介護って何が大変なのだろう④ ガーデニングがリハビリに?!

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※本ブログは5回シリーズになっています。

介護って何が大変なのだろう
 ① 家族の体験から
 ② 音楽と脳の関係
 ③ 動物との絆を生かした取り組み
 ④ ガーデニングがリハビリに?!(この記事)
 ⑤ 私たちにできること

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西岡:本田さんは園芸療法について学んでたんだよね?アニマルセラピーと同じく生きものを使ったアプローチだと思うんだけど、実際はどういうものなの?

本田:日本では1990年代園芸療法が導入されて、この頃は心身に障害のある人々を対象とするセラピーやリハビリテーションの手法として捉えられてたんだけど、その後、一般を対象にした園芸の活用も含まれてきてるんだよね。高齢者に対する予防的観点とか、まちづくりの一環だったり...

だから定義としてはまだ過渡期で、あいまいなところが多いけど、「植物を育てることを中心に、植物や植物が育つ環境、植物に関連する諸活動を通して、身体や精神機能の維持・回復、生活の質の向上をはかる。」(山根、2009)活動っていうのが、全体を網羅している表現かな。

このブログでも、「治療」ということにこだわらず、「植物を用いて生活の質の向上をはかる活動」についてお話できればと思うよ。

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西岡:なるほど。ちょっと気になったのは、「植物を育てることを中心に」という言葉があったけど、それ以外の活動があるってこと?

本田:そうだね、育てる以外の植物の関わり方って実はいろいろあるんだよね。

例えば日本人はお花見って好きじゃない?そういう「鑑賞する」というのも、外に出るためにリハビリが必要な人がいた場合に、「来年の春、みんなで桜を見に行くために、今日はそのための練習をしてみましょうか」という風に、リハビリするための目的に位置づけられることもあるし、押し花や押し葉を使ったクラフト作業なども、手先を使うことに少し不自由がある人にとってはリハビリの一環になったりすることがあるんだよね。

小幡:たしかに育ててないけど植物を活用してるね。園芸療法は今のところどういう科学的な検証をしているの?

本田:園芸療法は今話したように、いろんな刺激があるから、音楽療法みたいに音楽を聴いてもらう=聴覚刺激といった共通した刺激がないんだ。その分、エビデンスの出し方としてはやや難しい現状があると思う。

西岡:たしかに難しそう。

本田:おおまかな話としては、

① 園芸活動における負荷の大きい動作が、運動機能を刺激する。

② その活動が新陳代謝を増進させる。

③ 動作の感覚刺激が自分という存在を認識することにつながる。

④ 植物を育てる喜び・楽しみが自分の満足度を高める。

でもこれらのことを科学的に検証するためには、機械を取り付けたりしないといけないけど、屋外でそういう機械を持ち出すことも難しいんだよね。

一部の研究者はそういうことも積極的に頑張って、活動中の脳波などを測ったりしている人もいるね。

増田:なるほどね。ひとまず測定は難しそうだけど、園芸活動によっていろんな刺激が生まれて、身体的にも精神的にも影響するんだね。

本田:そうそう。たとえば「プランターに種をまいて発芽させる」という動作をしてもらおうとするとき、大雑把に言うとこんな行動の積み重ねなんだよね。

① 植える植物の種にちょうど良い穴をあける(穴の間隔や深さの空間認識)

② 種を指先で持つ(種の認識や指先の感覚)

③ 種を数粒穴に入れる(穴の位置認識や指先の感覚)

④ 手で土をやさしくかける(植物を倒さないように手を動かす)

⑤ 水を適量かけるために適度にジョーロを傾ける(ジョーロを持つ腕力や傾きの調整)

⑥ 毎朝水をあげる(時間の認識)

⑦ 芽が出る(達成感・継続意欲の向上)

増田:簡単に見える作業でも意外といろんな力や認知が必要なんだね。

本田:作業療法士は、対象者に必要な行動を分解して、その人がやりにくい部分を把握して、やりやすくなるように工夫しながらリハビリの方法を考えてくれてるんだよね。

そういう中で、園芸療法としてこういう活動を取り入れたら、対象者の腕の動く範囲が広がった、腕力が上がった、立っていられる時間が長くなった、というような評価をしてもらえるんだ。

西岡:無理なくリハビリできるってこと?

本田:そうだね。たとえば理学療法として毎日同じ機械相手に何回も何回も腕力鍛えるためのリハビリをしなきゃいけないAさんが途中でリハビリ嫌だなってなったとする。その時に、じゃあお花でも育てましょうかって誘って、いざやってみたらAさんは重いジョーロでも頑張って動かしてくれて、それがリハビリになっている、とか。

つまり、園芸っていうのは、人間が「何かやりたい!」という心を刺激してくれるような存在なんだと思ってる。

増田:そうか。介護の場面でも、本人があまり生活すること自体に興味がなくなってしまった時に園芸を取り入れることで前向きな気持ちを取り戻すきっかけになったりするかもしれないね。

本田:そうすると家族や身近な人もご本人と関わる切り口が見つけやすくなるかも!ちなみに、その人がやりたい気持ちを取り入れて、握力が弱くても落とさないようなシャベルとかも開発されてるし、ペットボトルに付けられるジョーロの受け口とかあって、それは腕が震えたりする人でも水をこぼす心配がなかったりする。

増田:道具でやりたい気持ちをサポートしつつ、介護やリハビリにつなげることもあるってことだね。でも新しい道具を買ったりしてまで、園芸をする必要はあるのかな?

