タコより怖いヤツがいた!? 別冊aniani「進撃の○○」

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長らくお待たせいたしました!
別冊aniani第二弾は、前作「進撃のタコ」からの続編!
生物系科学コミュニケーター達が繰り広げるめくるめく妄想トークの世界をどうぞお楽しみください。

 

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 ★登場人物紹介★
ふくい(福井智一):アフリカ帰りの科学ヲタク。かつてはハエの研究をしたり、サバンナで動物と戯れたりしていた。趣味はブラジリアン柔術で得意技は腕ひしぎ十字固め。
あきこ(髙橋明子):南の方の無人島でサルを追いかけていた。好物はパサパサのいよかん。趣味は物件の間取りを眺めること。
くまこ(熊谷香菜子):海に潜ってウミウシの研究をしていた。が、いまだに顔を水につける瞬間が怖い元カナヅチ。

 ☆特別出演☆
ふくいさんのつぶやきをリークした人:いしだ(石田茉利奈)

 

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 ~前作のあらすじ~
深海には魚の形みたいになったウミウシがいるらしい。もしかしたら数億年後の海は、魚に代わってウミウシ達が泳ぎ回る世界かも。それなら、人類はきっとタコに取って代わられ、陸上はタコの文明世界になってしまうだろう。そうに違いない!という、くまこ他2名による妄想トーク。詳しくはこちらから。
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話は、前作公開直後へとさかのぼる。
執筆を終えてほっとしていたくまこの元に、ある噂が飛び込んできた。

 

 

「ブログを読んだ"ふくいさん"が、『タコには文明は築けない』って言うてはりましたよ」

な、なんだって...!?

これは直撃して、真相を究明するしかない。くまこは"ふくいさん"の元へと向かった。

 

■タコに足りないもの

くまこ:聞きましたよ、ふくいさん!『タコには文明は築けない』って!どういうことですか。説明して下さい!

ふくい:あ、あぁ~。

くまこ:だって8本の足を自由自在に使いこなし、目には盲点がなく、心臓は3つあるようなもので、学習能力も繁殖力も高い。人類を滅亡させ文明を築くなら、タコでしょう!?

ふくい:でも、タコは寿命が短いからね~。

くまこ:じゅ、寿命!!(がーん!!)

ふくい:寿命が短いし、親子で暮らすことがないから、タコでは世代を超えた情報伝達が起こらない。言語があれば伝えられることもあるかもしれないけど、持ってなさそうだしね。

あきこ:そうだね、言語がないと難しいよね。

くまこ:なっ、一番文明に近そうな動物であるサルを研究してたあきこさんまで!

あきこ:言語がなければ、同種の動きを見て情報を得るしかないですからね。サルの例だけど、「食べ物についている土を水で落とす」サルがいて、それを他のサルが見る。でもそこで「土を落とすために洗っているんだ」という意図が理解できないから、食べ物と水を目の前にして試行錯誤するだけ。結局同じことができるやつは一部のみなんですよ。

くまこ:サルですら一部だけなのか。

あきこ:あと、それをすることによる得がないと進化は起こらない。相手を察するタコとか、徒党を組んで狩りをするタコとか、そのふるまいに利益がないと......

くまこ:じゃあ、「人間がタコの敵だ!みんなで倒そう!」ってなったら、タコにも文明ができる?

ふくい:うーん、タコからしたら敵は人間っていうかタコ壺じゃない?

あきこ:そうだね、敵意を持つならタコ壺に対してだね。それを設置して漁をしているのが人間だとはわからないよ。

くまこ:でもでも、もしタコが文字を持ったなら!

あきこ:タコ壺にダイイングメッセージが残るのかな。でも人間が回収しちゃうよ?

くまこ:いや、うまくタコ壺漁から逃げ延びたタコが海に帰って自伝を書いて出版すれば、黒幕は人間だっていうことが知れ渡って!

 

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ふくい
:いろいろすごいね......

 

■どうしたら文明ができるかな

くまこ:そうそう、文明ってなんだろうと思ってまずはWikipediaを見てみたんだけど、この中の「効果的な食料生産」「大きな人口」「職業と階級の分化」あたりは、社会性(情報をやりとりしたり、協力したりしながら、群れで生活する性質)の生物はすでにやっているよね。ハダカデバネズミとかポテンシャル持ってるんじゃない?陸上は人間、地下はハダカデバネズミの文明が広がる地球......どう?

あきこ:そうなったら地下鉄がやばいね。

 

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ふくい:うーん、頭の良さは体重あたりの脳の大きさで決まるけど、ただでさえ燃費の悪い小型哺乳類にエネルギー消費の大きい巨大な脳をつけたら、四六時中食べ続けないと飢え死にしちゃうんじゃないかな。そうなると文明を作るヒマがないかも。

くまこ:ちぇっ、なかなか文明ができないなあ。それって、文明がなくても他の動物はやっていけてるっていうことなのかな。人間は文明がないと生きていけなかったの?

