大雪で孤立して気づいた日本家屋の温もり

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江戸時代より続く老舗温泉旅館。

屋根の上には1mを超える雪がのしかかっています。

こんにちは福田大展です。私は2月14日から16日まで、群馬県みなかみ町の山中で、大雪にみまわれ孤立していました。今回のブログは、3日間孤立して考えたことを伝えたいと思います。

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私は久々の3連休だったので、旅行に行くことにしました。場所は与謝野晶子や川端康成などの文豪に愛された、群馬県内のとある老舗温泉宿です。東京から約3時間半。新幹線に乗り、そこからバスを2本乗り継ぎます。最後のバスは1日2本しか走っていません。

 山の中を走るバスを降りると、明治8年に建てられた旅籠が現れました。壁の木板の黒ずみが、歴史の重みを感じさせます。玄関の隣には、懐かしい赤い丸ポストが寄り添っていました。宿に着いたときには、すでに道路や屋根の上に20cmほどの雪が積もっていましたが、長靴を履いていれば、さくさく歩けました。

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 初日は、何の心配もなく美味しいご飯を食べて、温泉に浸かって布団に入りました。しかし、ぐっすり眠っている間に、静かに雪が降り続いていたのです。

 

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 朝、目覚めると、世界は一変していました。昨日問題なく歩けていた道が、小学校高学年の児童の身長ほどの雪で覆われていました。

「ドドドドドッーー!」

建物を揺らしながら、天井から重い音が響きました。音の正体は、屋根に積もった雪が滑り落ちる音。窓の外を見ると、2階の窓まで雪が押し迫っていました

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みちみちに詰まった雪で、1階の窓枠ははち切れんばかり

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駐車場にはもっこりした何かが雪で埋もれていました。

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前橋地方気象台によると、私がいた宿がある地域の積雪深は136cm。最寄りの市街地の前橋市では72cm積もり、ここ118年間で最も多かったようです。

「あれは完全に雪崩だな」。宿の主人の声が聞こえてきました。どうやら新幹線の駅まで続く県道と国道のあちこちで、雪崩が頻発して道路を塞いでいるようです。「番頭も雪で家から出られない」と苦笑いを浮かべる主人。「布団を上げる人もいないから、ゆっくりしていてください」

 最初は、思わぬ大雪に心を踊らせていましたが、日が暮れていくにしたがって、だんだん不安が大きくなっていきました。2日目は結局帰れないまま、夜が更けてしまいました。その日の晩御飯は、山の幸と海の幸が詰まった昨晩とは違い、おにぎりと味噌汁のみ。たった一人、宿に残っていた板前さんが、握ってくれたようです。塩気のある米をほおばりながら、食料や燃料が残り少なくなっていることを実感しました。

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「ガタガタガタガタ・・・」。夜になると台風のような強い風が吹き荒れ、窓をきしませました。様子を見ようと障子を開けたときに、あることに気づきました。

「部屋が意外に暖かい」

主な暖房器具は、電気を使ったエアコンのみ。宿の周りは雪に囲まれ、すさまじい風が打ち付けているのに、意外に部屋が暖かかったのです。すき間風が吹いてもおかしくない歴史ある木造建築なのに、なぜ暖かいのだろう?

日本建材・住宅設備産業協会の資料によると、住宅から逃げる熱の6割弱は「窓」から漏れています

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そこで温泉宿の窓の構造を観察してみました。木枠のガラス窓が2枚に、和紙が張られた障子が1枚。この変哲もない窓に、実は日本家屋の匠の技が潜んでいたのです

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コンクリート、ガラス、木、空気。

4つの素材の壁のうち、一番熱を逃しにくいのはどれでしょうか?

 

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答えは「空気」です。8mmの空気の層で、25cmのガラスと同じ断熱効果を得られるのです。熱を伝えているのは、分子が振動する運動です。なので、分子の密度が小さい気体は熱を伝えにくく、密度が大きい固体は熱を伝えやすいのです。

宿の窓はガラスと障子の3層構造。さらにその間に、2つの空気層が挟まれているので、断熱性が高く熱を逃がしにくい構造になっていたんです。障子って頼りなく見えるかもしれませんが、空気の層ができるので、とても熱を逃しにくくしていたんですね。

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皆さんの家の窓ガラスの枠は、何でできていますか? 

