エネルギー再耕① 牛のうんちは大地の恵み

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「エネルギーは地域の風土に合った方法

土地を "耕し""収穫" するもの」

 

福島第一原発事故のあと、大規模な電力会社に頼らず、自分たちで再生可能エネルギーをかき集めようという取り組みが、じわりと広がっています。そんな取り組みを紹介する企画をはじめます。タイトルは「エネルギー再耕」「エネルギーは本来、地域に根ざした1次産業じゃないだろうか」との思いを込めて、課題を考えなおす「再考」の文字に「耕す」を用いました。第1回目は、岩手県葛巻町「牛の恵み」を紹介します。SCの松浦と細々と続けてまいります。

 

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気づいたら牛に囲まれていました

牛は柵からニョキッと顔を

黒々とした大きな瞳見つめてきます

「ボチャ、ボチャッ、ボチャ」

油断をしていたら、牛のうんちが飛び散りました。

人より牛が多いまち、岩手県葛巻町に行ってきました。環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2013年版報告書」によると、同町の電力自給率は190%。すべての住民の電気をまかない、さらに余った電気を売れるほど発電しています。基幹産業は昔から続く酪農林業。ないものねだりをしない、そのまちの歴史に合ったエネルギーと出会いました。

(※今回の記事にはうんちの写真が出てきます。食事中の人は閲覧注意!)

 

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盛岡駅から車を走らせること1時間半。郊外型店舗が並ぶ広い国道を逸れて細い山道を進むと、小鳥のさえずりが聞こえてきました。ふと目をやると、遠くの山の緑色の斜面に、白と黒の斑点がぽつり。目を細めてよーく見ると、その小さい点は放牧された牛でした

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葛巻町の人口は約7000人、牛は10000頭。そうです。人間より牛の方が多いんです! 葛巻町は1000mを超える山々に囲まれた山村で、土地の86%が森林です。冷涼な気候が動物を育てるのに適しており、戦前は軍馬を育てていました。その跡地は戦後、広大な牧場に生まれ変わり、酪農が根付きました。今では全国の3本の指に入る酪農郷です。

 

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まちの中を車で走ると、赤や緑、青など、色とりどりの帽子をかぶったような、可愛らしいサイロが目につきます。牛のえさを保管する建物です。ある牧場に立ち寄りました。私が柵に近寄ると、50頭近い牛がのしのしと近寄ってきました。

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"地雷"があるかもしれない。気をつけてくださいね」

 

取材の対応をしてくれた町役場の女性職員が、優しく忠告してくれました。"地雷"とは牛のうんちのこと。彼女はそのあとに、こう付け加えました。

 

「牛のふん尿は、大地の恵みなんです」

 

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葛巻町は、牛のふん尿で電気や熱を作っているんです。最初に、「スラリー」と呼ばれる牛のふん尿がドロドロになったものを、固体と液体に分けます。下の写真の茶色いものが、脱水した固体のうんちです。(食事中の人すいません!)あろうことか、鼻を10cmの距離まで近づけてみました。(さらにすいません!)まったく臭くない! どうやら臭い成分は液体の方に残るようです。この固体は堆肥として利用されます

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その後、分離した液体のうんちと生ごみを混ぜて1カ月ほどタンクに貯めて発酵。出てきたメタンガスを燃やしてガスエンジン発電機を動かし、電気と熱を作ります。さらに、発酵したあとの液体は、「液肥」として牧草地にまかれて、余すことなく活用します。

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葛巻町のプラントでは、成牛200頭分にあたる13トンのふん尿と、住民が出した1トンの生ごみ1日の原料として使用。37kWの電力と、43000kcal(キロカロリー)の熱を生み出します。葛巻町の牛が出すふん尿は、成牛と仔牛を含めて、1日あたり400トン以上。まだまだ可能性は広がります。

 

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酪農によって生まれたエネルギーは、これだけではありません。実は、風力発電もかかわりがあるんです。どんなつながりなのか? それは、風車に近づけば分かります。近づいてみましょう。

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まちの南にひろがる上外川(かみそでがわ)高原は、標高1000mを超えてそびえ立っています。その尾根沿いに、1750kWの風車が12基あります。1年間の発電量は5400万kWh。16000世帯分の電気にあたります。羽根の1枚の長さは33m。大型バス3台分の長さもあるんです! こんなに大きなものを、山の上にどうやって運んだのでしょうか? 1975年に大規模に牧草地を開拓したときに、75㎞に及ぶ農道も整備しました。山を縫うように敷かれたこの道があったからこそ、巨大な風車を運べたんです。

   

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 「最初から発電に役立てようとしたわけではないんです。

葛巻には牛や森が昔からあった。

たまたま、その先に再生可能エネルギーがあったんです」

 

町役場の女性職員が教えてくれました。今の私の生活は、電力会社がつくるエネルギーに頼りっきりです。しかし、葛巻町の取り組みを見ていると、エネルギーの理想的なかたちは一つではなく、その土地の風土に合わせた最適なものがある気がします。次回は葛巻町の「森の恵み」を紹介します。

 

▼おまけ

それはそうとして、未来館で「うんち」にまつわる企画展が始まります。題して・・・

「トイレ?行っトイレ!~ボクらのうんちと地球のみらい」

お楽しみに!

 

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