サイエンス・ミニトーク「あなたならどうする?-大震災に考える」で考えたこと

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震災ミニトーク練習の様子(写真)

6月11日から、サイエンス・ミニトーク特別編「あなたならどうする?-大震災に考える」を展示フロアでおこなっています。

開発担当は早川、渡辺、村嶋、外口の4人で、自称、チーム・震災ミニトーク(私は影のカントク役…)。まわりに聞いたところ、気になるタイトル第1位は、「放射線ってこわい?こわくない?」でした。東京では年間に積算しても1ミリシーベルト以下となる低い放射線量が続き、こわさは薄れた。しかし、福島の学校等の校舎・校庭の利用に関して年間20ミリシーベルトの許容値が出て、その後、1ミリシーベルトに数値が変わり、専門家も安全か安全でないかで意見が分かれている。何を信じて良いのか分からず、漠然と不安、と言うのです。

ここで整理したいことは、3つです。

  1. ただちに健康に害をあたえないとされる放射線の許容値は、「しきい値無し直接仮説」という科学的に解明されていない仮定に基づいていること(それに代わる適切な許容値は、現在、残念ながらデータとしてありません)
  2. この仮定に基づく年間20ミリシーベルトの許容値は、あくまで緊急時における暫定的な判断として設定されたこと
  3. 屋外で過ごす時間を短くして土や砂になるべく触れない、土壌の入れ替えをするなど、日常生活で被ばくの影響を減らす努力が、すでに福島では市民に求められていること

1の「しきい値無し直接仮説」がどう決められたかは、放射性物質の基礎知識から理解する必要があり、少し面倒ですが避けては通れません。こちらのサイト(放射線科学センター:暮らしの中の放射線)は無料でわかりやすくまとまっていますので、読んでみてください。

2については、あくまで暫定的な判断。常に長期的な目で見直しをかけることが必要です。観測地点を増やし、測定値と被ばく量シミュレーションの精度をあげ、より確かな「安全」の目安を提供できるよう、専門家と行政が協力してあたらねばなりません。

3は、いま直面する一番の問題です。放射線の量を気にして行動を制限される状況は、いうまでもなく大変なストレスです。そしてそのストレスは、「安全の許容範囲」には加算されていません。チェルノブイリ事故を調べた専門家の一部は、もっとも大きな健康被害は放射線による発ガンではなく、緊張や恐怖が長期間続くストレスからくるアルコール依存症やタバコの増加、精神疾患だったといっています。

6月11日にオープンしたばかりの未来館の展示フロアで、名古屋から一人でいらしという女性に、「放射線が傷つける部分はどこ?」と聞かれました。そこで、DNAの模型や細胞分裂のパネルを見ながら、一本鎖と二本鎖の傷の違いやDNA修復のしくみを説明。今後の線量の変化を注意深く冷静に見守る必要はあるが、影響があったとしても確率的に低い低線量の外部被ばくを怖がりすぎることの逆の怖さもお話ししました。

今回のサイエンス・ミニトークやWeb(Case.311)でお伝えするのは、物事を科学的理解するためのはじめの一歩です。いまの状況をどう整理し、どの安全を優先し、次の行動を準備しておくのか。子供たちに伝えるべきことは何か。自分自身も含め、これまで無自覚であれ原子力エネルギーを許容してきた大人のふんばりどころです。

 

参考情報

<政府公式発表>

※箇条書きでまとめられています。以下4つ、30分ほどかければ、読めると思います。

計画的避難区域、緊急時避難準備区域の設定 (訂正(差し替え)版)

平成23年4月22日 原子力安全・保安院

http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110422004/20110422004.html

「計画的避難区域」及び「緊急時避難準備区域」での生活について

平成23 年4 月28 日 原子力被災者生活支援チーム

http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110428010/20110428010.html

福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について

平成23年4月19日 原子力災害対策本部

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/1305174.htm

福島県内における児童生徒等が学校等において受ける線量低減に向けた当面の対応について

平成23年5月27日 文部科学省

http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1306590.htm

<国際組織、学会等の発表>

学会、個人レベルで、年間20ミリシーベルトの許容値を子供に当てはめることへの疑問が出ています。政府見解はあくまで「緊急時の暫定値」ですから、定期的な見直しは必要です。

日本医師会定例記者会見(平成23年5月12日) 文部科学省「福島県内の学校・校庭等の利用判断における暫定的な考え方」に対する日本医師会の見解

http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20110512_31.pdf

<放射線防護の考え方>

放射性ヨウ素131について、WHOの飲料水水質ガイドラインと比べ、日本の暫定(非常時)基準値が30倍も引き上げられたのはなぜか、説明してあります。暫定基準値の考え方が社会状況に応じて変わることの例として、わかりやすいです。

WHO 水道水汚染について 更新: 2011年3月31日 (ジュネーブ時間) 「日本で水道水を飲んでもよいか?」

http://www.who.or.jp/index_files/FAQ_Drinking_tapwater_JP.pdf

放射線医学総合研究所 放射線被ばくに関する基礎知識 第6報 更新:2011年4月14日

http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i14

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