未来館で子どもが受け取る「セカイ」って?

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みなさんはあの時、あの経験があったから、今のこれにつながっている、という経験はありますか?

私の場合、小学4年生の時に急にある島に転校することになり、そこでの経験がきっかけになりました。その島の海や山の自然の美しさを感じられたこと、そしてその美しい島を、観光客が夏に来るたびに汚していく現状を目の当たりにしたことです。このような非日常のような美しいセカイと、相反するセカイの両方を受け取ったことで、環境問題への意識を持つきっかけとなったのかなと思います。

「未来館」というちょっと非日常なセカイにも、毎日子どもたちがやってきてくれます。彼らが受け取ったセカイを少しご紹介します。

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■インターネット物理モデルで出会ったA君

2013年のある日。当時、幼稚園年中だったA君は、インターネット物理モデルのワークショップ(※)に参加してくれて、それをきっかけに話すようになりました。

honda20180402_1.jpg

常設展示「インターネット物理モデル」:情報の流れをボールの動きとして体験

A君は未来館に来る度に何かを作って持ってきてくれました。たとえば、段ボールで作った携帯電話を見せてくれたり、未来館の展示「アナグラのうた」に出てくる「ミー」というキャラクターを作って、私たち科学コミュニケーターに作ったものの機能を話してくれたりしていました。

あれから5年。現在4年生になった彼が久しぶりにメールをくれました。

何やら「IT系の試験」に合格したとのこと。

彼がなぜこの資格を取ろうと思ったのか、どうしてこういう興味が湧いてきたのか、未来館で最後に会ってから、彼に何が起こったのかを知りたくて、電話でインタビューをしてみました。

A君:「未来館で体験したインターネット物理モデルのワークショップに参加したのがきっかけで、情報の分野について興味を持つようになって、いろいろ勉強しました」

おぉ!未来館のワークショップがきっかけとは。でもやっぱり前から興味があったのでは?

本田:「未来館に来る前も情報分野については何か調べたことあった?」

A君:「幼稚園の頃から携帯電話には興味があって、カタログを見たりしていました。でも『パケット』とか書いてあってもイメージが全然わかなかったんですよね...でもそんな時にたまたま未来館でワークショップに参加して、パケットというものがどういうものかわかり、情報のやりとりってこんな感じなんだってすごくイメージが湧いたんです。

そこからインターネットやプログラミング関係のことに興味が湧いてきて、今はロボットを踊らせたり、しゃべらせたりするアプリを作っています。」

えぇ!そんなことまでできるの?すごいなぁ。

本田:未来館の展示で今でも心に残っているものってある?

A君:やっぱり情報系の展示が心に残っています。特に「ミー」は情報セキュリティやプライバシーの象徴だと思っているので、今でも大事にしています。アナグラのうたのCDもよく聞いていて、あの歌詞からも、情報プライバシーやセキュリティの考え方を学べました。

exhibition_future.jpg常設展示「アナグラのうた」:足元に映っているのが「ミー」

ミーを象徴と愛してくれて、アナグラのうたのCDを買って、歌詞まで熟読してくれているなんて...ありがとう、A君!

A君が受け取ったセカイは、目に見えないインターネットのセカイでした。

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■"おや?"っこひろばで出会ったB君

2015年に"おや?"っこひろばにやってきた小学1年生のB君。とっても発想力が豊かな少年で、一緒に「未来の王国」について想像を膨らませながらお話をしていました。その時に、ロボット社の社長が夢だと話してくれました。

あれから約2年半。今年1月2日に久しぶりの再会ができました。3年生になったB君は、クラブMiraikanの会員になっていて、未来館で実施するロボットの実験教室などに参加してくれるようになっていました。それ以前にも、家からちょっと離れたロボット教室を自分で選び通っていたり、大学生や大人が闘うロボットコンテストを見学に行ったりしていたそうです。今後の進路についても考えていて、科学の部活が盛んな中学校へ行きたい!と今から意欲を見せてくれていました。当時から興味のあったロボットへの夢に向かって少しずつ進んでいる様子が伺えました。

B君のお母様が後から教えてくださったのは、B君が科学館に行くのが楽しみになっている理由が、知識吸収だけでなく、「好きなことの話をいっぱい聴いてくれて、考えてなかったことのヒントをくれる」ということだったそうです。自分で考えることの楽しさを知ってくれたことが、これからにもつながる、と感じるとのこと。

B君が受け取ったセカイは「新しい考えのヒントをくれる科学館や科学コミュニケーター」の存在でした。

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未来館は「科学技術を文化としてとらえ、社会に対する役割と未来の可能性について考え、語り合うための、すべての人々にひらかれた場」です。それってどういうことなのだろうか?と常に自問自答する日々でしたが、今回A君やB君と話す中でその答えの1つが見つかった気がしました。

多くの人にとって未来館に来る、というのは、人生のほんのちょっとの時間でしかないけれど、その大事な時間を割いて来ていただいています。だからこそ、その短い時間・出会いの中で、みなさんに提供できることは何だろう?と考えます。

「新しいことが知れて、見られて楽しかった」ということだけに止まらず、たとえばA君が受け取ってくれたような情報分野におけるセキュリティの話は社会的・倫理的なことも考える必要のあるテーマです。B君が受け取った科学館の存在そのものは、知識の交差点のような、様々なアイディアが交錯する場所なのだろうと思います。

未来館でこのような経験をし、自分なりに新しい考えが出てきたら、それを他の人に話したくなるかもしれません。家族・友人たちとの会話の中で話題になり、それがだんだんとコミュニティに広がり、科学に関する話題が日常風景になるかもしれません。実際に、B君のお母さまは文系でしたが、息子さんの影響から科学情報にもアンテナが張ってくるようになり、日常会話でも科学関連の話が入ってくるようになったとお話してくださいました。こんな風に科学技術について日頃から日常的に話せるようになることは、未来館の設立理念に近いのだろうと感じました。

未来館はみなさんと科学について語り合う場です。ぜひ私たち科学コミュニケーターと語り合いに来てくださいね。

※インターネット物理モデルはいまも常設展3階に展示してありますが、A君が体験してくれたワークショップは現在行っていません(2018年3月現在)

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