そうだ、海底に住もう。

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 みなさん、はじめまして。2014年4月から未来館の科学コミュニケーターになった後藤成海です。成海と書いて「なみ」と読みます。成海の「海」は父と母がハネムーンで行ったニューカレドニアの海。あの日の海のような子に育ってほしいという願いを込めて名付けられました。そこで今回は、この名前にちなんで海の話をしたいと思います。私たちは海に住めるのか?について考えます。

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 ところで、みなさんはスキューバダイビングをしたことありますか? 私は先日、人生初ダイブを果たしました。空気ボンベを背負って、足にはフィン と呼ばれる足ヒレを付けて、伊豆の海を10m弱潜りました。写真の通り、見渡す限り海。イワシの群れやアナゴの仲間、青くてきれいなスズメダイの仲間な ど、意外とにぎやかです。でも、どこを見まわしても人間はいません。なぜなら、ここでは私たちは息もできないし、潜れば潜るほど大きくなる水圧に押しつぶ されてしまうからです。そう思うと、私は潜りながらどんどん怖くなってきました。深く潜るにつれ、肺や副鼻腔などの体内の空洞は、水圧に押されて徐々に小 さくなっていき、最後にはつぶれてしまうのです。浅いところにとどまるようにしても、魚のようなエラを持っていないので水中では呼吸ができないし、イルカ やクジラのように息継ぎの回数が少なくできるよう、酸素をため込んだり、効率よく使ったりできる体でもありません。でも、夏でも涼しい海底で、この美しい 景色を眺めながら毎日を過ごせるならば、それはきっとすばらしい生活のはず。

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  では海に住むにはどうすればよいのでしょうか。陸上でも空気の薄い高地でトレーニングすれば、赤血球やその中のヘモグロビンの量が増えて 、イルカやクジラのような効率のよい呼吸に少しは近づけますが、イルカの効率のよい体は進化の長い時間をかけて獲得してきたもの。今のままの人間の体で海 底に住むためには、空気を安定して供給でき、しかも大きな水圧にも耐えられる建物を作るしかありません。

 ところで、水圧とは何でしょうか。水圧は、下の図の様に、水中であらゆる方向からかかる圧力のことです。そしてその大きさは、深く潜るほど大きくなります。水圧の正体は、自分より上に乗っている水の重さなので、潜れば潜るほど大きな水圧がかかることになります。

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  水圧に耐えられる建物をつくるヒントは、潜水艇にあります。海に潜っていく船のことを潜水艇と言います。大型の船になると潜水艦と呼ばれます。日本には 「しんかい6500」という潜水艇があり、海底の探査を行っています。その名の通り、水深6500mまで潜ることができます。しかも、有人潜水調査船なの で、人を乗せて潜ります。未来館には実寸大のレプリカがあります。窓の厚さや人が乗り込むスペースの構造、ボディや窓の素材に秘密がありますのでぜひ見に 来てください。

 さて、この「しんかい6500」ですが、1989年に完成したので、偶然にも私と同い年です。私はまだまだ若いつもりなの ですが、「しんかい6500」はそろそろ老朽化の心配があります。また、強い水圧に耐える潜水艇を造るには、職人技のような技術が必要です。その技の伝授 もしなければなりません。次世代の潜水艇を造る必要があるということで、「しんかい12000」の計画が練られていま す。水深12000mまで潜るため、「しんかい6500」に用いられた材質や設計を改良する必要があります。 また、「しんかい6500」をつくった当時より技術が進み、新しい材料も発見されています。強化ガラスを使った透明な操縦室などもできてしまうかもしれま せん。 このレベルの深海を人間の目で見ながら本格的な科学探査した例はなく、実現すれば、人類史上初めてです。どのような世界が広がっているのか、想像するだけ でもドキドキします。

 しかし一方で、深海に人が潜って探査する必要性について、疑問に思う方もいらっしゃいます。人間の目で見なくても、様々な種類の光や超音波を使って海底の様子を調べたり、遠隔操作で海底のサンプルを採取したりできるからです。人間の目で見ることのメリットとは一体何なのか。みなさんも考えてみてください。

  話がそれましたが、私たち人間は海底に住めるのか。今の潜水艇の技術を応用すれば住めるかもしれない。でも、海底都市を造るとして、それは他の生き物たち の生活を邪魔しないだろうか。そもそもこの計画にコストをかける価値はあるのだろうか。海底で研究することのメリットが明らかになれば、海底研究所もでき るかもしれないけれども・・・。とりあえず、しばらくは海底に住むのはあきらめた方がよさそうな気がします。しかたない。海に住んでいる気分を味わいに、 また海に潜りに行こう。

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