未来の動物園・水族館① ~イルカ問題って何?~

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なぞなぞです。


 

 

普通にはかると重いけど、逆立ちしてはかると軽い動物ってな~んだ?

 
 

 

答えはこちら!

20150825_niiyama01.jpg

撮影:新山加菜美

 
 

そう!イルカでした!

 
 

逆さにして読むと、「カルイ♪

 
 

科学コミュニケーターブログでまさかの言葉遊び...

 
  


 

 
 

 
 

......みなさん、こんにちは!

 
 

実はイルカが好きな新山加菜美です!!

 
 

 
 

 

上の写真は、昨年の6月に関東近郊で初めてイルカと泳いだ際に撮りました。

イルカが優しい眼差しで優雅に泳いでいます。

 
 

 
 

イルカの背びれをつかんで、自分の頭を水面下につけると、イルカと一体化しながら泳いでいるよう!

 
 

夢のような時間でしたが、このイルカは、施設が飼っているイルカです。当時はこのイルカが追い込み漁によって捕獲された可能性を微塵たりとも考えませんでした。

 
 

あれから約一年。

 
 

2015年の4月に、衝撃的なニュースが舞い込んできました。

 

20150825_niiyama02.png


 

 
 

え?!

 
 

水族館からイルカがいなくなる?!

 
 

って、WAZA、JAZAってそもそもなに?!

 
 

 
 

困ったときには、この方を呼びましょう!!

 
 

ブッチ~!!!」

 

 

 

20150825_niiyama03.png

  
  

  

20150825_niiyama04.png驚かせたね!元・上野動物園飼育展示員で現・科学コミュニケーターのブッチーです。JAZAというのは、貴重な生き物を保護しようと、国内の89の動物園と63の水族館が中心となって作った団体だよ。「日本動物園水族館協会(Japanese Association of Zoos and Aquariums)」の略称さ。JAZAはWAZA(World Association of Zoos and Aquariums、世界動物園水族館協会)に加盟していて、加盟園館の間で『ブリーディングローン』、つまり繁殖のために動物を行き来させたり、増えた動物同士を交換したりして、相互に飼育展示動物の充実を国際的にはかってきた経緯があるんだ。

 
 

ありがとうブッチー!

 

でもなんで、イルカを追い込み漁という方法で捕獲してはいけないのかしら...

 
 

20150825_niiyama04.pngのサムネイル画像の追い込み漁によるイルカの捕獲が、WAZAの倫理規定「「動物に苦痛を与える方法で捕獲した動物を水族館に展示してはならない」に違反するとして、通告を受けたんだよ。追い込み漁っていうのは、音を立てながら船でイルカを入り江に追い込んで、捕獲する方法。JAZAに加盟する約30の施設でイルカを飼っているけれど、そのほとんどが和歌山県の太地町で追い込み漁によって捕獲された個体だよ。

 
 

音を使って入り江に追い込むのが、苦痛を与えているってことなのかしら...


 

20150825_niiyama04.pngのサムネイル画像のサムネイル画像のサムネイル画像追い込み漁によるイルカの捕獲は本当にイルカに苦痛を与えているのか、疑問視する声もある。でも海外では、野生イルカを捕獲して水族館に展示すること事態があまり推奨されていないね。それどころか、欧米ではイルカショーさえもなくそうという動きがあるよ。

 
  


 

海外の水族館にもイルカは飼われているけど、どうやって入手しているの?

 
  

20150825_niiyama04.pngのサムネイル画像のサムネイル画像のサムネイル画像のサムネイル画像海外の水族館で飼われているイルカは、ほとんど繁殖によって生まれたイルカなんだ。日本でも繁殖に成功している水族館はあるけど、ノウハウは十分に蓄積されていない。さらに、イルカの繁殖にはショーイルカ用のプールとは別に、専用の大きなプールが必要なんだ。つまり、多額の費用がかかるからほとんどの水族館では現実的には繁殖を試みるのは難しいと言われているよ。

 
 

 
 

うーん...

海外では野生イルカを捕まえているところは少ないのね。

 
 

結局WAZAから通告を受けた後、どうなったの?

 
 

20150825_niiyama04.png結局、JAZAはWAZAの要求を呑んで、追い込み漁によるイルカの入手を禁止したんだ。その後、JAZAのWAZA会員資格は復活。これまでの経緯を簡単にまとめるとこんな感じ。実は2015年の4月よりもっと前から、WAZAは追い込み漁で捕獲したイルカを水族館に展示するのをやめるように通告していたんだ。年表形式でまとめてみよう!


 

  

  
 

20150825_niiyama05.pngのサムネイル画像

(クリックで拡大します)

 
 

へぇ~。日本の一部の水族館では反発して、新団体を立ち上げようとしていたのか。

 
 

うーん...なんかしっくりこないなぁ~...

 

 

20150825_niiyama04.pngもうひとつ!忘れてはいけないのは、WAZAは「追い込み漁によって苦痛を与えられたイルカを飼育・展示するべきではない」と規程しているのであって、追い込み漁そのものやイルカ食の廃止までは言ってないことはきちん押さえておこう。

  
 

 
 

今回のニュースで、こんな疑問が受かんできました。

 
 

20150825_niiyama06.png

 

私は、これまで動物やイルカショーを見て、「すごかった~」「癒された~」「かわいかった~」と思うくらいでした。でも、これだけのために動物園や水族館は存在しているんでしょうか?

