自然の薬箱、ハーブ―薬と食品の境界線

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こんにちは!春のように暖かくなったと思えば、また冷え込んだりと、気候の変化が激しいですね。
みなさんは、体調など崩されていませんか?浜口です。

風邪程度なら、薬を飲まずに治すという人もいるかもしれませんね。
タマゴ酒を飲んだり、ハチミツ大根を食べたり、さまざまな民間療法(代替療法)を取り入れている人もいるでしょう。

代替療法の一種である「ハーブ療法」も、できれば薬を飲まずに病気を治したい、という人に人気があります。
私は以前アロマやハーブを取り扱う店で働いていたことがありますが、風邪の人にはエキナセアエルダーフラワーなどのハーブがよく売れました。どちらも古くから西洋で用いられてきたハーブです。
ハーブティーだけでなく、乾燥ハーブの粉末をつめたカプセルや、エキスを濃縮したチンキ剤なども販売されています。
まるで薬のように見えますが、これらはすべて「食品」です。

一方、民間療法で伝統的に使われてきた植物の中には、現在でも薬」として使われているものがたくさんあります。
例えば、ジギタリスという植物。猛毒をもつこの植物の葉には、「強心配糖体(きょうしん・はいとうたい)」と呼ばれる成分が含まれ、現在でも心不全や不整脈の治療に医師の判断のもとで用いられることがあります。
現在市販されているほとんどのジギタリス製剤は、有効成分だけを人工的につくったものですが、かつてはジギタリスの葉(もしくはその抽出物)そのものが、命を救う切り札として医療現場で使われていたこともあったのです。

このように、同じ自然の中にあるものでも、あるものは「薬」として医療現場で広く使われ、あるものは「代替療法」として、見た目は薬のようなものでも「食品」として販売されています。両者の違いは、一体何なのでしょうか?

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1.「食品」のハーブと「薬」の違い

「これは病気の治療に役立つぞ!」と思ったものを、日本で新しく「薬」として製造・販売するためには、専門機関の審査を受け、厚生労働大臣の承認を受ける必要があります。
そのためには、おもにシャーレで育てている細胞や実験動物を使う「非臨床試験(または前臨床試験)」と、病院などで参加者の協力のもと行われる「臨床試験」を行い、膨大なデータをもとに、その成分の安全性と有効性を科学的に証明しなければなりません。

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とくに人に使った時の影響を調べる「臨床試験」は重要です。十分な科学的根拠を示すため、数千人もの被験者の協力を必要とする場合もあります。
大規模な試験になるほど、かかる時間も費用も大きくなります。臨床試験にかかる期間は、近年の実績では4~5年、費用は数十億円に達すると言われています。
どの段階の試験でも、期待した効果が見られなかったり、重大な副作用が多数報告されたりした場合は、開発にどれほどの年月とお金がかかっていようと薬にはなれません。薬として認められるまでの道は、非常に長く、険しいのです。
冒頭で紹介したジギタリスも、科学的な検証により効果と安全性が認められた上で、医療現場で使うことを許されています。

しかし、これではいくらなんでも厳しすぎ...。西洋を中心に長年使われてきたハーブの力を人々の日常的な健康管理に活かせないなんてもったいない!ということで、2007年に厚生労働省は薬の製造販売承認に関わるルールを見直しました。
有効性の根拠として、海外で行った臨床試験データも活用できるようになったのです。これにより、ハーブを薬として販売するためのハードルが少し下がりました。
それ以降、赤ブドウ葉乾燥エキスを使用した、脚のむくみを改善する薬などが新たに承認され、ドラッグストア等で売られています。
薬としてのハーブは、これからもっと身近になっていくことでしょう。

一方、食品として販売されているハーブは、薬のような大規模な非臨床・臨床試験を実施しておらず、その効果や安全性について、外部機関の承認も受けていません。
また、製造工程や品質管理についても、薬のような厳密な規定はなく、その品質はメーカーによってまちまちです。
製品が許容量を超える水銀やヒ素などで汚染されていたり、効果を出すために、医薬品の成分を違法に添加していたりという事件もあります。
サプリメントとして、ハーブを健康づくりに役立てたい場合にも、信頼のできるメーカーから入手することが大切です。


2.「食品」のハーブと副作用

ハーブは自然のものだから、薬と違って身体にやさしく、副作用はないはず...と思う方も多いでしょう。
日本人を対象とした大規模な臨床試験が行われていない以上、「ある」「ない」を断言することは出来ませんが、海外の研究では、いくつかの副作用も報告されています。

例えば、セントジョンズワート。日本では薬としての承認を受けておらず食品扱いですが、海外のいくつかの研究によって軽度~中等度の抑うつ症状に対し、病院で処方される抗うつ剤と同程度の効果が示され、憂鬱な気分に悩む人に支持されているハーブです。
しかし、副作用として胃腸の不調、めまい、錯乱、疲労感、意識低下、口の渇きなどが起こる可能性があることが報告されています。
同様の副作用は病院で処方される抗うつ薬にも見られるので、セントジョンズワートの服用を避ける理由にはならないかもしれませんが、医師の診察なしに手軽に購入できてしまいます。
また、非常に多くの薬と相互作用して、その薬の効果を弱めてしまうことも知られています。
特に、ワルファリン(血液凝固防止薬)テオフィリン(気管支拡張薬)経口避妊薬などを使っている人は注意が必要です。

同じように、ほかのハーブについても、副作用やほかの薬との相互作用の報告があります。使っている薬がある人は、ハーブ療法を試してみる前に、医師や薬剤師に相談しましょう。


3.よりよいセルフメディケーションのために

セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」ということです。
年々医療費が上がり続け、財政を圧迫している日本にとって、セルフメディケーションの推進は喫緊の課題となっています。

セルフメディケーションを進める上で大切なのは、自ら信頼できる情報を集め、その根拠の確かさや、メリット・デメリットを吟味した上で選ぶことです。

「大自然の恵み」「身体にやさしい」「自然治癒力を高める」という表現は確かに魅力的で、多くの人を惹きつけます。ハーブ療法もまた然り。
しかし、ハーブの中にも科学的な研究で効果が示されているものとそうでないものがありますし、自然のものだからと言って副作用がないわけでもないのです。

信頼できる情報を集めるために、例えばこんなサイトもおすすめです。

http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/index.html
「統合医療」情報発信サイト(厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』)

「海外のサイト」で、健康に役立つと言われているさまざまなハーブの科学的根拠や副作用について、海外の研究をまとめたものを日本語で読むことができます。
ハーブ療法以外の代替療法についても、自分がその治療法を試すか、試さないかを判断する上で参考になる情報が紹介されているので、気になる代替療法がある方はぜひ読んでみてください。

また、薬の効果や安全性については、製薬会社のウェブサイトや、その薬の添付文書、インタビューフォーム(おもに専門家向けですが、非臨床・臨床試験の結果が詳しく書かれています)をみたり、医師や薬剤師に質問したりするといいでしょう。

標準的な現代医学と、伝統療法をうまく組み合わせて、皆さんが毎日を健康に過ごせることを願っています。

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