スタンダード+α ~高校時代の恩師の教え~

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みなさんこんにちは。科学コミュニケーターの豊田です。

年末年始、ご実家でゆっくり過ごされた方も多いのではないでしょうか。私もこの年末年始は、実家でのんびりと羽をのばしました。そして、久しぶりに自分のアルバムを見てみました。幼い頃から現在に至るまで…その中で高校3年生のときの写真に目がとまりました。ある日の放課後に友達や先生と一緒に撮った写真。今日は、その写真の中のおひとり、私の恩師にまつわるエピソードをお話したいと思います。

その先生から生物の授業を受けたのは高校3年生のときでした。授業を受け始めた春の頃、私は、生物は好きではあったものの、成績が伸び悩み中、という状態でした。1~2年生のときに得意だった“暗記でなんとかなる”の学習方法が通じず、内容をしっかり理解して自分で咀嚼(そしゃく)して表現する記述式の問題が増えてきてしまったことが大きな原因でした。もう一度、高校1年からの内容をしっかり復習しなければならない、しかし3年で学ぶ新しい内容も増える一方、ということで、焦りも出始めていたときに出会ったのが、先生の授業でした。

先生の授業は、こんな感じです。45分間のうち、90%は教科書を中心とした高校生で学ぶ生物学。そして残りの10%は教科書にない科学トピックスに関するお話でした。その時間の授業に即した内容で、ここ最近生物学の世界で注目されている話題に触れたり、大学レベルの話をわかりやすい形にして伝えてくださったりするというもの。例えば、免疫についての授業のときには、利根川進先生の大発見についてお話ししてくださったことがありました。まだ記憶に新しかったノーベル賞の話題や専門の科学雑誌の話題など、私には、それらのどれもが新鮮で興味深く、熱心に聞き入りました。

そのうちに、あることに気がつきました。高校3年の生物の授業は、1~2年の授業の集大成である――。10%のおもしろい話を理解するには、今日学んだ知識も1~2年の知識もいる、例えば、利根川先生の発見がすごい!とわかるには、今日学んだ抗原と抗体の構造だけでなく、遺伝子のしくみも理解してこそなんだ――これを実感したときに、目から鱗が落ちました。その後、すぐに生物の成績が上がった…というドラマチックな展開にはなりませんでしたが、生物を学ぶおもしろみが理解でき、積極的に勉強に取り組めるようになりました。

大学4年になり、母校の高校で教育実習をする機会がありました。放課後に先生を訪ね、高校3年生時代の思い出話をしたり、教育実習の近況についてお話ししたりしていたときのこと、先生が、参考までにと、それまでに情報収集してきた“+αの資料”を見せてくださいました。驚いたのはその量の多さ。ノートや本が机からこぼれそうなぐらいにひしめき合っていました。「ここまで調べるのはそう簡単ではないよ、真似をするなら10年以上はかかるはず」と言われたことを覚えています。高校時代の私が全く想像していないところで、先生はこの+αのネタ集めに、すごく努力なさっていたことを知りました。

そしてときが経ち、私は恩師と同じ“科学をコミュニケートする仕事”に就いています。未来館で、月に数回、実験教室の講師をすることがあります。そのときにこだわっているのが、基本の内容に最新の科学情報や時事ネタなどの+αを盛り込むこと。今月のDNA抽出の実験教室では、東日本大震災で犠牲となった方のうち約15%の方で、DNA鑑定が身元の確認などにつながった、というお話をしました。

まだまだ私の+α資料はノート数冊程度。10年以上かけて、恩師を超えることができるのでしょうか。

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この記事への2件のフィードバック

豊田倫子様

時々このサイトを拝見させていただいています。

私の高校時代にも担任の先生が生物で(1960年代)、DNAのことを授業中に熱く語っておられました。すでに教科書に載っていましたが、当時の最先端のホットな話題だったのでしょう。そのときはじめてDNAのことを知りました。それから四十年以上が経ち、今になって強烈に思い出され、生物学への興味がつのって行き、しまいには生化学の書籍、上下巻を購入してしましました(一巻800ページ程あります)。一部読み始めたら一筋縄ではいかないことがわかり、取ってあった高校時代の教科書を再学習せねばならず、しかし、化学、物理の予備知識は多少あったので、時間をかければ何とかなると思っています。意欲はありますが、問題は学習時間と中年という年齢です(ちなみに私は高校中退です)。

セカンドライフに突入する時期に、これはある意味では幸運な巡り合わせであったと言えなくもないと思っています。

なお、中学時代にも社会の先生から、心理学の実験で無意識化に刺激を受けるというサブリミナル効果の話も伺い、心理学にも足を突っ込みかけています。

これも、自由と時間とそれが出来る環境があるおかげと、大変感謝しています。

alberthawkingさま

当サイトをご覧いただき、そして私のブログへご意見をいただきまして、ありがとうございます。

alberthawkingさんの、いろいろな分野のことを知りたいという好奇心旺盛さと

それらを知るために教科書までご購入されて勉強される姿がすごい!と思いました。

お取り置きされていた高校時代の教科書をご覧になっている、とのことですが、

現在の教科書との違いを比較されると、またおもしろいかもしれませんね。

またこれからも、当サイトを楽しんでご覧頂けるよう、記事執筆に励みたいと思います。

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