ニュージーランドは2050年までに外来種を根絶します

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こんにちは!科学コミュニケーターの石田です。

なかなかショッキングなタイトルですね。

少し前になりますが、お休みを頂いて夏のニュージーランドを楽しんできました!ニュージーランドの自然に魅せられて、住み着きたい欲がうずうずしています。 現地では山や湖、星空、氷河と自然を楽しんできたのですが(ニュージーランドの湖や氷河に興味がある方はこちらのブログへ!→ 旅で見つけた"なぜ?ターコイズブルーの湖

一番印象に残ったのは現地ガイドさんとのトレッキング!

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森もすばらしかったのですが、現地ガイドさんからニュージーランドの生物多様性についてお話を聞くのがめちゃくちゃおもしろかったのです。
なので、そのお話をブログにしてみました。

早速ですがニュージーランドと聞いてみなさんは何をイメージしますか?
...羊?ロードオブザリング?
私はキウイです。

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This file was made by Malene Thyssen

キウイといえば飛べない鳥。ニュージーランドは飛べない鳥が多いことで有名です。

なぜ飛べない鳥が多いのでしょうか。

それはニュージーランドの歴史が関係しています。ニュージーランドは恐竜の天下であった8000万年前に大陸から離れました。この時代、ほ乳類は細々と暮らしておりニュージーランドにいたほ乳類はコウモリとクジラのみだったようです。そしてその後6500万年前に恐竜が絶滅し、ついにほ乳類繁栄の時代となります。そのときすでに大陸から離れていたニュージーランドにほ乳類が渡ることはありませんでした。 また、ニュージーランドは長い年月をかけてほとんど沈んでしまった歴史があるのではないかと言われています。ほとんど沈んでしまったら、もしほ乳類がいたとしてもいなくなってしまいますよね。

ほ乳類つまり天敵のいない安全な島ニュージーランド。飛んで渡ることのできた鳥たちが安全を求めてニュージーランドに集まりました。渡ってしまえばもう敵はいません。ごはんもたくさんあります。

はっ!もう飛ぶ必要ないやん!

ということで安心しきって丸々と太り、飛ぶことをやめてしまった鳥たちの楽園となったわけです。

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Wikipedia Mnolf - Photo taken on Codfish Island (Whenua Hou), New Zealand
(飛べないオウムカカポの写真。丸々としててかわいい...。2014年時点でわずか126羽。)

そう、でもこれは過去の話。飛べない鳥の楽園だったのです。 キウイやカカポ、絶滅はしていませんがどんどん数を減らしています。どうしてでしょう。

人間がほ乳類を連れてきてしまったからです。

ニュージーランドには8世紀頃に東ポリネシア系のマオリ人が住み着きます。マオリ人は飛べない巨大な鳥・モアを狩りすぎて絶滅に追いやってしまいましたが、ほ乳類を連れてくることはしませんでした。 時は流れ、1769年イギリス人探検家のジェームズ・クックがニュージーランドに到達します。それを機にヨーロッパから多くの人々がニュージーランドにやってくるようになりますが、その船に紛れてネズミがニュージーランドに入ってきました。 また、ヨーロッパの人たちは狩猟目的でウサギを連れてきました。ウサギは繁殖能力が高いことで知られる動物。瞬く間にニュージーランドはウサギだらけになります。 ウサギが増えすぎた!ということでウサギ退治用に今度はイタチを連れてきました。

また、イタチ以外にもポッサムもオーストラリアから連れてきました。ポッサムは毛の中が空洞になっています。毛の中が空洞になっている動物はシロクマ、アルパカ、ポッサムのみ。そう、ポッサムの毛はふかふかであったかく人間の衣服用に持ち込まれたのです。

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ポッサム。Wikipediaより。

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シロクマの毛の電子顕微鏡写真(科学コミュニケーター大渕さん撮影)
ストローみたいな構造になっていますね!

