなかったけれど、なんとなくあこがれをいだいていました。ここでお書きになっているような女性がいたなんて、びっくりしました。でも、いまこうして、みなさんのお書きになったものを読んで楽しんだりできてるので、幸せと思います。

高杉信子 様

とても優しいコメントの文章から、生物室にいらっしゃる女学生の情景を思い浮かべ、なんだかほんわかとした、幸せな気分になりました。

研究者にならなくても、すごい観察をしなくてもいいんです。

ほんのちょっと目を向ければ、長い歴史をもったすごい生きものに私たちはいつも囲まれて暮らしているのですから。

私も高杉さんのように人を幸せにできる文章でお伝えしていけたらいいなと思いました。

ありがとうございます。

メアリー・アニング!2年前に新聞の『メアリー・アニングの冒険』の紹介記事を読んで以来、メアリーに興味を持ち、調べてきました。

『メアリー・アニングの冒険』は新聞に掲載されたにもかかわらず、絶版となっていたため、入手できずにいまだに読んでいません。地元の図書館では彼女についての書籍はわずか1,2冊、すべて児童書でした。

200年前の男尊女卑の時代に、初等教育もままならなかった彼女が、研究者並みの専門知識を持ち、発見した化石の価値を見抜き、研究者に優れた研究材料を提供し続けたとは…、ものすごすぎます!

彼女の死後数カ月後にロンドン地質学会の名誉会員に選ばれてますので、彼女の功績は当時の研究者に認められていたのでしょう。

安曽さんのブログを拝見して、メアリーが化石についてここまでの功績を遺したのは、彼女が化石が大好きだったからなんだなぁとあらためて気づかされました。

大好きなこと、どんどん興味が湧いてきてワクワクできることを続けていけたら、こんなに幸せなことはありません!

中学生の息子も「好き」なことを見つけて、それを仕事にできたらいいな。

未来館のコミュニケーターさん達からは、いつもいろんなワクワクを頂戴してます。これからもよろしくお願いいたします。

最長任期5年ですか…。

10月20日早朝、宿泊先のテレビ番組で、ある出演者が「戦後20年間の日本の成長は凄まじく、それは各人がよく働いたからこそ~それに比べ今の若い人は『好きなことを仕事にしたい』とよく言いますが、(そんなアホなというニュアンスで)好きなことをしたいなら逆にカネを払え」とのことでした。

突き刺さるような一言を食らった感じです。

このテレビを切ったあと、専門分野(といっても専門と呼べるレベルのものはありませんが)と無縁な事務系の採用試験でした。

25、26日も事務系の試験ですが、生活の安定を第一に、職と専門性の分離を進めるという旗印で(周囲から賛否はありますが)、これら3つは無期雇用の試験です。

私も今のつとめは任期があります。

残りは1年半になりました。

任期以上に年齢制限(多くは35まで)も気になるところ…。

私は35歳まではまだ猶予がありますが、次も任期付きだとするとその次が難しいと感じています…。

「身体に無理のないよう,冷静かつバランス良く」は分かっているつもりなのですが。

はらぺこラッコ 様

メアリーについて調べられていらっしゃったとのこと、さすがです!

「書籍がわずか」というのも、当時の「女性」の資料があまり残ってないことを示しているかと思います。

ご存じかもしれませんが、「メアリー・アニングの冒険」の著者、矢島道子さんも古生物学をされている女性です。

矢島さんがメアリーの資料を調べて紹介してくださったので、こうして私たちも知ることができるようになりました。

誰にでも、好きなことは、何かしらあるのだと思います。

それをちょっと違った面でとらえることで、自分の生活となるのかもしれません。

メアリーは化石への興味だけでなく、「ビジネス」としてとらえることも上手だったように感じます。例えば、女性が直接男性研究者とやりとりすることは難しい時代でしたので、彼女は研究者の妻達に化石についての情報を流して、男性研究者に伝わるようにしていたそうです。なんだか現代にも通じる感じがしますよね。

ブログはなかなか直接的に反応が見えない世界ですので、息子さんと一緒にワクワクされている姿を想像すると、とても嬉しい気持ちになります。

科学コミュニケーターに対するありがたいお言葉、今後の原動力となり感謝感激です。

200年前の女性の職業選択…

当時は「選択」とすら呼べなかったでしょうねえ。

とりあえず巡り合った仕事が稼ぎに結びつくなら必死でやらざるを得ない。そんな時代だったのではと想像します。

よく言われる「好きなことを仕事にする」、「与えられた仕事を好きになれるまで頑張る」、非現実的・現実的などと議論にもなりますが、この2つはどちらもあっていいんだと思います。

メアリー氏の場合は後者?スタートは生活のため、それでも、物事に興味を持つ才能、とことんまでやり抜く才能に恵まれ、偉業を成し遂げたと言えるのかもしれませんね。

(本読んでないので分かりませんが…)

日々高校生に語り掛ける身としては、「好きなことを仕事に」という言葉が時に無責任な夢物語となり彼らを苦しめるというジレンマからは逃れられません。ですが、どう転んでもさまざまな壁にぶつかるこの人生、メアリー氏のような人物のことを知っていることで立ち向かえる場面があるかもしれません。加えて、好きなことを現実的にきちんとビジネスにできる力というのは何よりも重要だと思います!それを彼らに教えてやりたいなあ。

いい話感謝です!

