一緒に、ことばを見つける

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科学コミュニケーターという職業に就き、半年が経ちました。早いものです。

最近は「未来館っぽいコミュニケーションってなんだろう?」と考えるようになりました。

お客さまと何気ない会話を重ねていく中から、訪れる方の興味や科学への理解、来館の目的が伝わってきます。この貴重なコミュニケーションをことばにしていったら、きっと未来館独自の科学コミュニケーションをいろんな方に伝えていけるのではないか、そんなふうに思うのです。

■『気持ちを受け止めてほしい』

館内の情報コーナーで、あるご家族と遺伝子についての話をしていました。イラストを使って遺伝子と染色体との違いなどを説明していると、この話の内容にハッとして足を止めた女性がいました。ご家族が他のところへ向かわれると、その女性がこちらに来て話かけてくださいました。「何か思うことがあるのだろうか」、そんなことを思わせる表情でした。

しばらく、遺伝子疾患についてお話をしていましたが、

「わたしね、いま、遺伝子疾患を持つ子のご家族をサポートするボランティアを行なっているの。みんなね、我が子の病気に関する科学的な情報はもちろん知りたいのよ。でもね、それ以上に『自分の気持ちを受け止めてほしい』、そんなことが伝わってくるのよ。きっとそこがとっても大切なのね。……こんなこと、いままでボランティアの現場では一度も話したことはなかったのよ。ここで話を聞いていたら、ふと話したくなったのよ。話すことができてよかった。ありがとう」

そのことばを聞き、“あの表情は、こんな気持ちが表れていたのかもしれないな”と感じました。自分でも気づかなかった気持ちや考えを整理できたのでしょう。その場を去るときは、なんだかすっきりした表情に見えました。

この体験によって改めて、ふとしたことばや表情を汲み取り「聞く+見る」コミュニケーションを強く意識しました。

■エンターテイナーではない

この半年を振り返ると、どうしたら科学的な内容を分かりやすく伝えられるか、あるいは、実演中にどうしたらその場が盛り上がるのかということに気を取られてしまうこともありました。しかしエンターテイナーではないので、これではだめです。未来館でもこの役職が科学を伝える「インタープリター」から、対話を引き出す「科学コミュニケーター」へと名前を変えました。これは科学を伝えるだけでなく、コミュニケーションを拡大しようという背景があります。目の前の相手との対話の中から問題を見つけ、アイディアを引き出していくことも大切、先のお客さまとのやりとり以降、そうひしひしと感じます。

■コミュニケーションのしくみは

「コミュニケーションを科学したい」──採用試験の面接でこんなことを言った記憶があります。大学では社会学を専攻し、未来館で扱うような分野とはあまり接点がありませんでした。

それでも思い入れのある展示があります。「インタロボット」です。

自分がマイクに向かって話す会話の切れ目や声の抑揚に合わせて、ロボットが身体を動かします。ロボットの動きを見ていると、楽しく会話をしているように感じます。コミュニケーションの中で、うなずきなどの非言語の動きがとても重要であることを教えてくれます。

人の心の中は、本人でなきゃ分からない。むしろ本人もよく分からない、あのお客さまのことを思い出すたびにそう思います。それでもわたしたちのしぐさや声のトーンには、自分でも気づかない心の内が現れます。だからこそ「聞く」だけではなく、「見る」にも留意することで、コミュニケーションにどんな面白いことが起きるか──これをことばにできるといいなと思います。

科学コミュニケーター0.5年生のわたしですが、 自分の振る舞いやことばへの感度を高めて、これからもいろんな方とお話ししていきたいと思います。来館したら、ぜひ話しかけて下さい。

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