大抵はアルミサッシだと思います。このアルミニウムは、とても熱を逃がしやすい素材なんです。先ほどの壁の厚さの例で言うと・・・、5cmの木板と同じ断熱効果を得るために必要なアルミニウムの厚さは、なんと約78m!(木の熱伝導率0.15、アルミニウムの熱伝導率236で計算しました) 冬の寒い朝に、アルミサッシの部分だけ結露しているときがありますよね。古い日本家屋の木枠はレトロというだけでなく、実は断熱性も優れているんです。

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翻って、皆さんの住んでいる家の断熱はどうでしょうか。私の住んでいるアパートの部屋と外気との間には、ガラス1枚しかありません。地球温暖化を加速させないためには、二酸化炭素をがんがん排出する火力発電の発電量を減らす必要があります。そんな時には、「暖めた部屋の熱を逃がさない」ことも大切だと思います。使うエネルギーの量を減らして、効率よく使う仕組み作りが必要です。日本家屋の匠の技に学ぶことも多いのかもしれません

部屋の熱を逃がさない匠の技に守られて、宿で過ごすこと48時間。3日目の夕方にようやく除雪が完了し、帰路につくことができました。休むことなく除雪車に乗り込み、道路を確保してくれた宿の従業員や、町役場の職員の方たちに大変お世話になりました。ありがとうございました。

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この記事への4件のフィードバック

これだけ雪が積もっていると、空気を含んだ雪自体がかまくらのように家屋全体を断熱する効果も大きそうです
廊下の外側の木製の雨戸と、内側の障子戸も、もしかすると断熱の効果があるのでしょうか
冬は二重に家屋を囲い、夏は開け広げて風を通す、昔から考えられていたのかもしれないですね

コメントありがとうございます!

確かに、1階は写真の通り、雪でみちみちになっていたので、
外側の窓枠と雪との間に、さらに空気の層ができあがり、
断熱効果は高まっているかもしれませんね。
そのかわり、太陽の光も入ってこれなくなってしまいますが。汗

>廊下の外側の木製の雨戸と、内側の障子戸も、
>もしかすると断熱の効果があるのでしょうか?

はい。その通りです。
障子は和紙が一枚ですが、
障子があることで、空気の層ができあがります。
さらに断熱を高めることにつながります。

>冬は二重に家屋を囲い、夏は開け広げて風を通す、
>昔から考えられていたのかもしれないですね

確かに。夏は風という自然の力を生かすことで、
冷房のエネルギーを減らすことができそうですね!

P.S.
今回のブログは、実はまだまだ書きたいことがあります。
発電に投入したエネルギーのうち、
使っているのは35%だけで、
残りの65%は熱で逃げているんです。
今こうしている瞬間にも、熱が逃げています。
もったいない!

その逃がしている熱を、活用するシステムが必要だと思います。
早急に。

やはり、長年の経験からできた日本家屋も、理にかなっていた訳ですね。

そんな木材のすごさを、『里山資本主義』の本文の中で知りました。
CLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)という、木板を縦横に貼り合せて建築用の木材にした、いわば進化した建築材。

http://www.clt-kenchiku.org/wdoc/?q=grp02

ヨーロッパでは、なんと!9階建てのビルまでできているとか。
しかも、日本の耐震試験設備(e-ディフェンス)で試験をしたら、阪神淡路大震災の揺れにも問題なし!

植樹し過ぎた杉の木も、このCLTにして使えば、
花粉症で困っている人にも朗報かもしれませんね。

>ちゃろ様
コメントありがとうございます!

スウェーデンのベクショーという都市は、
再エネの導入や低エネルギー社会に向けた取り組みが盛んで、
おっしゃられているような、
「8階建ての高層木造住宅」があります。

「CLT」というものは初めて知りました!
ありがとうございます。早速調べてみます。

花粉症(笑)
私も昨日からくしゃみが出始めました・・・。

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