霜降といえば、あれでしょう

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今日は、二十四節気の「霜降」。

文字の通り「そろそろ霜が降り始める時期」ということです。

今日は霜降

(二十四節気って何?という方は、こちらの記事をどうぞ)

 

最近東京も急に寒くなってきたからね……って、まあ、たしかにそれも文字の通りなのだけれど、頭に思い浮かぶのは違うものだよって?

 

そうですよね。

やっぱり、霜降り肉(特に牛肉)ですよね!

 

ということで、知っているようでよく知らない霜降りの牛肉について、前沢牛の産地である岩手県奥州市前沢にある牛の博物館の皆さまに伺いました。

 

◇霜降り肉大好き日本人

霜降り肉とは、赤い肉の間に「サシ」と呼ばれる白い脂肪が網目のように入ったもののこと。だから牛肉以外でもOK。赤地に白が細かく入った様子を、草木に降りた霜に例えたのでしょう。古くは明治36年、村井弦斎の小説「食道楽」にこの表現が出てきます。

日本人が霜降り肉が好きなわけには、歴史的な背景があるようです。

昔の日本は、獣の肉を食べる習慣がありませんでした。それには、仏教の殺生を禁じる教えなどが影響しています。家畜が死んだ時などは食べていたようですが、それでもこっそりと行われていました。肉食が普通になったのは明治に入ってから。富国強兵政策の1つとして、推奨されてからのことです。

文明開化の旗の下、この時登場したのが今のすき焼き。薄切り肉を煮込むと、肉の脂は抜けて、うまみは減ってしまいます。そこで、脂がたっぷりの霜降り肉が“おいしい肉”と考えられるようになっていきました。

また、日本にもともといた牛が、霜降り肉になりやすかったことも影響していそうです。日本古来の牛と、体の大きな外国の牛とのかけ合わせを重ねることによって、今や霜降りの代名詞、黒毛和種(黒毛和牛)が誕生しました。

 

黒毛和牛

かわいいこのこも、黒毛和牛。

写真提供は、未来館で牛といえばこの人!“闘牛コミュニケーター”の石川

 

◇おいしい霜降り肉の牛を育てるポイント

黒毛和牛ならなんでもいいってわけではありません。芸術品のように美しい最高級の霜降り肉を作るためには、大きく2つのポイントがあります。

 

その1.血筋

血筋、つまり、親が誰であるかは霜降り肉を作る上でとても重要です。実際「たった3頭の種牛が前沢牛をつくった」と言われるほど、いい子をつくる種牛は大活躍をします。3頭の中の1頭、恒徳号(牛の名前です)を父親に持つ子の数は、なんと7万頭以上!!……ちょっと想像したくない程の数です。

雌牛が子を産むのは、およそ1年に1回、1頭だけ。恒徳号が種牛として過ごした期間は18年。当然、自然交配では7万頭という数にはなりません。優良種牛の精液は希釈し分譲されるのです。そして、たくさんの繁殖農家がそれを使って人工授精をさせます。

それだけ血筋は重要なのです。優良種牛の子をたくさん作るために、精子の凍結保存や代理母出産など、新しい技術が繁殖に貢献してきました。2009年には、超がつくほどの優良種牛だった「安福号」の凍結保存していた細胞を使って、体細胞クローン牛を誕生させたというニュースもありました。これからも生命科学技術の進歩は、黒毛和牛に直結していくでしょう。私たちはそれをどう考えていけばよいのでしょうか。

恒徳号の頭部はく製

恒徳号の頭部はく製。

こうして飾られていることからも、恒徳号の功績の大きさを感じます。(資料提供:牛の博物館)

 

その2.育て方

ある肥育農家さんは、「会話ができるまで牛と接すること」が名人の秘訣と仰います。それほどまでに牛と密接に関わりながら、大切に大切に牛を育てていきます。

今回、牛の博物館の皆さまにお話を伺って強く感じたのは、牛への愛でした。食べ物として、生き物として、そして人類の長年のパートナーとしての、牛への愛。それは、尊敬にも似ていました。また、霜降り牛の育て方を知るにつれ、私は、「牛への愛が美しい霜降り肉をつくる」と言えるような気がしてきました。

たっぷりサシが入った霜降り肉をつくるためには、栄養価の高いエサばかりを与えるのかと思うと、そうではありません

大麦や大豆粕などを配合した栄養価の高いエサを与えるのは、最後の数カ月間だけ。多くの期間は、稲わらで育てます。稲わらを食べて育った牛は、しっかりした体になるそうです。最後の期間も、栄養価の高いエサばかり食べていると牛は具合が悪くなってしまいます。それは、胃の酸性度が高くなるため。そんな時も稲わらを与えて調子を整えます。牛に与えるエサの配合は、職人の技。毎日、ブラッシングや飲み水の交換をしながら1頭1頭の状態を見極め、それぞれに最適な配合のエサを用意するのです。

そうして育てること、22か月間。牛が3歳ぐらいになったある日、今だ!最高の仕上がりだ!というタイミングで、出荷するのです。

そうしてできたおいしいお肉

丹精込めてつくられた霜降りの牛肉。おいしく食べるためには、焼き方も重要です。焼きすぎてはせっかくの脂が抜けてしまいますので気をつけて。また、和牛にしかないおいしい香りの「和牛香」を最大限感じるには、80度が最適。そして、これはちょうどすき焼きの温度なのだとか。

ブランド牛の霜降り肉なんて、私には滅多に食べる機会はありませんが、その時にはお肉の背後にあるいろいろも噛みしめて、さらにおいしく食べたいと思う霜降の日です。

 

おっと、最後にもう1つだけ。

二十四節気の霜降はそうこうと読みますので、お間違えのないように。

 

謝辞:牛の博物館の小野寺義文様、髙橋杏奈様、突然の訪問にも関わらずていねいにお教えいただきましてありがとうございます。

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