本田:うーん、みんなに必要ってことではないと思う。たとえば、どうしても腕のリハビリに前向きになれない人がいるとして、その人が「もう自分は先が長くないから、手は動かなくてもいい」とか意地張ってる状況があったとする。

その人が話を聞いてみると、実はとってもお花育てるのが好きだったという場合、「お花をまた育ててみませんか?」という働きかけをする。最初は手が動かないから無理だって言ってても、「こういう道具があるからやってみましょう」と提案してみる。

「そういう道具があるなら、じゃあやってみようかね」って答えてくれた時に、その人は変化してるよね。前のように効率的には動けないかもしれないけど、園芸作業をやること自体で筋力が鍛えられたり、やっぱりちゃんと手が動くようにリハビリをしようという気持ちにスイッチが切り替わったりするかもしれない。

西岡:園芸という幅広いアプローチが可能なものを使って、その人が「やりたい!」っていう気持ちに、寄り添いながら待つって感じなのかな?

本田:そう!!まさに「寄り添って待つ、寄り添って待つ」の繰り返し。それって植物育てるのも一緒なんだよね。人も植物もみんな生き物だもん。与えられた環境の中で自分ができることを常に考えてるし、よりよい道を模索してると思う。そこを少しお手伝いするのが園芸療法かな。

増田:園芸療法はどういう時・どういう人に向いているなどの適性はあるの?

本田:園芸はわりと性別や年齢問わず幅広く対象にできるけど、やはり療法として対象となる人達は光や音に過敏になっている人がいたり、力仕事も負担を感じやすい人もいるから、そこは気をつけなければいけないね。あと植物アレルギーを持っている人もいるから、事前に確認することが必須だね。

それから、植物自体が毒を持っているものがあるから、対象者の人達が間違って触れたり、食べたりしないように、使う場所に生えている植物は事前にチェックしないといけないよ。

西岡:園芸療法についてもっと詳しく知るためにはどうしたらいいの?

本田:園芸療法について学べる学校は少ないけど、兵庫県立淡路景観園芸学校やIWAD環境福祉リハビリ専門学校は園芸療法について専門的かつ実践的に学べるところだね。

学会としては、日本園芸療法学会と人間・植物関係学会でよく議論はされているかな。

園芸を活用したプログラムを取り入れてみたい場合は、さっき話した淡路景観園芸学校が窓口だけど、兵庫県は独自に園芸療法定着促進事業というものを展開していて、取り入れたい施設には補助金も出してたり、NPOで園芸療法士を派遣してくれるところもあるみたいだね。

園芸療法より広い概念かもしれないけど、「農福連携」と言って、職業復帰・社会復帰の一環として取り組まれることも多いんだ。農業の担い手として障害を持った人達が活躍している事例もよく耳にするようになったり、テレビでも特集されていたりするよ。そういう窓口としてはいくつかあるから、興味のある方は問い合わせしてみてもいいかも。

参考までにブログの最後にいくつか紹介しておくね。

小幡:園芸療法は今後どういう広がりがありそうかな?

本田:高齢社会やストレス社会について日本で言われてだいぶ経つけど、欧米でも他のアジア諸国でも、同じ課題を持っているよね。そういう現代社会が抱える課題に対して、アプローチできる方法なのかなと思ってるよ。

人と植物ってずっと昔から共存してきたわけだけど、現代だからこその関係性があるのかな、と。基本的に人間は植物がなければ生きていけない存在だという認識のもと、植物を今の私たちが使いやすい方法を模索し、新しい関係をつくっていく。

たとえば、植物という存在がコミュニケーションツールになって、人と人の関係性もよくしていくような存在になれる、というような関係性が作れたら、新しくない?笑

西岡:最終的に人と人の話になっていくのか。植物が中間にいて、その周りにコミュニティができていく発想は今まであまりなかったな...たしかに新しいかもね!

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参考資料・参考HP

兵庫県立淡路景観園芸学校の園芸療法過程

< http://www.awaji.ac.jp/htcp/>

IWAD環境福祉リハビリ専門学校

< http://www.iwad.ac.jp/course/engei.php>

NPO法人 園芸療法研究会西日本

< http://ht-w.org/dl/none.pdf>

日本園芸療法学会HP

< http://www.jht-assc.jp/>

「ひとと植物・環境 療法として園芸を使う」山根寛著、青海社、2009

農林水産省 農福連携

< http://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kourei.html>

全国農福連携推進協議会

< http://noufuku.jp/ >

おはようニッポン けさのクローズアップ

< https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2017/09/0907.html>