南極点到達の悲劇...と化石

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最近寒いのに、ブログでは、南極ネタが熱いような…

なので、南極…と化石のお話を。

 

今から100年ちょっと前の1911年12月14日は、ロアール・アムンセン(Roald Engelbregt Gravning Amundsen)が探検隊を率い、人類が初めて南極点への到達に成功した日です。

 

アムンセン像

ノルウェー・トロムソにあるアムンセン像

 

この南極点到達については、アムンセンとロバート・スコット(Robert Falcon Scott)の冒険レースとして有名で、スコット隊が敗れた上に全員亡くなるという悲劇の物語として記憶されている方が多いのではないでしょうか。

 

でもこの、敗れたスコット隊の「科学屋」としての側面をご存知でしょうか?

 

彼らは、南極点到達というイギリスの威信をかけたミッションとともに、南極大陸の「地質」や「生物」を調べるという「科学調査」のミッションを持っていました。

南極での一コマ

 スコット隊の南極での一コマを再現したジオラマ(ロンドン自然史博物館)

 

南極点を目指す道のりだけでなく、到達の2番手となったことを知り、失意と荒天による困難な帰途の中にも、彼らは地質調査のために岩石や化石を集めていました。そしてその標本をのせた「そり」は人力でひいていました。

 

スコット隊が最期まで手放さなかった化石や岩石標本は、彼らの遺体とともに発見されています。

 スコット隊が採集した岩石標本

ロンドン自然史博物館

 

「たくさんの岩石は重かっただろうに。先に進めばよかったのに!」

私は調査中、採集した化石の量が多くなってくると、沢を降りられなくなるといけないので、採集しようか悩むことがあります。比べものにならないような過酷な状況でも採集し、運び続けた彼らがどれほどすごいか、リュックのずっしりとした重さでひしひしと感じます。

 

 

後に、彼らが採集した標本の中には、「グロッソプテリスGlossopteris)」という、おもに3億~2億5000万年前に繁栄して森林をつくった裸子植物の化石があったことがわかりました(裸子植物はマツやスギなどの針葉樹やイチョウなどのグループです)。グロッソプテリスの化石は、遠く海を隔てている南アメリカ、アフリカ、インド、オーストラリアからも見つかっていました。南極大陸での発見は、今ではバラバラになっているこれらの大陸が、もともとはくっついていたという証拠のひとつになったのです。

 

グロッソプテリスの化石産地

 

 

スコット隊は、到達レースには負けたけれど、化石とともに、科学調査への熱い思いを100年後まで残してくれています。

 

 

 

国立極地研究所 南極・北極科学館

 

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この記事への4件のフィードバック

そうか…

アムンセンとスコットというのは単なる冒険野郎たちではなかったんですね。

高校の英語の教科書で二人の激闘と悲劇を知って衝撃を受けたのを思い出します。そのときも、「スコット、なぜ!」という思いでいっぱいでしたが…

確かに南極にただ冒険しに行くなんてもったいなさすぎますもんね。未知の世界に科学的な調査に赴いたゆえの使命感と考えれば納得できます。ただ逆に、彼らが純粋に科学的な目的を果たすためだけに出かけていったのならば、どこかで引き返すこともできたのかも…と思ってしまいます。

研究者の皆様には、今後の科学の発展のためにも、使命感を胸に秘めつつ自分の身を第一に研究を続けていただきたく。お気をつけて。

化石の取りすぎ注意です!('ω')ノ

スコット隊が調査活動もしていたとは…、知りませんでした!

化石発掘して帰ってきた息子のリックはとんでもない重さ。

腰が抜けそうです!(でも細くてひょろひょろの息子は、それを嬉々として持って帰ってくるんだなぁ)。

あのずっしりとした石の重さ、なんでも凍る極寒の地での地道な作業…、スコット隊の遭難はかわいそうすぎる(>_<)。

なかなか知ることのできないお話、ありがとうございました。

はらぺこラッコ 様

こちらこそ、いつも楽しいコメントありがとうございます。

化石は重くても、持ち帰って眺めていると嬉しいですよね。息子さんのお気持ちよくわかります。

化石屋が気をつけなければいけないこと、それは「腰を悪くすること」だと思います。

「あぁ、どれも置いていきたくないよ、もっと採集したいよ」とよく思いますが、腰を悪くしている諸先輩方を思い出し、(泣く泣く)撤退することにしています。もっと力持ちだったらよかったのにな、とよく思うので、はらぺこラッコさんの息子さんが羨ましい!化石屋は体力勝負なところもありますので、身体にお気を付けて気長に化石採集してくださいね。

しょうこ 様

アムンセンは冒険野郎です(笑)。

私も教科書から、悲劇の物語としてずっと記憶していました。

ただ、「悲劇の物語」というだけでなく、科学的にも価値ある調査と発見をしていたんだよ彼らは、という一面をお伝えできれば幸いです。

実際に山奥で調査していると、ここで何かあったりしても誰も気がつかないだろうな、と感じることが多々ありますので(笑)、ありがたいお言葉肝に銘じてがんばります。

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