はじめまして。

私は化学メーカーの研究所で働いています。

昨年までは大学院生でした。

化石の写真、すごいですね!

私は小学生のころに名古屋市科学館に行ったことがあって、

魚(4cmぐらいですが・・)の化石を買ってもらったことがあります。

親にせっかく買ってもらったのに、なんだか怖くて、すぐに引き出しの中に入れてしまいました。

化石とはいえ、生きた証が生生と伝わってくるし、DNAも乾燥しているものの存在するんだろうし、ヒトも進化論的には魚にルーツがあるんだろうし・・・(今日の晩御飯で魚食べましたけど笑)

色々面白いですね。

そんな化石は20年近く経った今でも実家の引き出しのの中に保管してあります。

日本科学未来館は職場から近いので、一度は行ってみたいと思っています。

コミュニケーターの方は任期があるのですか、その後はどこに行かれるのでしょう?

コミュニケーターというお仕事、研究所で働く者として面白味を感じます。

R43 様

お気持ちよーく分かります!

年齢的な面で言えば、私の方が年上で、崖っぷち感はもっとですから(笑)。

悩んで、でも行動されていることがすばらしいと思います。

実は、勝手ながらR43さんのような方にも読んでいただけたら嬉しいと思って書いたブログです。「好きなことをすればいい」と言うと、勝手なようにとらえられてしまうことが多いかと思います。でも、たった一度の人生、大概の人が多くの時間を、仕事(を通して社会をつくっていくの)に費やして暮らしていく中、「好きなことをする」、または「興味を持つ」ことは、結果として自分だけでなく周囲や社会にとっても重要となることがあります。

メアリーも化石が見つからないときは、経済的にかなり苦しく大変だったとあります。好きなことをし続けようとするのは、良い面ばかりではありませんし、人それぞれの生き方があると思いますが、先人がポンと肩をたたいてくれているように感じていただけたら嬉しいです。

見えない未来は不安ばかり。真正面からは難しくても、なんとか「好き」を生活のひとつにしていけるようぼちぼちやってきましょう!

しょうこ 様

コメントを拝見していて、古いですが「いまを生きる」という映画を思い出しました。毎日きちんと学生に向き合っている方にとって、一言一言がとても重要なことだと思いおこしました。

しょうこさんのおっしゃっているように、成功(夢)物語を語るというよりは、世界には様々な見方や考え方、価値観、生き方があるということを知ってもらう一助となれればと思っています。一つの価値観に縛られていなければ、たとえ失敗しても、何度でも違う方法や違うことにチャレンジしようと思えるのではないかと思います。

ちなみにメアリー、その時代にとってはかなり「変人」ですし、本人としては最期まで成功したという感じではないと思います。ただ、後世の人はこんな評価をしているというだけかもしれません。そんなの嫌だ!と思って手堅い(?)道を行くのも手だと思います。様々な価値観の引き出しを持つことで、先の見えない社会で柔軟に生きていけるよう応援できたら、と思っています。

こちらこそ、ありがとうございます。

はたD 様

こちらこそ、はじめまして。

科学館で働いている者にとって、子どもの頃の科学館での記憶をずっと覚えていてくださるということはとても嬉しいことです。

そして、化石を「生きもの」として感じておられるところに、とても感動しました!(化石は「生きもの」というよりは「石」と感じられている方が多いですので) 今は動かぬ化石たちも、当時は生き生きと暮らしていたのですよね。そこに思いをはせると怖くもあり、楽しくもあり…。

さらに、引き出しの中に保管してあるとのこと、ずっと大事にしておられたようで、さらに嬉しいです。

機会がありましたら、ぜひ遊びにお越しいただき、色々な科学コミュニケーターに声をかけてみてください。未来館の後、どのような道に進もうとするかは人それぞれですので、様々でユニークな回答が返ってくると思います!

古生物学には様々な知識が必要ですので、「化学」について、また色々と教えていただければ幸いです。化石や科学コミュニケーターに興味を持っていただき、本当にありがとうございます。

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