 
 

動物園や水族館は、生きている本物の動物を見られる貴重な場所でもあります。

 
 

20150825_niiyama07.png


  

今回のイルカの問題も、「水族館とは何か」を無視することはできないように思います。

 
 

このことについて、科学コミュニケーターの大渕とともに、研究者の方に取材をしたり、未来館で対話をしながら、みなさんと考えを深めていきたいです!

 
 

追い込み漁の是非、伝統文化への考え方、イルカを飼うことの是非は各国、そして個人の価値観と感情による意見の違いが多く複雑で、けっして「カルイ」問題ではありません。

 
 

これをきっかけに、私たちと一緒に考えてみませんか?

 
 

 

注)イルカを食用として捕獲する追い込み漁へのご意見は国内外で賛否両論あり、法律やルールによる意見というよりは、個人の価値観と感情による意見が多数見受けられます。そのため、本ブログ内では「水族館に展示するイルカ」や「動物園で展示する動物」に論点を限定させていただきます。ご理解いただけると幸いです。


 

 
 

【謝辞】

本ブログを執筆するにあたり、元・千葉市動物公園職員で、現在は帝京科学大学 アニマルサイエンス学科で動物園の教育的機能の充実などについて研究されている並木美砂子教授にたくさんのご助言・ご意見をいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

 

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この記事への6件のフィードバック

水族館だけではなく、動物園も同じことだと思いますね。
戦後日本の文化とも大きく関係する、日本の水族館と動物園。
70年の歴史を変えるのは簡単なことではないですが、少しずつ、少しずつ、運営側、利用する側の意識が変わっていけばと思っています。
小学校の非常勤特別講師で、動物園を博物館として利用する試みを行っています。
小さなことですが、少しでも…。そんな思いです。

たしかにカルイ問題ではないですね。
水が飛び跳ねるイルカショーや動物ショーなどは水族館、動物園の来客イベントとして重要でしょうし、私も含めて多くのお客さんが喜びますからね。施設を経営していくためには、現状ではやめられない重要なイベントでしょう。

十分な飼育環境が整っていないとか、ストレスなどで激やせ、ボロボロになっている生き物を見せられると「かわいそう」と思います。私が子供の頃は、そんな水族館や動物園があちこちにあったように思えます。
今は、自然の状態に近い環境を作り出したり、生き物の体調管理にかなり気を遣って昔の「見世物小屋」的なところから変わりつつあるのかなと思います。

水族館や動物園で見ること、臭うこと、触ることができる生き物はこちらが期待しない行動をたくさんしてくれるので、それが新たな体験にもなるはずです。見たこともない生き物に出会って驚くこともあるでしょう。愛称で呼んでかわいがったり、突然の死に悲しんだりと、生き物を大事に思う心が育まれることもあるのではないでしょうか。

このような五感を刺激する体験を自分から「わざわざ出向いて」することが、特に子供の精神的な成長に重要かと思います。インターネットや映像からも知識は得られるでしょうが、体験にはかなわないと思います。

生き物の名前や簡単な紹介を掲示するだけでなく、生き物の多様性、今抱えている生物環境の問題なども織り込んだ「体験学習」できる施設として人々が集まれる場所になれば良いのではないでしょうか?

きっと、施設側ではそういうことはとっくに考えているのでしょうけど....

もしもしカメ・レオン さま

コメントありがとうございます!
幼い頃から身近な動物園・水族館。だからこそ、きっかけさえあれば、我々、利用する側も自分事として動物との関わり方を考えやすいのではないかと思います。今回のニュースが意識を変えるきっかけになるといいですね。

>小学校の非常勤特別講師で、動物園を博物館として利用する試みを行っています。
小学校でどんなふうに動物園を博物館として利用しているのか活動内容がとても気になります!!今回お話を伺った帝京大学の並木先生は、まさに動物園を博物館として利用し、野生動物保全につなげられる教育的な方法や活動について研究しています。

>Yutaka様
核心をついたコメントをありがとうございます!
おっしゃる通り、映像ではなく、本物の動物とふれあうことで得られる刺激、育まれることが数多くあると思います。例えば、大きさ、におい、鳴き声、そして愛着。もし、おなじみのゾウやキリンが絶滅に直面していれば、“愛着”を持っている多くの人が「救いたい!いなくならないでほしい!」と感じるのではないでしょうか。


>生き物の名前や簡単な紹介を掲示するだけでなく、生き物の多様性、今抱えている生物環境の問題なども織り込んだ「体験学習」できる施設として人々が集まれる場所になれば良いのではないでしょうか?

すばらしいアイデアありがとうございます。現在の動物園・水族館では名前、住んでいる場所、特徴などを紹介していることが多いと思います。その動物が直面している問題や、生態系でどんな役割を果たしているか、などを本物の動物を見ながら知り、考えることができる「体験学習」が増えればステキですね!単に「かわいい」「かっこいい」では終わらずに、子どもたちが一歩踏み込んで考えるきっかけになると思います。

とはいうものの、動物園・水族館が現状抱えている課題やどうにかしたい仕組みがありそうです。これについて、まもなく科学コミュニケーターの大渕がブログを書きますので、今しばらくお待ちください。

ブッチーさんは、私のことをご存知かと思います。
よろしければ、昨年度まで行っていた内容をまとめた報告書をお見せすることができます。
市町村単位で日本で初めて「生物多様性の保全に関する条例」を制定した町の「生物多様性基本戦略」に沿った1年間の総合学習です。

考えたことがなかったけど、そういう問題があるんですね。
水族館や動物園と言えば、家族や恋人とのコミュニケーションの場として良いという印象です。

ただ、あんまり深く考えると素直に楽しめなくなるし、そういう問題は表面化させにくいものですね・・・。

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