あきこ:人間の社会性は、サバンナに出てきたときにみんなで協力しないと生きていけない状況にさらされて、生まれたんだよね。

ふくい:文明がないと生きていけないっていうより、何かが発達したことによっておまけの効果が出てきたのが最初じゃないかな

あきこ:あと、人間には文明を生み出すための前適応があった。

くまこ前適応(ぜんてきおう)?

あきこ「それができるために必要な条件」って言えばいいかな。人間にとって二足歩行を始めたことが文明を築くに至るための前適応。二足歩行になったことで、脳を大きくできたし、咽頭の位置が変わって複雑な音声を発せられるようになった。

くまこ:なるほど。じゃあ、他の動物もおまけの効果でうっかり文明築いちゃってもいいんじゃない?

ふくい:そうだねぇ。文明を作るには、人口が多くて、集団内に暇人を持つ余裕がある必要があるね。いつも暇人が文化やテクノロジーを作るものだから。

あきこ:"アリのコロニーに働かないアリがいると組織が長持ちする"っていう研究(※1)を思い出すね。

くまこ:アリか!アリはどうですか、ふくいさん!

ふくい:たしかに、アリに知能があったら人間は太刀打ちできないねぇ。

 

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あきこ:でも、アリに知能があったらあの集団は成り立たないんじゃない?

ふくい:いや、アリの集団は血縁関係だから、互いに戦う必要はないですよ。

くまこ:そうか、血縁があれば「自分」に利益がなくても「集団全体」に利益があれば、その方向に進化が進むから。

ふくい:あとは、なんらかの跳躍的な進化、つまり、昆虫がサナギを経た変態を得たときや、両生類が爬虫類に進化して陸上に完全適応したときと同じくらいの身体構造の変化で、文明に至る前適応を得ることができれば。
......コンピューターがサイズは小さくなっても計算能力は上がっているから、アリサイズの脳でも計算能力を上げる方法がないとは限らない。

くまこアリは個体数がいるから、つないじゃえばいいんじゃない?

あきこ:つないでも、情報伝達のバリエーションが使える化学物質の数に限られちゃうから厳しいんじゃない?

くまこ:脳神経だって電気信号でやりとりしてあれだけの活動をしているんだから、アリ自体が神経細胞のように振る舞ってネットワークを形成し、アリでできた"アリ脳"を作ったならば......

ふくい:あっ、サスライアリは働きアリ同士が組み合って橋とか天蓋とかの構造物を作るんだけど、もしも、このときにアリの脳と脳が直接くっついちゃったりすると......

 

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あきこ:アリ脳が巣の中にあって、働きアリは脳担当のところに行き、ちょんちょんっと触って情報をもらってくる......

くまこ:そう!まるで、インターネットから情報を得て行動している私たち人間のように!

ふくい:サスライアリでアリ脳作られたら、もうだめですね。1つのコロニーで、100万~1000万匹はいるから。アフリカにいた時に実際に見たんですけど、アリの行列っていうレベルじゃないんです。アリの川です。その両脇を兵隊アリが固めている。面白いなーと思って見ていると、気づかないうちにズボンの中にアリが入ってきていて咬まれました。痛かったなぁ。毒がないのだけが救いですよ。

あきこ:毒があったら大変だね。

くまこ:アリ脳がそこに気づいたらやばいですね。まず、ヤドクガエルをやっつけて毒を手に入れ、攻撃をしかけてくる!

あきこ毒を持つ進化を起こすことはできないけれど、行動を変えて毒を得ることは、アリ脳はできる

ふくい:このアリに適応したナメクジがいるんですよ。アリに咬まれると、大量に粘液を出して咬みにくくするんです。でも、アリがその上をいくんですよね。ナメクジに砂をかけて、ねばねばを封じ込めるんです。

くまこ:アリはサイズも小さいし、パソコンの中とか簡単に入り込んで壊せる。

あきこ:電話線やケーブルもかみ切られて、人間のネットワークが寸断されるかも。

ふくい:人間は昆虫にだけ効く毒を殺虫剤に使うけど、アリに同じ戦法を使われたら一巻の終わりだよね。つまり人間に効くけどアリに効かない化学兵器を使われた日には......


くまこ「進撃のアリ」だったか。

ふくいあきこアリですね。

 

くまこ:アリ脳を持ったアリを倒すには人類はどうしたらいいんだろう......

ふくい:うーん、兵隊アリは無我の特攻隊だからなぁ......

あきこ:兵隊アリを説得するんですかねぇ。「おまえそれでいいのか?命を大切にしろよ」って。

くまこ:あっ、アリ脳にアクセスして、自我を植え付ける!?

あきこ:そうすれば、アリ脳に接触した兵隊アリがどんどん混乱していくかも!「俺、まだ死にたくない」

ふくい:いいですねぇ!

 

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――こうして今日も生物系科学コミュニケーターの夜は更けていくのであった。

 

★完★

 

 

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参考
※1 働かないアリはコロニーの長期的存続に必須であることが判明(PDF)
―北海道大学プレスリリース 2016年2月17日
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別冊aniani「進撃のタコ」

 

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