流れ星の音

このエントリーをはてなブックマークに追加

先日フロアでお客さんとフロアでお話をしているときに、あることを聞きました。曰く

「流れ星が爆発する音を聞いた」

しかも、「流れ星が爆発するのを見た瞬間に爆発する音が聞こえた」と言うのです。でもそんなことは僕の常識ではありえない。

なぜなら、光と音は伝わる速さが圧倒的に違い、流れ星は非常に遠くにあるので流れ星の爆発の様子(光)と音が同時に聞こえるはずがないからです。花火や雷が有名な例ですが、それらは遠くで光るため、光ってから音が聞こえるまでには時差があります。流れ星は隕石が大気圏に突入して燃えるときに消滅し、大気圏は高度100kmぐらいなので、流れ星から自分までの距離は軽く100km近くあることになります。100kmというと未来館から富士山に届くほどの距離で、流れ星の音が流れ星の爆発と同時に聞こえるということは、富士山のてっぺんから上げた花火の、光と音が同時に未来館に届いたということと同じことなのです。

そんなことは僕の常識ではありえない。

ありえないことではあるのですが、そこは僕も未来館科学コミュニケーターの端くれ。お客さんに向かって「いや、そんなことはありえませんから、幻聴ですよ」などと言ったりはしません。うんうんとうなずきながらお客さんの話に聞き入ります。

すると話の中で「多くの人にありえないから幻聴だと言われるが、幻聴ではないんだ」と先回りをしたかのように釘を刺されます。なんだと、幻聴ではないだって。そんなことがありえるのだろうかとちょっと不思議な気持ちになりつつさらに話を聞いてみると、なんとそのお客さんはその話を天文台に問い合わせたところ、専門家からそういうことはありえるという解答をもらったそうなのです。

それによると、まず流れ星が爆発したときに電磁波が発生して、それが自分の所にまで届きます。電磁波は光と同じようなものなので光と同じ速さで到達します。そうして到達した電磁波が、たまたま自分の近くの何かの物体と相互作用すると、音を出すことがあり、それを耳がとらえれば、流れ星が爆発するのと同時に音が聞こえるという現象が起こりうるのだそうです。そのお客さんはラジオ効果、と言っていましたが、原理としてはラジオと同じことなのでしょう。放送局からピュンピュンとんでくる電磁波を物体の振動に変えて音とするのがラジオであり、それと同じことが自然界で起きれば確かに流れ星の音は聞こえそうです。

早速Google検索により「流れ星 音」と調べてみると、日本語版Wikipediaの「流星」という項目の中に「流星の音」という節が見つかりました。それによると、流れ星と同時に音が出る現象は昔から観測されており、電磁波によって説明ができるそうです。以前は心理的なものだと思われていたそうですが、最近になって電磁波によって音が鳴っているということがわかってきたらしく、実験や観測結果などが論文として発表されているとのこと。しかも「電磁波音」という独立の項目まであり詳細に書いてあります。これはびっくりです。論文としては1980年に初めて発表されたらしく、その後1998年には流れ星の音の録音にまで成功した研究グループがあるらしいのです。残念ながらその音をインターネット上で聞ける場所を探すことはできなかったのですが、研究は進んでいるのかもしれません。

一つ気になるのは、「電磁波音」というWikipediaの項目は、日本語版では存在しているのですが、英語版では存在していないことです。英語版Wikipediaはブリタニカ百科事典に匹敵するほどの正確性を持っていると言われていますが(それに関しても賛否両論あるようですが)、その英語版Wikipediaに項目が存在していないとなると、ちょっと電磁波音というもの自体がオカルトなのかもしれないとも思ってきてしまいます。

一方で、オーロラから音が聞こえるとか雷が光った瞬間に音が聞こえるとか、電磁波音によって説明のつきそうな事例は流星の他にも多数あり、それらは電磁波音の存在する可能性を後押しするものではないかと思います。

いずれにせよ、理屈上は納得のできる説明で、流れ星の音が光と同時に聞こえる可能性があることはわかったので、僕としては満足でした。最初にお客さんの話を聞いたときに「どうぜ幻聴だろう」と早とちりした自分を戒めると共に、お客さんから教わることは本当にたくさんあるのだということを改めて認識いたしました。

世界中の人が同時に見ている流れ星を、同時に聞くこともできるなんて、なんだかロマンチックですよね!

 

※電磁波が音として聞こえるのは、電磁波が直接耳に入って鼓膜を揺さぶるから音として聞こえるわけではなく、電磁波が自分の周りの物体を揺らすことによって、その物体の振動が引き起こす空気の振動が音として耳に入るからです。電磁波は音ではないので、直接電磁波の音を聞くということはできません。

※コメントをする際は「ブログへのコメント投稿について」をご覧ください

※「名前」は、ハンドルネームでも構いません

コメントを残す