水のはじまりをさぐる旅

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水。
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私たちが生きるのに欠かせない水。
水がどこから地球にやってきたのか、その起源を宇宙に探す研究が進められています。

その主役となるのがこちら!

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イラスト:池下章裕

そう!小惑星探査機「はやぶさ2」です。
2014年に打ち上げられたはやぶさ2は、目的地である小惑星「リュウグウ」に向けて順調に航行をつづけています。

実は、リュウグウのような小惑星が地球に水をもたらした、とする説が有力なのです。でも、黒っぽい石のかたまりである小惑星が水をもたらした、って本当なの?
今回は、名前に「水」の字が入った私、志水が水の起源を探ります!

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1. 地球は「水の惑星」か?
2. リュウグウには水があるの?
3. 実は、私は...

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1. 地球は「水の惑星」か?
地球は、できたころから「水の惑星」だったわけではありません。

約46億年前。
微惑星と呼ばれる小さな天体がぶつかり合い、地球がつくられました。そのころの地球は、岩石さえもどろどろに溶けた「マグマ・オーシャン」とよばれる熱いマグマに覆われていたと考えられています。
そのため、水は水蒸気となって宇宙に蒸発してしまったと予測されています。

では、いつから「水の惑星」になったのでしょう?

そのカギは、地球に含まれる水の量にあります。

ここでクイズ。地球全体に占める水の割合(質量比)はどのくらいでしょうか?
直感で選んでみてください。
① 40%
② 3%
③ 0.1%

参考情報を一つ。
地球の表面に限ると、その面積の71%を海が占めます。
これなら水はたくさんありそうですが...

実は、正解は③!わずか0.1%しかないのです。
海水の重さは、地球全体に比べてわずか0.023%で、その他マントルに含まれる水などを考慮しても0.1%程度なのだそう。(※1)

20160129_shimizu_03.jpg 地球の半径6400km、海の深さ3.7km。

海水は意外と少ないですね。

私も自分で計算してみて驚きました(ぜひやってみてください)。これじゃあ、全然「水の惑星」じゃないじゃん...。

このように、地球を一つの天体としてみると、水の割合はごくわずか。とするならば、地球が冷めた後に「ちょっとだけ」水がもたらされれば、今の水の量になるのでは?というのが、水の起源をめぐる有力な仮説なのです。


 

2. リュウグウには水があるの?
その水をもたらした候補として現在考えられている天体が「彗星(すいせい)」と「小惑星」。水を含む天体が数億年にわたって衝突を繰り返し、海ができた。そんな壮大なストーリーが研究者によって描かれています。
※彗星と小惑星はどちらも太陽の周りをまわる小さな天体です。彗星はおもに氷でできていて、小惑星は岩石でできています。

そして!水をもたらしたと考えられる小惑星の特徴をよく残しているのが、そう!はやぶさ2が目指す小惑星リュウグウなのであります!

ドン!

20160129_shimizu_04.JPG イラスト:池下章裕

あれ...水、ないよね...。


こんな岩だらけの天体に、本当に水が存在するのでしょうか。

実は、リュウグウには「含水鉱物」とよばれる、結晶の中に水を含む岩石が多くふくまれると地上からの観測で予測されています。リュウグウの主要な部分を占める「炭素質コンドライト」という鉱物には1~10%(質量比)の水が含まれ、さらにその内部に氷がある可能性も指摘されているのです。(※2)
※すべての小惑星に含水鉱物が存在するわけではなく、リュウグウのような「C型小惑星」に多く存在します。

はやぶさ2には、水分子の検出を目的とする観測機器「NIRS3」が搭載されています。(※3)リュウグウに当たった太陽光のうち、赤外線の反射光を測定します。水分子に特徴的な波長3マイクロメートルの赤外光の量が減少していれば、水分子があることの証拠になるのです。

20160129_shimizu_05.JPG 近赤外分光計「NIRS3」。写真左から入ってくる光を計測します。

上部のパネルは熱を逃がすラジエーター。提供:JAXA

また、はやぶさ2が持ち帰る物質に含まれる水の同位体比(水素原子全体に占める重水素の割合)を調べ、地球の水の同位体比と比べることで、水の起源が、彗星と小惑星のどちらなのかを知ることも期待されています。
※2014年彗星探査機「ロゼッタ」の観測により、彗星の水の同位体比は地球のそれと大きく異なることが分かっており、小惑星を水の起源とする説の確かさが高まっています。


 

3. 実は、私は...
なんだか書いているうちに、リュウグウのような小惑星こそが地球に水をもたらした気がしてきました。そうそう、リュウグウという名前も「水を想起させる」ことが決め手の一つになったんですよね。竜宮城にちなんだいい名前だなあ...。未来館のお客様からも「時を越えて昔の情報を持ち帰る様子が、浦島太郎のお話にぴったり」と言われましたし...。

あ!自分が名付け親だったんだ!

(うっかり)

↑わざとらしい
20160129_shimizu_06.JPG20160129_shimizu_07.jpg JAXAからいただいたお礼状。プロジェクトマネージャの津田雄一さん、ミッションマネージャの吉川真さんの直筆メッセージ入りです。

2015年8月、JAXAが小惑星1999 JU3のネーミングを募集していましたが、私をふくむ30名ほどの方が提案した「リュウグウ」が採用されたのです(ちゃんと科学コミュニケーターブログにも書いていたんですよ)。

私の思いとしては、まずは無事にリュウグウに着いてほしいです。順調にいけば、2018年7月頃に「リュウグウ」に接近する予定です。加えて、私たち生命の源である「水」の起源を明らかにするという大役も果たしてくれたら、名付け親冥利に尽きますね。

がんばれ!はやぶさ2!
そして、がんばれ!はやぶさ2のプロジェクトチーム!

地球帰還予定は2020年。どんな玉手箱を持って帰ってきてくれるのか、楽しみに待ちましょう!

ちなみに、写真で私の後ろに見えるのは、はやぶさ2の模型。2月7日(日)までの期間限定で未来館の1階に展示されています。特別イベント「世界のはじまりをさぐる」でご覧いただけますので、まだの方はぜひお越しくださいね。

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特別イベント「世界のはじまりをさぐる」
未来館の人気展示やコンテンツを1階の企画展示ゾーンに集め、宇宙、地球、生命分野それぞれの「はじまり」をテーマにして、最新研究成果とともに紹介します。

期間:2016年1月13日(水)~2月7日(日)※休館日除く
場所:日本科学未来館 1階 企画展示ゾーン
参加費:無料
詳細はこちら

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今日の一コマ:何かがおかしい?

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取材協力:(独)情報通信研究機構・鹿島宇宙技術センター 布施哲治先生
写真撮影:谷明洋(科学コミュニケーター)
参考文献:
※1:渡邊誠一郎,はやぶさ2プロジェクトチーム、「火の鳥『はやぶさ』未来編 その1~小惑星探査からの惑星科学~」、日本惑星科学会誌Vol.22、No.1、2013
※2:北里宏平,はやぶさ2NIRS3チーム、「火の鳥『はやぶさ』未来編 その7~NIRS3とC型小惑星の水~」、日本惑星科学会誌Vol.23、No.3、2014
※3:小惑星探査機はやぶさ2の挑戦 第18回:C型小惑星に水分子を求めるNIRS3、日経テクノロジーオンライン
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20141125/390666/

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