田んぼは何を育てるところ?
 ──「ビューティフル・ライス」の舞台①

このエントリーをはてなブックマークに追加


アジアには、おもしろい田んぼがあるんです。



米作りを切り口に、「持続可能な食」についてさぐる「ビューティフル・ライス」展。

アジア各地の農村でフィールドワークに取り組んできた佐藤洋一郎先生(人間文化研究機構 理事)に、現在も残る昔ながらの農村の文化や生活をうかがい、展示で表現しました。


全体の概要は、こちら。
http://blog.miraikan.jst.go.jp/event/20171121post-775.html



では実際に、アジアにはどんな田んぼがあるのでしょうか?

佐藤先生にお写真をお借りし、みなさんと一緒にのぞいてみたいと思います。


アジアの田んぼを見に行く前に。

まず、見慣れた「田んぼ」をイメージしてください。


だいたい、こんな感じでしょうか。


20171215_tani01.jpg

平らな土地に水がためられ、稲が整然と揃っています。



20171215_tani11.jpgあるいは、斜面の棚田も日本の原風景のひとつです。



では、アジアにはどんな風に違う田んぼがあるのでしょうか?

今回紹介するのは、インドネシアのスラウェシ島の田んぼ。


20171215_tani02.jpg

提供:佐藤洋一郎氏

真ん中に、丸があります。



20171215_tani3.jpg

提供:佐藤雅志氏(東北大学)

どうやら、田んぼ1枚ごとにあるようです。

これは、何でしょう?



ヒントは、何かを育てるところ。



水があって育ちそうなのは、

...

...

...

そう、魚です。



この丸の内側は、周りよりも深くなった「池」。

魚の逃げ場にしたり、水を抜いてまとめて捕獲したりすることができます。

(よく見ると、鳥から守るために竹を沈めてあるのも分かります)




人間が生きていくためには、お米の炭水化物だけでなく、タンパク質も必要です。

佐藤先生の言葉を借りれば、雑食動物である人間は「何を食べても良い」のではなく、「いろいろなものを食べなくてはならない」。


田んぼの中の池は、タンパク質を炭水化物と同時に生産するための工夫だったのです。

魚だけでなく、カエルや鳥、あるいはイナゴなどの虫を食糧とするのも同じ考え方でしょう。



そして、田んぼで動物を捕るのは、農民たちにとって、大きな楽しみでもあったようです。



20171215_tani04.jpg

展示でも、田んぼで魚と米を収穫しています。

魚取り用の籠の実物と合わせてお楽しみください。



現代の日本で、こうした光景を見ることは少なくなりました。

タンパク質の入手は、普通に考えれば、流通している肉や魚を買う方が簡単です。

佐藤先生によると、文化や技術の継承が難しく「田んぼで魚や鳥が捕れても、おいしく料理できない」ということもあるようです。



水田で魚を捕る、というのは「自給自足」が原則だった時代や場所だからこそ、成立したのかもしれません。

でも、「必要なものをつくって、食べる」ことを考えると、田んぼの中に池をつくってしまうというのは、「何だか理にかなっているような気もするし、おもしろいなぁ」と思うのです。



【余談】

現代の日本にも、長野県佐久市の水田でのコイ養殖や、フナズシが名物の琵琶湖周辺での「魚のゆりかご水田米」という取り組みなどがあります。ただこれらは、「タンパク質を得る手段」というよりも、「文化の保全」という意味合いが強そうです。ちなみに、筆者がこの夏に佐久で食べたコイは、とてもおいしかったです

20171215_tani05.jpg

(参考写真)

----

【参考文献、サイト】

ユーラシア農耕史〈5〉農耕の変遷と環境問題 佐藤 洋一郎 (監修),‎ 鞍田 崇 (編集)
http://amzn.asia/aTrqy9A

田んぼの不思議 (自然と生きる)  安室 知
http://amzn.asia/gxgK2Di

佐久鯉ガイド
http://www.sakucci.or.jp/koipj/history/suidenyouri.htm

魚のゆりかご水田
http://www.pref.shiga.lg.jp/g/noson/fish-cradle/



【ビューティフル・ライス展】

特別展示「ビューティフル・ライス~1000年おいしく食べられますように」
開催日時:2017年11月11日(土)~2018年1月8日(月・祝)
開催場所:日本科学未来館 1階 コミュニケーションロビー
参加費:無料(ただし、常設展・企画展への入場には別途料金が必要です)
監修:佐藤洋一郎氏(人間文化研究機構理事)
http://www.miraikan.jst.go.jp/event/1707050921574.html
会期後は巡回展貸出を予定しております。詳しくは、お問い合わせください。



※コメントをする際は「ブログへのコメント投稿について」をご覧ください

※「名前」は、ハンドルネームでも構いません

コメントを残す