苦手克服なるか?! ~なめこの味噌汁が飲めるようになるまで~

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こんにちは、味噌汁大好きな科学コミュニケーター田代です。

味噌汁は大好きなのですが、なめこの味噌汁だけはダメなんです!
あのぬるっとした口当たりからのプーンとくる生臭いような泥臭いような独特の匂い!無理!

「えー、おいしいのにー!」
「あのくささがたまんないのに!」
そう言われ続けて二十年余。

なんかくやしい。

そして味噌汁好きとしては、どうしても美味しく食べてみたい!
せっかく未来館で働いているというのもあるし、これまであらゆる苦手な食べ物を克服してきたこともあるし、じゃあということで「なめこの味噌汁」という私にとっての最後の砦に挑んでみました。

どうアプローチしようかと、匂いを感じる仕組みについて調べていたら、次のような記述がありました。

「鼻の中にある嗅覚受容体(匂いセンサー)でキャッチした匂いの信号は、嗅球、嗅上皮と伝わり脳の大脳新皮質にある前頭前野と直結している。しかし嗅上皮は、大脳辺縁系につながる経路も持っている。大脳辺縁系とは記憶や情動をつかさどる部分である。」
(要約)

大脳辺縁系とつながっている部分というのがポイントです。
これが、匂いによって私たちの昔の記憶や体験が呼び起こされる「プルースト効果」(注)が起こる要因として考えられている所以です。
大脳辺縁系にある海馬は記憶を、扁桃体は記憶と感情を司ると言われています。
つまり、匂いは私たちの過去の出来事やイメージと繋がりやすいということです。

なるほどー、ということは私のなめこ嫌いも、昔の嫌な記憶と結びついて悪いイメージになってしまっているのかもしれない!(妄想)
逆に私の味噌汁好きなポイントは、とにかくだしの味で幸せになれるところです。
なめこの味噌汁とはいえ、だしの味の方に集中していれば、美味しいと思えてくるかも。
ぬるぬる食感は、他の食材だと平気なので苦手ポイントとは考えず、あえて味わう→だしの味にひたると意識的につなげることにしました。

でも、いきなりなめこの匂いが強くするのはさすがにキツイんではなかろうかと、手始めにしっかり湯通しをしたなめこを使った上品ななめこの味噌汁を作りました。
これです。

20180214_tashiro01.JPGで、実食。

20180214_tashiro02.JPG

ずっ...、ずずっ...
うん、飲めなくはないぞ。いい感じだ。
初めの2ヶ月は月に1回(といっても全部飲み切るまで3日かかった)飲んで、なめこの味と匂いには慣れました。

翌月。
今度は湯通しをせずに、少し煮立てたなめこ汁の味噌汁を用意。
これも全部飲むまでに3日かかりました。

20180214_tashiro03.JPG

初めの一口目と、飲み込んだ時に鼻に上がってくる風味に怯えながらも、だしの味に気持ちを向けていたので、匂いはさほど気にならず、ちょっと美味しく感じられました。
さらに翌月。ここまで行けたなら、もう飲めるはず。
これまでに培った自信と、いくばくかの不安の中、湯通しもせず、煮立たせもしないなめこ汁の味噌汁とご対面です!

20180214_tashiro04.JPGずずっ...

お、飲めた!長年苦しめられていた、生臭さや泥臭い匂いは感じるけど変な味とは思わない!ついに克服できたのでは?!
初めの一口目から美味しいと思えるようになっていました。

でも、この初めの一口は慎重になりますね。もしもこれでまた苦手に戻ってしまったり、やっぱりこの生臭さがあると無理、美味しくない!と感じてしまったりしたらどうしようとか考えます。
無意識に美味しく飲めるようになるまでは、まだ時間をかける必要がありそうです。
ですが、初回の試みから約一年経った今日この頃、なめこの味噌汁の味は以前に比べたら美味しいと感じます。
苦手克服中、3日連続で飲んでいた時には必死であまり気づかなかったのですが、特に2日目に飲むなめこの味噌汁は味がしみて美味しいです。

なめこの味噌汁大好き!...とはなってませんけど、飲めるようになっただけでも大進歩で私としては大満足です。
イメージって大事なんだなと感じたのと、意識的にいいイメージを持とうとすることで、印象ってこんなに変わるんだなと身をもって体験できた、なんとも個人的なお話でした。

が!

これをやろうと決意させてくれたのは、10年ぶりに未来館に来たという来館者とお話した時のことでした。
「未来館も10年前と今ではだいぶ変わりましたね。しかし私も、あの頃より未来館が楽しく感じます。人って変われるものなのですね。」
来館者の方にとっては何気ない言葉かもしれませんが、私の心にはとても意味の深い言葉に感じました。

未来館にお越しくださる皆様にいつも勇気づけられています。
ありがとうございます!

プルースト効果:匂いや味をきっかけに、過去の記憶をありありと想起すること。マルセル・プルーストの大作『失われた時を求めて』のなかで、マドレーヌの香りから幼いころの記憶があざやかによみがえるシーンにちなんでこの名前がある。