JCMTを知ってるかい?

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皆さん、初めまして。昨年の4月から未来館で科学コミュニケーターをしています、
志野 渚(しの なぎさ)と申します。
未来館に来るまでは星の研究をしていました。また小さい時から星を見ることが大好きでした。なので、今回は望遠鏡愛(星愛)全開で、私が出会ってしまった電波望遠鏡をご紹介したいと思います。

すでに森脇がブログで紹介しているように昨年12月に科学コミュニケーター3人でハワイ島へ行ってきました。目的はもちろん、「すばる望遠鏡の見学」。すばる望遠鏡は未来館でも模型を展示している世界最大級の光学望遠鏡です。本物に出会って、その大きさに私は大興奮してしまいました(森脇のブログの写真参照)。

ですがすばる望遠鏡のある、その空気の薄いマウナケア山頂で私は知ってしまった、そう出会ってしまったのです。JCMTという電波望遠鏡に!!!

20180202_shino_01.jpg       (JCMTの後ろ側 提供:JCMT/EAO)         

皆さん、JCMTをご存知ですか?私は恥ずかしながら知らなかったのです。皆さんご存知の通り(え?知らないって?そんなわけないですよね?)、ハワイ島のマウナケア山頂(標高約4200m)にはすばる望遠鏡だけでなく、各国の望遠鏡があります。そのメンバーにJCMTも含まれているのです。

20180202_shino_02.jpg (マウナケア山頂の望遠鏡群 撮影:志野)

1987年から運用されているJCMTJames Clerk Maxwell Telescope)は口径が15mの電波望遠鏡です。口径の大きさのイメージとしてはバスケットボールコートくらいの大きさです。また形は衛星放送のパラボラアンテナと同じ形をしています。でも、なぜこんなに高い山のてっぺんにパラボラアンテナをのせたのでしょうか?日本には国立天文台野辺山(長野県)の45m電波望遠鏡など大きな電波望遠鏡があります。それを使えばいいじゃん!と思われるかもしれませんが、皆さん、甘い!!甘すぎる!!

パラボラアンテナは大きければ大きいほど、弱い電波をとらえることができるようになれます。ですが、電波望遠鏡の性質はパラボラアンテナの大きさだけで決まるわけではありません。JCMTにはとても周波数の高い電波を受信できるという特徴があります。周波数が高い(つまり波長が短い)電波であるほど、解像度が高く、細かいものを見ることができるのです。しかもJCMTはアンテナ面のなめらかさと正確さ(鏡面精度)が野辺山の電波望遠鏡を上回るのです!さらに、4200mという高い山の山頂にあるため観測の天敵である水蒸気が少ないので観測条件に適しているのです!(なんて素敵なんでしょう☆)

さて、さっきから電波望遠鏡だ、JCMTだと言っていますがすばる望遠鏡のような光学望遠鏡と一体何が違うの?と思ってないですか?(そう思った方、いい質問ですねぇ。)すばる望遠鏡などの光学望遠鏡は天体からの「光(可視光)」をとらえますが、電波望遠鏡は、天体から放射される「電波」をキャッチする望遠鏡です。JCMTのような電波望遠鏡の凄いところは、「私たちの目(可視光)では見えないものが見える」というところです。どういうことかというと、宇宙空間には分子雲という低温のガスの塊が漂っています(イメージは雲かな)。実はその分子雲の中ではたくさんの天文現象が起こっているのですが、分子雲自身が邪魔になって中で何が起きているのか光学望遠鏡では見ることができません。ところが、電波はその分子雲をすり抜けることができるのです。

20180202_shino_03.jpg

(分子雲を通り抜ける電波と通り抜けられない可視光)

よって私たちの目では見えないところは電波望遠鏡を使って観測をして、宇宙の謎に日々迫っているわけです。

そしてJCMTは他の電波望遠鏡とは違った部分があります。それはパラボラアンテナの上に布が掛かっているところです。外から見てみるとよくわかりますよね。なぜ掛かっているのかというと皆さんが想像している通り、風や砂からパラボラアンテナを守るためです。そしてもう一つの天敵、鳥からも・・・(鳥ってパラボラアンテナの中に巣を作っちゃうんですよね。毎日ほぼ同じ時間帯に入ってくる鳥によるノイズは"電波望遠鏡あるある"の1つです)。建物の中に入り、きちんと布まで掛けられているなんて!こんな箱入り娘の電波望遠鏡はなかなかありません!日本にある電波望遠鏡はほとんど吹きっさらしの中に、むき出しの状態で立っています。しかもJCMTは布カバーを掛けたまま観測を行うのです!なので、観測中も風や砂、そして天敵の邪魔もほとんど入りません。カバーを掛けていたら何にもみえないだろうって?いやいや、電波望遠鏡は布なんかへっちゃらなのです!

20180202_shino_04.jpg

(左:アンテナに布が掛かっている状態 右:内側のアンテナ 提供:JCMT/EAO)

さて、このハワイにある箱入り娘の電波望遠鏡の運営の一員に日本が入っています。「えっ?ハワイにあるのに?」と思いましたか?そうなんです、実は現在JCMTを運営しているのは東アジア中核天文台連合 (EACOA)*という連合でそこに日本も所属しているのです。EACOAJCMTを運営し始めたのは2015年の2月から。日本はJCMTで観測できる時間を確保できるようになりました。JCMTでわかった宇宙の謎は沢山あるのです!

最近ではブラックホールについての研究結果が発表されました。その内容は「天の川銀河中心部で新たに2つの野良ブラックホールを発見」です。野良ブラックホールってなんでしょう?それは、次回たっぷりご紹介します!

そんなワクワクするような宇宙の謎をどんどんと解き明かしてきたJCMT。これからも宇宙の謎に迫っていってくれることでしょう。

以後お見知りおきを!

謝辞
最後に本記事を執筆するにあたり、JCMTの紹介、写真と情報提供をしてくださった水野いづみさん、ツアーをしてくださったSteven Mairsさん、そして現地のスタッフの皆さんにこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
The author would like to thank the following people for their invaluable contribution to this article: Izumi Mizuno for introducing members of JCMT along with providing photos and technical information, Steven Mairs for the guided tour of the facility, and all the staff on-site for their cooperation.

*東アジア中核天文台連合
 英語名:East Asia Core Observatories Association (EACOA)
 東アジア各地域を代表する中国科学院国家天文台 、自然科学研究機構国立天文台 、韓国天文宇宙科学研究所 、台湾中央研究院天文及天文物理研究所の4機関を構成員とする組織

【関連リンク】
 JCMTのHP
 https://www.eaobservatory.org/jcmt/