ネズミは鳥の卵、イタチは卵や雛を食べてしまいます。

ポッサムは雛や卵、植物の芽や実を食べます。オーストラリアと違いニュージーランドにはポッサムの天敵がいないことやニュージーランドの森にはポッサムの餌となる植物が多いことからポッサムは葉っぱを食べ尽くして森を枯らしてしまい ます。ニュージーランドにいるポッサムの数は3000万匹。3000万匹のポッサムが一晩で食べる葉っぱの量は2万1000トンにものぼります。森が枯れれば、そこにすむ動物すべてが影響を受けてしまいます。例えば、雨が直接地面に当たることで地面が固くなります。キウイは地面の中のミミズや昆虫を食べているので、キウイは餌を取れなくなってしまいます。 このように、外来のほ乳類の存在が飛べない鳥たちの数をみるみる減少させてしまったのです。(政府の発表によると毎年約2500万羽の鳥が殺されているそうです)

そこで、ニュージーランド政府は2016年7月、「2050年までに外来種 を根絶します。」と宣言しました。(ここで指す外来種はネズミ、イタチ、ポッサム。)

今後、政府主導のPredetor Free New Zealand Limitedという企業を立ち上げ、外来種駆除プログラムに4年間で約22億円をかけるそうです。 中間目標として2025年までにニュージーランドの離島の外来種をゼロにすることも掲げています。

では具体的にどのような方法を取っているのでしょうか。

現在は

① イタチやポッサムを捕まえる罠を森中にはりめぐらせる

② ネズミやポッサムを殺す薬剤の 「1080(殺鼠剤:モノフルオロ酢酸ナトリウム)」が入った餌をヘリコプターで散布

という手法を取っています。 特に②の方法が効果的なようで、いくつかの離島ではほ乳類をゼロにすることに成功しています。

1080とは

有毒化合物。ニュージーランドで散布する1080含有餌は、甘くするためのブドウ糖と固めやすくする増粘剤入りのシリアルにごく少量(0.15%)の1080をまぜた物です。鳥が誤って食べないように、鳥が嫌がるシナモンの香りと青色着色料をつけています。

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飼い犬への注意喚起の看板。犬には特に高い毒性を示すことがわかっている。


そんなに効果的な1080含有餌をまいて動物や昆虫、土壌や植物、水は大丈夫 なの...?と私は素直に思ってしまいました。

1080についてニュージーランドは以下のような報告をしています。

・もちろん家畜などのほかのほ乳類も殺す能力はあるが、農家が家畜を散布地域に行かないよう管理しているので問題ない。

・餌から半径20cm以内の昆虫は一時的に減るが、6日後には元通りになることが確認された。

・1080は土壌や植物に蓄積しない 。

・1080の安全基準値の上限である2.0ppb(10億分の2)含有の水でも6万リットル飲まなければ致死量とならない。(体重60kgの人で換算)

しかし、1080の影響は未知数で生態系の思わぬところに影響を与えるのではないかと懸念している研究者もいます。

また、現在の方法では 2050年に外来種をゼロにすることは難しいため、外来種の遺伝子操作など新たな外来種根絶方法を開発することもニュージーランドは掲げています。(もし遺伝子操作された種が近縁種と交配してしまった場合、改変された遺伝子が伝播する可能性があります。また、改変された遺伝子がさらに変異していく可能性もあります。)

人間がほ乳類を入れちゃったからなくそう!!よしゼロに戻せた、元通り!めでたしめでたし!!

という簡単は話ではなさそうですね。


外来種が入ったことにより生態系は鳥の楽園だった時代から変化しています。外来種がいなくなったからと言って完全に生態系が元に戻るわけではないのです。また上で述べた通り、外来種がいなくなる影響だけでなく1080や遺伝子操作などの影響も少なからず生態系には残るのです。(※遺伝子操作は実施が検討されているだけで、まだ実施はされていません。)しかし、外来種を減らさなければキウイをはじめとしたニュージーランドの固有種は絶滅してしまいます。

絶滅のきっかけを作ったのも人間、自分たちの過ちの尻を拭くのも人間。でも、尻を拭くのも一筋縄ではいかない。なぜなら、生物と生物の関係はとても複雑で私たち人間が把握できるようなものではないからです。

ニュージーランドが行っている行動が正しいものなのか。それはわかりません。ただ、ニュージーランド政府は本気で2050年までに外来種を根絶しようとしています。生物多様性に人間が様々な手を加えた結果を目で見られる珍しいケースとなることは間違いありません。

100点の正解を見つけられなくても、一歩一歩考えて行動していかなければならないのが生物多様性の問題。みなさんもニュージーランドの行く末に注目しつつ、生物多様性について考えてみてはいかがでしょうか。

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この記事への1件のフィードバック

彼らは自分たち人間がもっとも有害な外来種であるという認識があるのだろうか?あ!排除対象は哺乳類でしたね。これでホモ・サピエンスも含め排除されるということで、めでたしめでたし!

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