あなたが本当に必要な情報は?
~昨年8月の緊急地震速報の誤報をふり返って~

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こんにちは! 科学コミュニケーターの坪井です。

昨年12月13日、気象庁から「緊急地震速報の技術的な改善(IPF法)等について」という発表がありました。発表には、8月1日におきた緊急地震速報の誤報に対しての対処が完了したと書かれています。

皆さんは、この誤報を覚えていますでしょうか?

 

今回の対処で、地震学的にありえない震度の速報は流れないようにはなりましたが、「これで完璧、全く誤報なし!」という訳ではありません。

不確定要素のある緊急地震速報をどう利用すれば良いのか、一緒に考えてみましょう。

 

20170111b_tsuboi_01.JPG未来館の5F常設展示「100億人でサバイバル」にある高感度地震観測網(Hi-net)の展示
全国で800か所ほどある地震計のデータが緊急地震速報に利用されます。

 

 

◆ 緊急地震速報には2種類ある

緊急地震速報と一口にいっても、実は2種類あります。①一般向けの「警報」と②高度利用者向けの「予報」です。

昨年8月の誤報の時、自分のスマホが鳴った人もいれば、鳴らなかった人もいたはずです。私がいた図書館では全館に自動アナウンスが流れましたが、知人から聞いた話によるとNHKでは放送されなかったようです。

これらは、どちらの情報を使っているかの違いによるものです。

 


【一般向けの「警報」】

<発表条件>

 ・2か所以上の地震計で揺れを観測
 ・最大震度5弱以上と予想

<特徴>

 ・揺れを観測してから5~10秒で発表
 ・発表内容は、地震が発生した場所や、震度4以上の揺れが予想される地域名称

 

【高度利用者向けの「予報」】

<発表条件>

 ・1か所の地震計で揺れを観測
 ・最大震度が3以上と予想されるなど一定の基準を超える地震が発生

<特徴>

 ・揺れを観測してから2~3秒で発表
 ・発表内容は、地震が発生した場所や、震度4以上の揺れが予想される地域名称に加えて、予測震度と大きな揺れ(主要動)の到達予測時間


 
予報は地震発生後2~3秒で情報が出ます。速いです。
そのため、鉄道や電力会社、工場など、機器を安全に止めるなどの緊急対応をとる必要がある事業者には、とても役立つ情報です。

しかし、欠点もあります。たった1か所の地震計のデータに基づいて情報を出すため、誤報となるリスクは2か所で観測する場合よりも高くなってしまいます。

 

一方で、警報は、地震発生時から5~10秒後と予報に比べて、情報が出るのが遅くなります。その分、2か所以上の地震計で揺れを観測してから情報を出すので、誤報はかなり避けられます。

 

どちらの情報にもメリットとデメリットがあるのです。

 

 

◆ 誤報の原因と対策

昨年8月の誤報の原因は、地震以外の揺れ(ノイズ)を1か所の観測点で拾ってしまったことでした。実際には地震が発生していないにも関わらず、システムがノイズを地震と勘違いし、広域に震度7を予測する緊急地震速報(予報)が発表されました。この後、2か所目の揺れが続けて観測されかったため、「これは地震ではない」と判断され、15秒後にキャンセル報が出ています。

 

この出来事を受けて、気象庁は地震学的にありえない予測震度の情報は出さないよう対策をしました。

しかし、これで予報の誤報が全くなくなるわけではありません。地震学的にありえる予測震度のノイズを拾った場合は、誤報を出してしまう可能性はあります。こうしたノイズは、たとえば地震計の近くに雷が落ちたときなどに発生が考えられます。

 

 

◆ 多くの情報が手に入る現代に生きる私たち

本来、「予報」は、先ほど述べたような高度利用者向けの情報です。しかし、私たちが手軽に入手できるスマホ向けのアプリには、高度利用者向け情報を使っているものもあります。

 
入手する情報を選べる。だからこそ私たちは、自分が本当に必要な情報を、主体的に選ぶことが大切なのです。

 

「誤報のリスクが高くても、少しでも早く情報を知りたい」
「数秒くらい遅れても、確実な情報が欲しい」

 

あなたはどちらの情報が欲しいですか?

 

災害への備えとして、水や食料を備蓄したり、避難場所を確認したりするのに加えて、自分が災害時に必要な情報は何かを考えること、そして、それを入手する手段を確保すること。

それも、大切な防災対策なのではないでしょうか。

 

▽ 参考サイト
緊急地震速報とは(気象庁HP)
しくみなどの説明のほか、導入事例なども紹介されています。

 

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この記事への2件のフィードバック

こんばんは、初めまして(*^_^*)
予報などがあるからと慢心せずに、常に地震や災害にあったらこうしようと、ああしようと普段からの心がけが大切なんでしょうね。
地震や災害に対して対処しなければならない施設はなおさらのこと、
対処に対して訓練や想定をしているべきで、緊急地震速報がでたらこうする、なんてことはむしろ危険だと思います。
ただ、今回の福島第一原発や他の原発もそうでしょうけど非常時に使うべき能力があるにもかかわらず一度も訓練したことがなかったので使うことができなかったなんてのは論外です。
自衛隊のように常に状況を想定した訓練をするべきだと思います。
また、民間人であってもそのような想定を心に持つべきだと思います。

荻谷知貴さま

初めまして(^^) コメントありがとうございます。

> 予報などがあるからと慢心せずに、常に地震や災害にあったらこうしようと、ああしようと普段からの心がけが大切なんでしょうね。

本当にその通りだと思います。予報といえども、地震波が到達するまでに、十分な時間があるわけではありません。緊急地震「速報」なんですよね。
いかに日頃から具体的に・事細かに想像できるか。そして、想像したときに不安だったこと・わからないことの解決法を見つけたか、実行したか、訓練したか…。
守りたいものを守るために、私たちが今できることは思った以上に多いのかも知れませんね。

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